第2話 試験

試験の日だ。


いつもより少しはやい目覚め。


外はまだ暗い。


ウィル(ついに来てしまった。)


ウィルは着替えを済まし自室を出た。


キッチンには朝食を作っている母がいた。


母「いよいよね、試験」


いつも通りの朝食を終えた


ウィル「母さん、ちょっと父さんのところに行ってくるよ。」


母「はーい。」


ウィルは家を出た、外は暗くて静かだ。


父のところに向かった。




村を出てしばらく歩くと道が外れたところに墓地が見えた。


墓地に入って少し奥に


       「サーク•ハーケン」


と彫られた墓石がある。


ウィルはその墓石の前でしゃがみこんで手を合わせた。


ウィル(今日は入学試験だ、やっと少し父さんに近づけた気がするよ。必ず受かって父さんみたいなカッコいい騎士になってくるよ。)


少し間が空いた後にウィルは立ち上がって家に戻った。


村はまだ静かだ。


家に着いたときに家の隣の倉庫で物音がした。


倉庫の中を覗くと、兄が何かをいじっていた。


見かけたウィルは、


ウィル「兄さん何してるの?」


兄「唐鋤の修繕だよ。昨日壊れちまったからなぁ」


※唐鋤 馬や牛につけて田畑を耕す農具。


ウィル「新しく作ろうか?骨だから結構丈夫に出来ると思うよ?」


兄「いや、大丈夫だ。お前がいなくなってもやれるようにしておかないといけないからな。」


ウィル「そう?…じゃあ家に戻るね。」


ウィルがその場を離れようとしたとき


兄「お前、本当に騎士になるのか?昨日でた魔物も倒せなかったのに。」


ウィル「え…いや、まだ絶対になれるわけではないし…」


兄「でも魔法使いはほとんど入れるんだろ?」


ウィル「そうだけど、全然実戦経験ないから僕は弱いんだよ?そんな僕がすんなり合格出来るかな。」



兄「じゃぁ止めとけ。」


ウィル「なんでそんなこと言うんだよ、昨日まで応援してくれていたのに。」


兄「考え直したんだ。 父さんは強かった。


めちゃくちゃ強かった。どんな魔物も倒してしまう。魔法使いでもないただの人間なのに。


でも、死んでしまったじゃないか。


お前はどうだ?魔法が使えてもこんなに弱くて。


このままいったらお前死ぬぞ?


父さんみたいになって欲しくないんだよ…。」







ウィル「兄さんありがとう。でも多分大丈夫だよ。きっと僕と父さんの立場は違ってくるし。父さんを殺した魔物も最初で最後の事例だったんだろ?

そもそも受かるとも限らない。

もし受かったとしても危なそうだったらすぐ逃げてくるよ。」



兄「すぐ帰ってこいよ。」


ウィル「落ちる前提じゃんw 危なくなったら帰るよ。」




ウィルは家に戻り出発までに準備をした。


しばらくして家に誰かが来た。




ガタガタガ 




馬車のようなものが家の前で止まったおとがした。


母「あら、時間通り来たわね。」


ウィル「おじさんいつも遅刻ばっかだからね」




ガチャ(玄関の扉が開く音)




叔父「ウィル!準備できてるか!?」


ウィル「完璧」


母「ヌーベルス珍しいじゃない、時間通りなんて」


叔父「当たり前だよ姉貴。甥が貴族の仲間入りするんだから、遅刻なんて出来るわけないだろ。」


ウィル「まだ決まった訳じゃないよ。騎士になったとしても貴族にはなれないかもしれない。」




叔父「そうなのか?まぁサークさんが貴族じゃなかった時点でそうなのか。じゃどうやったらウィルは貴族になれるんだ?」


ウィル「騎士団の中で上の階級になったら貴族の地位が貰えるって昔父さんが言ってた。ちなみに階級の上は魔法使いがほとんどらしい。」




叔父「そうか!ならウィルは貴族になったも同然だな!」


ウィル「まず試験で合格できたらね…。」




叔父「そろそろいくか!」


ウィル「うん。」


母「忘れ物はないね?」


ウィル「大丈夫だと思う。」




外は薄暗い朝


玄関を出ると泥がついた屋根のない荷台とそれを引っ張る馬が一頭いた。


そしてウィルが荷台に乗り叔父が馬にまたがった。


母は玄関前で彼らを見送る。




母「いってらっしゃい。」


パチッ(鞭の音)


