MMEI-0067 パラボラゼラチナス

広報部め…。

公式に俺たちの班をハメ撮り配信探検隊と呼びやがった!俗称だったから耐えてただけだぞ、正式にそんな名前になるのは聞いてない。

 ・・・

でも、なんだかんだ上手くやれていて、実際の所ハメ撮りと言われても、そこまで悪い気はしなくなってきている。別に、後ろ指差されるようなことはしていないし、むしろ役に立っているのだから誇らしさすらある。それでも、自分から言うのと他人に言われるのとでは、違うよな!?広報部に先に他称されちまったら、今更自称するのはなんか違うよな!?多分、俺が嫌に感じてるのはそこだ。


「アキラはどうよ、ハメ撮りって言われて嫌じゃないか?」

「誰になんと呼ばれても気にならないです。それより主任、捕獲用滑り台の準備ができましたよ。」


そうか…。アキラは強いんだな。俺は気にしすぎか。


「ありがとう。対象の数と角度は問題ないか?」

「問題ありません。風速から、この後ベストのタイミングが来ます。」


よし、ならばその瞬間を撮影しなくては。いきなり見せ場がある場合、段取りはどうすっかなあ。


配信開始。


「皆さん、久しぶり。橘です。今日は拠点近くの湖からお届けするぜ。」


<ハメ撮り配信探検隊!>

<今日のハメ>

<まってた>

<橘さんこんちゃ!>

<ハメこん~>


待機人数が多かったから、コメントも一気にもらえたな。挨拶をしてくれるリスナーも、最初に比べたら増えたもんだ。嬉しいけど、これだけの人が俺の顔を見てると思うと、恥ずかしいな!へへっ、いい年したおじさんが恥ずかしがってるの、キモいな!


さて、リスナーの皆様方には来てもらって早々悪いが、これからすぐにクライマックスを迎える予定だ。見逃したら最悪、その後しばらくドキュメンタリー番組が続くぜ。まずは対象がどんなものか説明しよう。

 

「今日のゲストは、パラボラゼラチナスです。指差してるとこ、わかる? 2km先の上空にいます。」


肉眼では米粒よりも小さいし、雲に紛れている。ズーム撮影していても、今は見えるわけがないよな。


<わかんねーよw>

<見えんが>

<あの雲がモンスター娘なのか?>


ははは、そのまま見ててくれればすぐわかる。この後すぐに特異能力を発動させてやるからな。その特異能力の性質を利用してやるんだ。


「遠くに浮かんでいるので、そのままでは接触できないんだけど、500A以上の電流を一瞬でも流すと感知して、特異能力を発動してくれる。」


500Aの電流って、ドローンやバッテリーで使うことがない。静電気が起きても、電圧はともかく電流は微々たるものだし、そうそうない。大抵、人工物だと、発電施設の電流を感知して集まってくる。火力発電所の取水口に集まるエチゼンクラゲの様相を呈しているな。


「主任、電流OKです。」


電流は本当に一瞬でいいので、必ずしも発電設備を使う必要はない。手回し発電でも反応してくれるくらいの超感応を持ってるんでな。


<なんか豆粒が光った気がする>

<即反応するじゃん感度よくない?>

<画面のゴミかと思ってたわw>


いいタイミングで電気を流せた。パラボラゼラチナスの位置と、発電器の位置が重要なんだ。ありがとう、アキラ。


パラボラゼラチナスは、感知した電流の位置を精確に把握できて、その位置に向けて特異能力を発動させて真っすぐ飛ぶ事ができる。利用する性質ってのは、その真っすぐ向かってくるってところだ。


「誤差がまずないから、ちゃんと計算すれば絶対にミスはないんだ。」


電気を流す位置を変えて、滑り台の入り口にいい角度で向かわせる。そのまま真っすぐ内部に飛び込ませてやるのが、滑り台を使った捕獲方法だ。馬鹿みたいだろ? でも実用に耐えたんだ…。


