第24話 初めてのドッグラン!(後編)

すだちを抱えながら、ドッグランの入口の二重扉を潜り抜けました。

白い柵に囲まれた、緑の芝生の上には三匹の小型犬がくつろぎながら、こちらをじっと見ていました。傍らには飼い主さんらしき男女の姿があります。


おずおずとすだちを芝生の上におろしたら……


ぱっと


すだちの顔が輝きました。


本当に「輝いた」としか表現しようがないくらい、表情が柔らかく、明るくなったのです。


そして、まっしぐらに先にいた三匹の元へ向かっていきました。

手術したばかりの左脚はまだ毛が生え揃っていなくて、痛々しかったけれど、それでも、きちんと走れています。


そして、早速、挨拶……相手のわんこの鼻に鼻を合わせました。それから、お尻の匂いをかぎあって、ぐるぐると回って……その間もすだちの尻尾はちぎれそうなぐらい、ぶんぶん、ぶんぶん、嬉しそうに回転しています。


ああ、そうか。


すだちは、求めていたのです。


自由に目いっぱい走れる場所を。同じ仲間である犬たちと交流できる場所を。


すだちがいた場所は多分、ひどい場所だっただろうけれど、そこには同じ境遇の犬たちがたくさんいて……寂しさを紛らわせていたのでしょう。


私たちに引き取られて、人間の愛は知ったかもしれない。けれど、

同じ犬との温かな交流もまた、すだちには……すだちだけではない、犬には大事なものなのです。


マロンはあまり社会化がうまくいかず、犬が好きではなかったので、忘れていた視点でした。


すだちが遊んでいる間、私は飼い主さんたちと、おしゃべりをしました。

脚のことを聞かれるので、すだちの境遇も話しました。みんな同情してくれたし、すだちは偉い子だね、と言ってくれました。

そして、私に引き取られたすだちは幸せだと。


そうなのかな?

すだち……君は、私に引き取られて幸せかい?


ドッグランを走る、すだちの顔は生き生きとして、初めて会った時の、あの死んだ魚のような目が嘘みたいです。


この、生き生きとした目をずっと守り続けたい。


そう思いながら、初めてのドッグランで気が付いたら1時間ぐらい過ごしていました。

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