ゆっくりと馬車が動き出した。




ガタガタガタガタと馬車は動く。


畑が見えた。


兄が修繕した唐鋤を牛に引かせて土を耕している。


兄がこちらに気づいて手を振った。


ウィルは少し立ち上がって手を振り替えした。




ガタガタ


気がつくとすでに村から出ていた。




ウィル(そういえば昨日でた魔物はなんだったんだろう?教科書は網羅してるはずなんだけど。)


カバンから本を取り出しペラペラとめくっていった。


ウィル(あれ?どこにも載ってない。この教科書父さんのお古だからもしかしたら古いのかな?)




パタンと教科書を閉じて裏を見る。




ウィル(うわ、20年も前じゃん。筆記試験大丈夫かな。)




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


外はすっかり明るくなった。




ウィル(…何時間たった?…もう6時間以上たってるでしょ。おじさんも疲れきっているのか全然喋らなくなった。…僕がまだ小さいころ父さんは週末に絶対家に帰ってきた。まさかこんなにも時間がかかる道のりを毎週行き来してたなんて…。)




叔父「おいウィル!」


ウィル「何?!ビックリしたぁ」




道の向こうから巨大な建物が見える。


あれは…城壁だ。




ウィル(小さいころ来たことあったけどこんなに大きいなんて)




都市ローダ


城壁にある大きな門には多くの人々が通っていた。


ウィルたちは門の前に着いた。




叔父「お前試験会場どこか分かるのか?」


ウィル「ここには一回来たことあるから大丈夫だよ。」


叔父「そうか、俺はここに用事があるから今日一日はここら辺にいるよ結果分かったら教えに来てくれ。ま、ウィルなら大丈夫だろうけどな!」




ウィル(なんかおじさんの期待すごいなぁ)「うん分かった!」




ウィルは門の中に入っていった。


街に入ると地面がレンガで埋め尽くされていて、道沿いには様々な店が立ち並んでいる。


村とは比べ物にはならないくらいの多い人通り、


すでに叔父の姿は見えない。




大通りを歩いていくと奥からだんだんと巨大な建物が見えてきた。


ウィル(あれだ、試験会場だ!昔父さんがつれていってくれたところ。)




騎士になるための試験はそこで行われる。




さらに大通りを進むと建物に入るための門が見えた。


門のとなりには【ローダ騎士養成学校】と書かれている。




体格がいい若者が次々に建物に入っている。




ウィルは緊張しながら建物に入っていった。


入ると人が並んでいる。


ウィルは鎧を着た人に誘導され列に並んだ。


先のほうを見るとどうやら書類を書き、右の方の先にいる受付の人に書類を渡していた。




10分ほどたつとウィルの番がきた。




受付の人に左上に567と書かれた書類を渡されてこう言われた。


受付嬢「ここに名前、年齢、住所を書いてください。」




その場にあったペンで




      ウィル・ハーケン  17


そして


ウィル(住所ってこうでいいのかな?)


  


      ハリギベッド=スノーク村




書き終わると受付嬢に567と書かれた小さな紙を渡された。


受付嬢「こちらの番号が書かれた紙は個人の証明をするものなのでなくさないようお持ちください。」




そして受付嬢はウィルが書いた書類を確認した。




受付嬢「はいウィル・ハーケンさんですね。確認したので、あちらの受付にご提出ください。」




受付嬢が指した方向は左だった。




ウィル(あれ?みんな右に提出してたけど…まぁいいか)


受付嬢「試験は正午、広場で行いますので、遅れないようお気をつけください。」


ウィル「はい、」




そしてウィルは書いた書類を左側にいる受付に渡そうとすると、その受付はウィルを少し見つめ、小さくうなずき書類を受け取った。




ウィル(何かついてた?)