本当はすでに、この方法で捕獲した個体がいくらかいるんだが、特異能力の説明ついでに、派手に捕獲シーンを撮影したいと思った。多分、見せ場はここくらいにしか作れないと思うから…。


<何を計算するんだ?>

<回転しながら拡大するコラ画像みてえだわ>

<ミスったらぺしゃんこなのか>


地面に激突ならいいほうだな。実験結果報告書によれば、複数体が一度に向かってくることもあったようだ。高速で飛翔する回転体同士の接触なんて、考えただけでぞっとする。


さて、そろそろ肉眼でも判別できる頃合いだろうか。パラボラゼラチナスの特異能力について、もっと詳しく説明していこう。


「ほら、だんだん近づいてきただろ?笠を回転しながら火を噴出して、ロケットみたいに飛んでくるんだ。」


それがパラボラゼラチナスの特異能力。一日に一回だけ、頭部の笠を高速で回転させながら火を噴出する。その噴出を推進力として、感知した電流の位置へと高速で飛んでいく。


風や磁気の影響も即時修正して精確に突っ込んでくるぜ。生きた誘導ロケットみたいなもんだ。


「最高時速は70kmにもなるが、あいつ自体はゼラチン質で柔らかいんだ。人に直撃しなければ、この特異能力の被害はそんなでもない。」


<いや、めちゃ早いが!?>

<ばか回ってておもろい>

<潰れるとこ見たくないw>


潰れないから大丈夫だぜ。パラボラゼラチナスの飛んでくる角度の計算さえ間違えなければ、滑り台の入り口手前で特異能力が終了するから、以降は推進力を失う。そうなれば、後は速度が落ちるまで待てばいい。


「この滑り台に飛び込んでいくように計算したから、安心してくれ。」


捕獲用滑り台の入り口は、安全な受け入れのために柔らかくなっているし、速度を十分に落としてやるために長いコースになっている。


「そろそろです。」


笠の回転を止めたパラボラゼラチナスが、滑り台に侵入していった。時々摩擦音をさせながら、長いチューブを通って減速していく。


<バスケコートの音しながら光るの気持ちわるいw>

<めっちゃ流れてくの笑う>

<ぷるぷるしてらあ>


チューブにはカラフルな電飾を施してやったんだが、イマイチだなこりゃ。通過した時に明かりが灯るようにしたんだが、昼じゃよくわからん。やるとして、せめて夜に撮影するべきだったわ。予算が急に増えたので、思わず雑に使ってしまったな…。


「オーケー、滑り台のゴールはここだぜ。」


ゼラチン質の人型が、チューブの出口からにゅるんと出てくる。そのまま身体が落ちてきて、べちんという弾力のある音がした。今回の実験対象が、強化ガラスのテーブルの上に到着した。


<結構デカいな>

<なんかやたらムチムチしてない?>

<動かないが生きてるんか?>


生きてはいる。特異能力が発動した後しばらくの間、活動を停止するだけだ。特異能力の再発動も22時間は待つ必要があるから、限りなく安全になった。


「特異能力発動後は、10時間くらい活動を停止するんだ。死んでるわけじゃないが、めちゃ安全なんでおさわり放題、実験し放題よ。」


<早速ハメかい>

<最短ハメ撮りか>

<惰性でハメ撮ってないか?>


惰性でハメるって何だよ!そんなん出来たらもっといい画撮ってるわ!


しかし、これで配信のクライマックス部分が終わっちまった。他にやりたい実験はほとんど許可がおりなかったし、許可がおりても、付け焼刃の知識では実行できないようなものばかりだった。


<俺もおさわりしてえ!>

<義務ハメに愛はあるのか?>

<でも毒持ってそう>


義務ハメってなんだよ!どちらかと言えば職務ハメなんだわ!


