第20話 抜糸までの、長すぎる一週間(後編)

五日目

すだちのリハビリへの抵抗がますますレベルアップしています。

くるくる回転しようとしたり、回しているのと反対側の足をわざとばたつかせたり、

座ろうとしてみたり、手を変え品を変え、とにかくリハビリが嫌なことを伝えてきます。


でも、すだちの抵抗に応じてこちらもレベルアップしています。


母はすだちの保持の仕方が上手になり、最初のただ押さえつける、というところから、ちょっと持ち上げてみたり、私がすだちの左脚を回しやすいように体位を変えたり、すだちが抵抗をしようとすると、それを先んじて辞めさせたり。


私自身も毎日やっているからか、脚を回すのに慣れてきました。

最初はおっかなびっくりだったし、痛いだろうな、と思うと、ためらう部分があったのですが、逆にくるくると回してさっさと終わらせて、わんち○ーるをあげた方が

こちらも時間と労力の節約になるし、すだちも楽なのだということが分かってきたのです。


六日目

すだちは左脚をひきずっているせいで、きちんとしたお座りが出来なかったのですが

(花魁座りのような崩したお座りしか出来なかったのです)

今日、おすわりをさせたら、なんと左右対称のちゃんとしたお座りをしました。


リハビリの成果がきちんと現れています。


母はちょっと涙ぐみながら「頑張ってリハビリさせてよかった。先生を信じてよかった」と言いました。

エリザベスカラーのせいで、あまり歩いたり走ったりはできないのですが、この感じだと、抜糸して、エリザべスカラーを取れば思った以上に動けるかもしれません。


明日の抜糸が楽しみになってきました。


「すだち、明日は病院だよ」


というと、すだちは「?」という顔をしてこちらを見ます。


マロンは病院があまり好きではなく、病院、という単語を出すと慌てて隠れようとしていたことを思い出します。


でも、病院という単語を出しても何のことかわからない。それぐらい、すだちにとっては馴染みのない場所……シニアに近い年齢なのに、病院に馴染みがない、なんて、この子はよく生き抜いてくれたものです。


すだちは今夜も私の布団の枕もとに丸まって、寝息を立てるのでしょう。


こんなに人に懐いてくれる子が愛されなかった理由が、わかりません。

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