一旦試験会場を出て向こうに見える時計塔で時間を確認した。




ウィル(11時40分かぁ、結構ギリギリだったんだ。


それにしてもあと20分しかないって微妙だな、10分前には会場にいときたいし。…遅れたらまずいから


20分ぐらい会場内で待つかぁ。)




もう一度会場に入り、広場らしきところで待つことにした。




ウィル(確か試験内容は魔物の知識を問う筆記、試合、だったはず。


筆記…まずいなぁ、教科書を結構やりこんだけど、


20年前の古い物だし、昨日の魔物も載ってなかったし、肝心なところが載ってない物だったらどうしよ…。)




するとどこかから


「ねぇ、君」




ウィルと同じような背丈の少年、髪は金髪の部分がある。


あと雰囲気が明るい




少年「ねぇ、君魔法使い?」


ウィル「え!?…はい魔法使いだけど…」


(この前の人も僕が魔法使いって気づいたよな…)


少年「やっぱり~俺もだよ!どこからきたの?」


ウィル「ハリギベッド、スノーク村ってとこから来たんだ。」


少年「ハリギ…スノーク…あぁ!あそこか!ここから南の!結構距離あるね」


ウィル「う、うん ^^:」




ウィルは困惑している




少年「あっ!ごめん!俺はレイズ・テスター


よろしく!」


ウィル「僕はウィル・ハーケン、よろしくね。


ところでなんで僕が魔法使いって分かったの?」


レイズ「え?そりゃわかるでしょ普通、他の人と魔力が違うし。」




ウィル(この前の人も"魔力"が何か言ってたな)


「ねぇ魔力って何なの?」


レイズ「え?魔力知らない人いるの?魔法を使うときに出てくるでしょ。なんならオーラっぽいかんじで体から出てるじゃん。魔法使いで魔力知らない人ってはじめてだよ」




ウィル(魔力、見えないなぁ。魔力って魔法使いにとっては常識的なものなのかな。小さいころ父さんに色々教えてもらったけど、魔力って聞いたことがない。)


「ねぇレイズ君、僕その、人から出てる魔力が見えないんだけど、魔力が見えるようになる方法とかってあるの?」




レイズ「見える方法…俺は自然に見えるようになったからなぁ…あっ!ワンチャンこれかも!」


ウィル「えっ!なに?」




レイズ「だが教えない!(キリッ)」


ウィル「えっ」




レイズ「教えちゃったら試験で不利になるかもだし、まぁ終わったら教えるよ」




レイズはそう言うと去っていった





ウィル(うわぁヤバい、このままじゃ魔法の魔の字も知らない僕は合格できないかも…どうしよ時間ももうそろそろ…)




時計塔を見ると11時55分だ




ウィル(やばっ遅れる!)




広場の奥を進むと大きな台があり、そこに人々が集まっているのが見えた。




ウィル(いっぱい人がいる。あそこでやるのかな)




ガヤガヤ




ウィルも人混みに入り、しばらくたつと、




ガンガンと大きな足音を出しながら台に登る数人の鎧を着た人たちが現れた。


騒がしかった周りも静かになった。




すると鎧の頭だけ外した女性が


「これより試験をとり行う!番号を呼ばれたものは私についてくるように」




すると、042、342などの番号を大きな声で呼んでいった。




鎧の女性「以上!」




そして女性は台を降り大勢の人を連れて広場のさらに奥に行った。




ウィル(あれ、呼ばれなかったのはいいけど…、


残ったのが…30人?もっと少ないかも…なに?怖いなぁ、呼ばれなかったら失格とか?いや。流石にそれは無いと思いたい。)