ああ、心の中で突っ込んでしまう自分が憎い。そんなことより毒についてのコメントを拾うべきだな。


「成長途中では神経毒を持ってて、魚を捕食したりするらしい。でも、今のモンスター娘として成熟した状態では、一切毒を持ってないぜ。」


実験結果報告書を読むに、毒は持たなくなるらしい。海中から出ると捕食をしなくなるせいなんだろう。

───さて、パラボラゼラチナスは目の前で大人しくしている。


「手元でいじくりまわせるようになったな。どのような特徴を持っているのか、じっくり観察してみるぜ。」


半透明の身体を持っているとモンスター調査団の資料にはあったが、それはどうやら海中から出たばかりの、若い個体が持つ特徴らしい。他団体では海から追跡していたから、そのような結果となったのだろう。


俺が捕獲したこの個体は非透明の身体に白と青の色を持っている。空中で生活している内に透明性を失うのだろうか、同じ種とは思えない。印象としては、ドレスを纏ったふくよかな淑女といったところか。


「触ると皮膚のシワの奥までぴったりハマるくらいくっつくな。でも、触れた個所に変に汁気が残ったりはしない。」


どの部位も柔らかくぷるぷるしているのだが、表面の水気はない。しかし、触れると吸いつくような感触があって気持ちがいい。


<ぷるぷるしとるや>

<人の形に見えるゼリー でかくてこええ>

<プリン食べたくなった>

<なんか部位ごとに振動するんやね>

<もっと身体全体がぶるっぶる震えるんかと>


なかなか鋭い観察力を持つリスナーだな。パラボラゼラチナスの身体は、部位や器官ごとに独立しているんだ。だから、腕を触れただけで脚までぷるぷるすることはない。


「まとまりのない不定形モンスターとは違うよな。機能ごとに部位が分かれてちゃんと身体が作られてるんだ。」




橘は、ガラステーブルの横に立った。パラボラゼラチナスは、うつ伏せになって動かない。橘はしゃがんで、テーブルの下からのぞき込んでみる。そこには、ガラスに密着した青と白の身体が、窮屈そうに広がっていた。


巨大な胸部は、卵巣が詰まっていた名残だろうか。その大きさと重量によって潰れているが、触れてみると張りがある。左右一対に分かれた巨大な膨らみの先には、大きめの青い輪があって、その近くを指でつつくと少したぷたぷと音がする。そうしていると、陥没していた青い輪の中心部分が膨れはじめた。


膨れて突起となった部分の先端が、ガラスに押し付けられている。陥没していた頃よりもガラス面に密着していて、窮屈そうだ。


突起を抑圧から解放するために、青い輪を目掛けて指を差し込むと、その指を飲み込むように、彼女の胸部が包み込んでいった。ひんやりしていて、ぴったりと密着する。引き抜こうとしても離してくれない。


そのまま手を持ち上げてみると、胸部の深くに指が食い込んでいって、出来た隙間の中で、抑圧されていた突起が一気に飛び出した。この胸の先の突起は卵管の名残なのだろうか、親指ほどの太さである。触れてみると他の部位よりやや硬く、コリコリしている。隙間から指を引き抜くと、胸部の圧迫が弱まってまた陥没した。


再び青い輪のあたりを指でつついてみると、今度は胸部だけでなく、彼女の身体全体がぷるぷると震えた。




<手つきやらしくない?>

<このモチ肌にダイブしてえ>

<こんなスケベなゼラチンがあってたまるか>

<上半身に比べて下半身が細すぎる>


確かに、上半身だけで体重の7割以上を占めているな。繁殖期には短期間で生殖器官が発達するから、巨大な卵巣を格納する胸部が一気に肥大化する。加えて、浮遊して移動するので脚部が発達することがないのだろう。


「海中にいる間は、もっと平均的な人の体型に近いらしい。繁殖タイミングで肥大化するから、特に胸部がその名残として目立つんだ。」


大体どのようなモンスター娘か観察と説明が終わったな。捕獲も無事成功したし、実験に移ろう。実験と言っても、遊びのようなものだが…。


「これからやる事を発表するが、がっかりしないでくれよ。他のパラボラゼラチナスにまとめて電飾を巻き付けて、めっちゃ光らす。」


<なんでだよw>

<子供のいたずらレベルで草>

<他にないのか?>


ない。元々、紆余曲折あって、モンスター娘として扱われるようになったからな。いろいろ厄介なことになっているんだ。多分、まともに研究ができないから、配信で活用させたいんだろう。


