Wįtherd
有田くん
第1話 骨の魔法
幼い男の子、自分、船の上
目の前には黒い塊と血まみれの床。
(なんでこんなに……。あぁ)
「ー悲鳴ー」
皆が叫んでる。
そして、爆音が鳴り響く。
……_ーードッ
ゴォン!!
~ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
…
ゆっくりと目を開ける。
(またこの夢か…。)
…
下から母の声が聞こえた。
母「ウィル!そろそろおきなさーい!。」
…
(起きるか…。)
ベッドから足を下ろしゆっくりと立ち上がった。
服を着替え自室から出て、階段を降りた。
ギシ
ギシ
ギシ
下に降りると母が朝食を用意していた。
ウィル「おはよう母さん、」
ウィルは朝食を済まし、壁にかかった自分のカバンをもった。
ウィル「畑行ってくるよ。」
母「はーい」母が食器を洗いながら言った。
ガチャ
ウィルが玄関を開けると外はまだ暗い空色だ。
家のとなりには広い畑があった。作物はまだ植えていない。
少し先には農具をつけた牛とウィルの兄がいる。
ウィル「兄さん朝早いね!」
兄「ちょうどよかった!ここから先耕しといてくれ!」
ウィル「わかった!」
兄はその場を離れ。ウィルは家の隣にある小さい農具倉庫の下にカバンを置き、畑に入り牛に繋がっているひもをもって畑を耕し始めた。
しばらくして兄は家の方から戻ってきた。
兄「ありがとうなウィル、便所行きたかったんだ。」
ウィル「いいんだよ、兄さんは朝からやってくれてたんだから。」
兄「そうか、まぁでもウィル、明日だろ試験、父さんみたいになりたいんだったら、勉強とか練習しとけよ。」
ウィル「…あぁ…、じゃぁそうするよ、ありがとう兄さん。」
ウィルは倉庫下のカバンを持って立ち去った。
ウィルはしばらく歩き村を出て近くの森に入った。
ウィル(いるかな…?)
ウィルは森の中で立ち止まり、周りを見渡した。
……
ガサッ !?ッ
ウィル(いた!あれは…スライムか?)
ウィルはかがみこんで様子を覗いた。
ウィル(…よし、スライムだ。スライムだったらいける…。)
…ガサガッサガサッ…
スライムは猫らしき動物の死体に覆い被さって、取り込んで消化している。
ウィルはカバンから杖を取り出した。
ウィル(スライムは水分と細かい有機物、それに魔力が流れて魔物として発生する。…スライムに核らしきものが無く、切ったり潰したとしても分裂するだけ。…スライムには物理的な攻撃は効かないけど…ッ!)
素早くスライムに近づき、持っていた杖をスライムに刺した。
バンッ! ビヂャ スライムは破裂しウィルに飛び散った。
ウィル(体内に魔力を流し込むと形を保てなくなって破裂する!…よしちゃんと勉強した通りに出来た!
この前のときはどうしたらいいか分からなくて大変だったから。…でも服汚れたな……家帰って着替えて勉強しよ…。)
ウィルは森を出て村に戻った。
村に着くと空はすっかり明るくなっていた。
するとある民家の前で人が集まっている。
ウィルは気になって近づいて集団の外側にいた知人に話しかけた。
ウィル「何かあったんですか?」
知人「あぁウィルか、ゲーベルさんの家に魔物が入っちまったみたいなんだ。」
ウィル「えぇ…大丈夫なんですか?」
知人「ゲーベルさんは大丈夫なんだが…」
ウィル「?」
ザワザワ
ゲーベルが焦ってウィルに近づいてきて両肩をつかんだ。
ゲーベル「ウィルか!?たっ助けてくれ!」
ウィル「!?ッどっどうしたんですか?」
ゲーベル「ジェムとサリバンが!」
周にいた人「ゲーベル落ち着け!いまヘメルが馬で騎士を呼びにいったから!」
ウィルが困惑してると、
知人「ゲーベルさんの妻と子だよ。まだ中にいるんだ。」
ゲーベル「騎士達がいるのは隣の村だ!往復するのに20分はかかるんだ!このままじゃ騎士が来る前に殺されちまう!お願いだ!魔法使いだろッ?助けてくれよ…。」
ウィル「落ち着いてください、二人を助けにいきますから。魔物はどんな見た目をしていましたか?」
ゲーベル「黒かった…黒い布の塊のようで、…すまない暗くてよく分からなかったんだ…。」
知人「大丈夫なのか?この前スライムとしか戦ったことがないって言ってたじゃないか。」
ウィル「多分大丈夫です。魔物についてはしっかり勉強してきましたから…。」…(黒い布の塊?ゴーストとかその辺りか…?)