残った少数は30人ほど、中には先ほど合った少年、


レイズがいた。




すると台の裏から身長が高く、青髭が生えやる気の無さそうな男が出てきて言った。




やる気のない男「番号呼ばれなかった人はこっちねー」




男は女性が行った方向と反対に向かった。


そして残された人達は当たり前かのようにその男についていった。




ウィル(みんな行ってる…僕も呼ばれなかったし行くしかないよな…)




ついていくウィル




しばらく歩くと地面がレンガから芝が生えていない薄茶色の土の地面に変わった。


先ほどまでいた広場と異なり、そこはより強い日差しを受けている。


壁沿いに木が生えていて、その下には木陰ができている。




日差しに目がなれたときに気づいた、


中央辺りに大きな白い枠が地面にかかれていた。




何となく察しがついた




ウィル(あそこで戦うのか…)




やる気の無い男「はい、自己紹介から、俺はドルギナ、試験管だ。じゃぁ早速、試合を行う。


ルールは…えっと…」




男はポケットから紙を取り出し、それを見ながら




やる気の無い男「あー…一対一で行う、五分間戦って先に相手を枠外に出したら勝ち、五分過ぎても枠外に出た者がいない場合は審判による判定で勝者が決まる。…だる…あっ、あと魔法と武器はあり…」




ウィル(あの人だるって言った?)




やる気の無い男「んじゃまずは」




ポケットからまた紙を取り出した。




やる気の無い男「レイズ・テスターと…ウィル・ハーケン、」




ウィル(えっ!?いきなり!?)




杖を持ったレイズが枠の中に入っていった。




レイズ「偶然だね!お互い頑張ろ!」




ウィルは杖をとりだしカバンを地面に置き重い足取りで枠内に入った。




ウィル(他の人が戦ってるところを見たら何か掴めるかもとか思ってたのに…まずいなぁ…レイズ君の魔法は分からない…受かるためには何とかしないと…)




レイズ「緊張してる?まぁ気楽にいこうよ、」


ウィル「ははっ」




やる気の無い男「じゃ五分ねよーいスタート」




ウィル(始め方軽すぎない?)




レイズ「じゃぁやろうか」


ウィル(レイズ君…どんな魔法なんだ?)




バチッ




レイズの杖から電気らしきものが出てきた。




ウィル(あれ…電気!?カッコいい…いや待て骨って電気通すっけ?)




バチッ…バチッバチッバッバッバチ!




レイズが一瞬大きな電気に包まれた。




ウィル(嘘でしょ、怖すぎる)




レイズ「これ、持っといて」




レイズは枠外にいたレイズの友達らしき人に杖を渡した。




レイズの友達「杖なしはきついんじゃないか?」


レイズ「大丈夫だよ、さっウィル君、やろうか」




ウィル(杖を手放した?杖がないと魔法は使えないはずなのに)




バチバチッ



レイズの拳が電気で包まれる。





バッ




まばたきをする暇なくレイズはウィルの目の前に来た。


ウィル(はっ!?ヤバいッ!)




レイズの拳が飛んでくる




ウィル「うっ!」




ウィルはとっさに目の前に大きな骨の壁を作った。




ドォン!




物凄い衝撃が骨の壁に伝わった。




ウィル(今の魔法!?速すぎる!)




ザッ、




レイズはウィルの背後に来ていた




ウィル「ッ!?」




バン!




レイズは電気をまとった平手でウィルを突き飛ばした。




ウィル「うっ!」




バン




ウィルは突き飛ばされた先にあった骨の壁にぶつかった。



ウィル「うぅッ」(これ、どうする?)



ウィルは空中にとがった骨を作り出し、レイズに飛ばした。




レイズ「ウィル君は骨かぁ。いい魔法じゃん」




バチュン!




飛ばした骨はレイズに近づくとレイズからでた電気をによって粉々になった。




ウィル(嘘だろ?)




続く

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Wįtherd 有田くん @Aritakun

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