具体的にどう研究できないかというと…。電気に関する研究は、アメリカの専門機関が仕切ってる。海に関するものは海洋調査団の管轄だ。特徴や生態はモンスター調査団が調査済なわけだし、他に出来る事と言ったら特異能力に関することのみだ。


しかし、それはもう終わってしまったよな。ほら、できることがないだろ?捕獲を後に回しても、それまでにやれることは変わらないしな。そういうわけで、集団を電飾でまとめて光らすくらいしかできない。


「別の班でも捕獲実験を実施していて、確保した個体が沢山いるんだ。絶縁体で封じ込めておけば、電流を感知しなくなるので複数確保できる。」


全部で十体だ。地味な準備映像を垂れ流すことになってしまうが、これだけの数をまとめて光らせれば、多少は映えがあるだろう。


<めっちゃ地味な作業や> 

<ここまでしてやりたいとは>

<なんかドキドキしてきた>


特異能力発動時に回転体となる頭部は避けて、腹部から腰のあたりを中心に銅線を巻き付けていった。食い込みすぎないように軽めにだ。


十体のパラボラゼラチナスが、一つの銅線で繋がれた。まったく意に介していないのも含めて、異様な光景だな。


「アキラ、通電よろしく。」


全ての電飾に一斉に明かりが灯された。パラボラゼラチナスは、地面の近くを浮遊しながら風に揺られている。


「電飾とは別に、パラボラゼラチナス自体も電気で光っているみたいだな。わざわざ電飾を付けてやる必要なかったか…?」


<なんかの紋章みたい>

<これはこれで綺麗>

《1000円 おっさん3》<さきっちょでぷらついてるのええやん>


おっさんリスナーも見ています。ちょうど広報部の活動が実って収益化できたんだったな。思いのほか受けてて俺も嬉しいよ。


「おっさん3、スパチャありがとうな!力技だが幻想的で綺麗な景色に見えるだろ?」


ちゃんとお礼は言っておく。しかし、徐々に彼女たちの浮遊する高度が上がっていくな。銅線の位置は変わっていないので、身体全体が浮遊していってる。これは通常時のガスや風で浮かぶのとは別の現象に見えるんだよなあ。特異能力抜きでも、電気に関する能力を持っているのかもな。


「さっき捕まえた、まだ動けないパラボラゼラチナスにも電気を流してみよう。余った銅線と電飾があるから、それを付けてやってみる。」


他に出来る事もなく、十体の群れは雑に使ってしまったからな。くだらない事でもやってみて尺を稼がなくては!それに、ひょっとしたら新しい発見があるかも知れない。




橘は、強化ガラスのテーブルの横にしゃがんだ。うつ伏せの状態で銅線を巻き付けるのは、少ししんどい。一度起き上がらせなくては。


腹のあたりに腕を突っ込むと、ひんやりとした表皮に包まれた。これをぐっと持ち上げるつもりだったのだが、腕が飲み込まれるだけである。重さに対して柔らかすぎて、腕一本では支えにならないのだ。


仕方がないので橘は、パラボラゼラチナスの頭部のほうに立った。胸部を両手で掴んで持ち上げることにしたのだ。二つの膨らみを持ち上げようとするが、腹部よりも深く手が沈み込んでいく。結局、陥没していた突起が二つ隆起しただけで終わってしまった。持ち上げようとする力よりも、体表面の吸着力のほうが強いのだ。


橘は今度、パラボラゼラチナスの脚部のほうに立った。両足を掴んで持ち上げると、こちら側はすんなり持つことができた。しかし、足の付け根が持ち上がらない。その真ん中にある、短い触手がガラスに張り付いて離さないのだ。


橘がしゃがんで下から覗き込むと、そこには蘭の花が咲いていた。短い触手が吸盤のように広がっていて、そのように見えたのだ。それは、ぴったりとガラスに吸いついていて離れそうにない。