ゲーベルの家の玄関扉のドアノブに手を掛けゆっくりと開けた。
…家の中は異常なほど暗い。
ウィル(…暗すぎる。光を放つ魔物は知ってるけど…周りを暗くする魔物なんていたか?)
ウィルはゆっくりと家の中に入った。
ギシッ ギシッ ギシッ ウィルの足音が響く。
家の中は静かだ、外の騒がしい声も、ウィル以外の生物の音も聞こえない。
ウィル(外の音も扉を閉めてから全く聞こえなくなった…これは魔法?外の影響を家の壁を境に遮っているのか?)
最初の部屋には誰もいない、その事を確認して別の部屋を調べようと思った。
ウィル(二人はどこにいるんだ?…出来れば魔物と遭遇せず二人を助けたい…。)
別の部屋の扉をゆっくり開けた。
……ギィ
目の前になにかくわえた大きなコウモリがいた。
そしてコウモリはウィルに気がつきこっちを見た。
そのときにはっきり分かった、
コウモリがくわえていたのは人の腕だ。
ボトッ
コウモリはくわえていた腕を落とした。
ウィル(え…嘘だろ…大きなコウモリ?……腕?…遅かった?!…ッまずい魔法を!)
ウィル「ッ!」
ウィルは杖を取り出しコウモリに向けた。
すると針のような形をした骨が現れ、コウモリに向かってとんだ。
バコッ!
骨は壁に突き刺さった。コウモリはいない。
ウィル(嘘だろ?!どこに行ったんだ?!暗くてみッ)
ザッ、
ウィル「いっ!?ッ」
ウィルの左肩が切られた。
ウィルは左肩の切り傷を押さえながら周りを見た。
(後ろから?!まずい場所が分からないと攻撃できない!)
ガタッ 物音がした。
ウィル(くるっ攻撃がッ!)
シュ 耳の近くで風を切る音がした。
首から血が垂れてきた。
ウィル(危なかった、避けなかったら脈を切られてた。…次の攻撃が来る前に何か考えないと。)
・・・ー
ダッ!!
ウィルは走り出し、落ちていた腕を回収し部屋を出た。
バンッと扉を閉めると全速力で他の部屋を調べた。
3部屋目で二人を見つけた。
片腕がない女性と小さい男の子が隅で隠れていた。
ウィルは二人に近づき、
ウィル「よかったまだ遅くなかった、立てますか。」
女性「はい、助かりました、あの魔物は倒したのですね。」
女性は応急処置で細い布で縛った切断された腕の傷口を押さえている。
ウィル「いえ!倒せません!自分の実力不足です!」
女性「え?ッじゃぁ」
ウィル「急いで、立ってください。魔物が来る前にここから出ますよ。」
女性「ちょっまっ、ほらジェム行くわよッ」
二人は立ち上がった。
ウィル「壁、壊してもいいですか!」
女性「えっあっはい?」
ドォオン!
ウィルは先ほど出したものより大きい骨を壁に飛ばした。
ウィル「ほら出ますよ!はやく!」
ウィルは二階から出るために外に骨で大きな台を作り出し二人を先に外に出した。
バンッ!