橘は左肩と腕を使って、パラボラゼラチナスの両足を押し上げる。すると、足の付け根の触手がこれでもかと伸びて吸いついているので、その吸いついている面を、空いた右手で揉んでいく。触手がだんだん解れて、水気を含んだ音を立てて剥がれていった。完全にパラボラゼラチナスの腰が持ち上がるようになった。




「これでようやく銅線が巻けるぜ。」


<エッッッッッッッッッッ>

<いっそ胸と脚に巻きゃよかったやん>

《500円 ポルンガ》<たまらん吸着力だったな>

《1000円 ムホホハンター》<ぺたぺた音だけで興奮したわ>

<口の中通せば楽なのでは>


口はあるけど、肛門はないんだ。中通すと、貫通させられんので固定ができないんだよな。まあ、胴と胸部に軽く巻けたからもういいんだ。


「ポルンガさん、ハンターさん、スパチャありがとう!」


コメント拾いで俺も命拾いって感じだな。だが、何かシューという音が聞こえてきた。


「主任、一体だけ特異能力が発動しました。」


ひとまとめにした内の一体だけが特異能力を発動させたのか。この一体に全部もってかれたりするんだろうか。

 ・・・

どうやら一体だけ特異能力が発動したものの、他のパラボラゼラチナスの固着浮遊を引っ張ることができず、その場で悲しいロケット噴射を続けているようだ。


<スタートミスるとこうなるのか>

<シュールでおもろw>

<裏から見ても何もわからんな>


確かに、笠の裏に噴出孔や燃料の供給をする管なんかが見えないな。これはこれで貴重な資料映像となったわけか。


「ぎりぎり一体の発動ってことは、3km分噴出して終わる気がするな。あまり面白い絵面じゃないけど、最後まで撮影しておこう。」

「はい。ドローンで撮影中です。」


さすがアキラだ。パラボラゼラチナスの電流の感知範囲が、正確にはどれくらいなのか、計算できるようになったら、捕獲が更に楽になるだろう。ただ、捕獲したところで確保中にできることが少ない上に、万が一特異能力によるロケット噴射で人的事故が起こると大変だ。情報処理部にも捕獲に関しては釘を刺されている…。今回の千葉主任、一生懸命に捕獲してたのに可哀そうだな…。


「さて、観察対象を戻して、俺達が捕まえた子に電気を通してみるぜ。俺の予想では何も起きないと思っているが、どうなるだろうな。」


俺とアキラの予想では、特異能力発動後なので、変化無し。ところが実際には、少し変化があった。


<ちょい浮いてないか?>

<ガラスに張っついてるとこめっちゃ伸びとるw>

<銅線の食い込みえっぐ>


若干、横になった状態で胴体が浮いたのだ。だから雲に突っ込んだ後、すぐに落ちてこないんだな。てっきり、群れの性質だと思っていたが、単体で効果があるとは。


身体部位の点灯もある。文字か何かが浮かび上がっている感じだ。間近で見てみると、何かしら意味ありげな紋章に見える。リスナーの誰かが言っていたな…。


「この紋章、結構複雑な形をしているな。人工物と言われたほうがしっくりくるデザインに見えるけど、皆はどう?」


<用途によって違う形になるんだ 俺は詳しいんだ>

<10点満点中5点かな 趣が無いよね>

<下腹部もいいが、脇の下のもいいものだな>


意味わからんレビューコメントで溢れちまった!人が増えると、誰かが悪乗りした時の勢いも激しくなるな。リスナーに声をかける時は、気を付けてやらないといけなくなったぜ。


「聞いた俺が悪かったよ!」

「主任、十体のパラボラゼラチナスが一気に噴射を始めましたよ。」


本当だ。なんかすごい着火音が鳴り始めた。一斉に鳴り始めると、結構おっかない。


「よし皆、最後にこれだけ見送ろう。」


先ほど特異能力を発動した一体を除いて、全てのパラボラゼラチナスが、特異能力を発動して空へと飛んでいこうとする。今度は邪魔するものはなく、雷雲のほうへと向かっていった。残りの九体で先ほどの一体を完全に引っ張ってるな。


<逆さ吊りで草>

<今日も好き放題やったな橘さん>

《200円》<元気でな>


ステッカーサンキュな!リスナーの皆さんのおかげで好き放題やらせてもらってます。最初はどうなる事かと思ったけど、今じゃそれなりに楽しいな。


「それじゃ、十体とも無事に空に帰せたことだし、今日の配信はおしまいにしましょうか。」


今回はいきなりモンスター娘の動きを止めてしまったから、配信の展開がしりすぼみになってしまったな。こうなるとわかってて、やらなきゃいけないのがしんどかった。この条件下でよくやったと自分を褒めてやりたいよ。


配信終了。


「主任、あの…。」


どうしたアキラ?うわっ、眩しい。


「電飾が高電圧でショートしたみたいですね。」


なるほど、銅線に雷が流れたか。熱でパラボラゼラチナスが焼けてないといいけど。


「パラボラゼラチナスは大丈夫です。」

「は…っていうのが気になるね。アキラ。」

「主任、ドローンを自動操縦で追従させっぱなしでした。」




積乱雲の中に潜ったドローンの末路とは。よりによって試験中の試作ドローンを壊してしまうなんて。


今日も配信はそれなりに成功した。フォロワー数も増えたし、同時視聴も悪くなかったよ。収益化だって開始できたし、予算も増えてるし!

でも、これじゃ素直に喜べねえ~!


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応用実験部 実験配信班 橘春


  調査結果報告書


識別名       : 急降下堕天使

生息地       : 海上の空中全域


サイズクラス    : 標準

ウェイトクラス   : 標準

スピードクラス   : 鈍足

ムーブメントクラス : 浮く


フェロシティレベル : 温和

フレンドレベル   : 中立

フィーンドレベル  : 中庸


───────────────────

特異能力 : 回転体噴出ロケッティア


発動

22時間中に一回のみ。


発動条件

対象が500A以上の電流を感知した時。


感知範囲

対象を中心とした半径3km程度。


効果

感知した電流に向かって時速30~70kmで直進する。発動後は、10時間程度活動を停止する。発動の瞬間の効果は低く、止められてしまうと速度が出ずに終了する。


人的被害レベル:重


───────────────────

特徴 : 

MMEI-0067は、体長140~170cm程度の標準的な人型のモンスター娘である。身体全体が白色から青色までの半透明の組織でできており、そのほとんどが水分である。水から離れて生活を続けていくと、その内表皮の透明性が失われてくる。頭部には鉢状の笠がついており、複数の触手が髪のように垂れ下がっている。胴体の起伏が激しく、腹部や臀部の膨らみが大きいが、特に胸部が一番大きい。胸部の膨らみの先端には、それぞれ卵管のようなものが通っている。四肢は細長く、指のような触手が五本ずつ生えている。足の付け根には蘭の花に見える短い触手がついている。


生態 : 

MMEI-0067は雌雄があり卵生であるが、底生生物であるポリプという形態と、浮遊生物であるエフィラという形態を持っており、海中で形態変化を行う。海中から空中へと生活の場を替える時、人型モンスター化し、同時に繁殖を行う。この時から、捕食行動や、触手の刺胞での神経毒の生成は行わなくなる。空中ではガスや風を利用して、浮遊しながら移動する。3km以内に雷が発生すると、特異能力が発動し、高高度まで飛び上がる。逆に、空から陸に飛び降りる事もあり、その被害にあわないよう注意が必要。MMEI-0067は、空中では自分の身体に流れる電気を食べている。また、雲を作っている水分を表皮でゆっくり吸収している。


その他:

通常はガスと風で浮遊して移動するが、電気が流れている時は、その力で空間に固着して浮遊する。

───────────────────


広報部から


今回の映像作品はド迫力の雷が登場します♪パラボラゼラチナスの、見た目からは想像できないパワーを是非ご覧ください!ハメ撮り配信探検隊のフォローをお忘れなく!

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