ウィルの番になると閉じていた部屋の扉を突き破りコウモリが部屋に入ってきた。
キキキキッ! 鳴き声と共にこっちに飛んできた。
ウィルは急いで外に出た。
コウモリは家の外まで追いかけてきたがウィルに攻撃せずにすぐに家に戻っていった。
ウィル「ふぅ……」
外にいたゲーベルが自分達に気がついた。
ゲーベル「ジェム!サリバン!よかった!」
女性「あなた!」子供「パパ!」
ゲーベルとその妻と子供が抱き合っている。
ウィル(よかった…あっ!)「ゲーベルさんすみません!家壊してしまって!」
ウィルはゲーベルに近づき謝った。
ゲーベル「いいんだ、無理に頼んだ私の方から謝らせてくれ。しかも怪我をして…すまない。」
ウィル「…大丈夫ですよ…あっ…これサリバンさんの腕です。冷やすものとかありますか?切断されてしまっていましたが後で来る騎士隊の中に回復系の魔法を持ってる人がいると思いますので、その人に頼んで繋げてもらいましょう。」
ゲーベル「ありがとうウィル君、妻の腕は私が冷やしておくよ。」
ウィルは腕をゲーベルに渡した。
ウィル(僕も怪我を治してもらうために騎士が来るのを待とう。)
しばらくして四人の騎士と一人の村人が馬に乗って来た。
騎士1「魔物はこの家に入ったのか?」
村人「はいそこです。」
騎士2「君たち魔物は見たのか?」
ウィル「はい、大きなコウモリのようでした。」
騎士3「班長、家に結界が張られています。」
騎士1「どんな結界だ?」
騎士3「入ってみないと分かりません。」
ウィル「あの、その結界は外の光や音といったものを遮断するようなものです。」
騎士1「魔法は?」
ウィル「あ…分かりません。」
騎士1「協力感謝する。」
騎士1はウィルの方を見もせず言葉を放った。
騎士1「大したものじゃない。ルーフ!お前は怪我人を頼む。」
騎士4(ルーフ)「分かりました!怪我をした人はここに来てもらえますか!」
騎士4は杖を取り出した。
ウィルと腕をもったゲーベルと妻のサリバンは騎士4に近づいた。
先にサリバンの腕をくっつけてもらった。
ウィルが首と肩の傷を治してもらっているときウィルは3人の騎士達を見た。
3人の騎士達はそれぞれの武器を取り出しあの恐ろしいコウモリがいる家に入っていった。
2分ほど過ぎた。
騎士達は鎧に汚れを少しもつけずに家から出てきた。
リーダーと思われる者が巨大なコウモリの死体を持っている。
ウィル(やっぱり騎士はすごい、僕はあきらめて逃げ出してしまったのに…。)
騎士4「ねぇ」
ウィル「はい」
ウィルを回復している騎士が話しかけてき
た。
騎士4「君魔法使いでしょ。」
ウィル「えっはい魔法使えます。でもなんで分かったんですか?」
騎士4「君から出てる魔力が魔法使いのものだったからね。どんな魔法なの?」
ウィル(魔力…魔力で魔法使いか分かるのか?
というか魔力ってなんだ?でもここは知ってるふりしとこ。)
「ぱっとしないですけど骨を出したり治す魔法です。」
騎士4「骨?骨を出したり治したり?私と同じ回復系?」
ウィル「いえ、治せるのは骨だけです。あと多分物理系です。」
騎士4「そっかー、で魔法使いならさ明日の試験は受けるの?入学試験。」
ウィル「はい。」
騎士4「そっかぁ、平民が貴族になれるのもあるし、王国のためにもなるから。やっぱり魔法持って産まれたらみんな騎士目指すよねぇー。
君も魔法使いだから結構簡単に入れるんじゃない?私のときはそうだった。」
ウィル「そうなんですね。」(父さんが言ってたとうり、魔法使いは受かりやすいんだ。)
騎士4「あとなんでそんなに濡れてるの?」
ウィル「スライムです…」
騎士4「へー大変そ、はい治したよ。じゃいくね」
ウィル「ありがとうございました。」
(あの人若かったな、多分父さんのことは知らないだろうな。)
騎士4「どうでしたか?」
騎士1「コウモリの魔獣だ。」
騎士2「村の皆さんこれで私たちは戻ります。」
村人「ありがとうございます。」
騎士たちは村から去っていった。
ウィル(まだ昼にもなってないのか。)
その後ウィルは家に帰りスライムで濡れた服を着替え明日に備えて勉強したり食べたり寝たりした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
続く
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