第19話 抜糸までの、長すぎる一週間(前編)

一日目

すだち、リハビリを嫌がります。

すだちが身を屈めたり、よじったりすると、足を回すことが難しくなるのですが……。

そのことをトライ&エラーで知ったすだちは、とにかくリハビリをあの手この手で妨害してくるのです。

困った。でも、ここは心を鬼にする場面です。

最初が大変。今が頑張り時って先生も助手さんも言ってたものね。

傷口にはまだ赤い色が見えて、すごく痛そうで可哀想だけれど、このまま固まってしまって、また再手術、とか、結局足を引きずって歩く、という方が可哀想だものね。

心が萎えそうでも、頑張ります!


二日目

母も、リハビリを嫌がります。

すだち、まだ私には従順なのですが、リハビリを手伝ってくれる母を敵だと認識しているのか何なのか、リハビリを補助する母に「やめろこのやろう!」的に、体当たりして何とかリハビリを阻止しようとします。

……とはいえ、しょせん体重2kgぐらいしかない、仔犬ぐらいの体躯のすだちの体当たりなど、肉体的には痛くもかゆくもないわけです。

そう「肉体的に」は。


でも、母のメンタルには効いたようで……


「ねえ、本当に200回も必要なの? しかも朝も夜も?」

「ちょっと回数減らしてもいいんじゃない?」

「こんなに痛がるなんてやり方あってるの?」


と、言い出し始めました。


わかります。気持ちは。でも。

私は「大丈夫。ちゃんと習ったし、助手さんの目の前で私もすだちの脚を回したから」

と、言い

「最初が一番つらい。今が肝心だって先生も助手さんも言ってたよ」

と、母を説得します。

母ははぁー、しんどいねぇー、と言いながらもすだちの身体を保持してくれます。

母のモチベーションが下がらないようにする方法も考えなくては……。


三日目

私も、リハビリが辛いです。

っていうか、夜はともかく、朝起きるのが辛いです。でも、すだちの脚の回し方を知っているのは私だけ。母の手を借りられる時間に起きる……となると、午前7時前ですが。

とにかく起きなくてはいけません。

そうして、地味に母は仕事のため帰りも遅いので22時過ぎまで起きていなくてはなりません。睡眠時間がごりごり削られていきます。(昼寝はしているけれど、今まで一日中寝ていたような生活と比べるとなんとも)


と、ここまで書いて思いました。


リハビリ、三方吉どころか三方嫌か三方辛い、という状態じゃないですか。やだー。

でも……この地獄のリハビリの先にすだちが思う存分走り回れる……ダッシュできる未来が待っているのだ。

だから……頑張らないと。


四日目

父が、すだちがあまりにも可哀想、と言い出しました。


リハビリをしないと、もっと可哀想なことになる、と私が反論すると、

「いや、リハビリをすることに反対しているんじゃなくて、何かご褒美をあげるとかしないとどんどんリハビリが嫌になってしまうんじゃないか」と、もっともな助言を受けました。


確かにな……。


でも、すだちはマロンと比べると、食が細くてあんまりご飯を食べません。

(たまに残します)

まあ、まだエリザベスカラーつけっぱなしで、お散歩できないお外で運動できない、だからお腹も空かなくて……という悪循環になっている気もします。


この子が大好きなおやつか何かあればいいのだけれど……と。


いろいろ試した結果。


今はいろいろ問題があるあって下火のメーカーさん(当時はペットフードと言えば!って主流だったのですが)の、わ○ちゅーる


これが、大ヒットしました。


思えば、マロンのお薬を包むように買ったものだったのですが。

リハビリのご褒美にわ○ちゅーるをあげるようになってから、ちょっとだけ、ちょっとだけだけど、すだちの抵抗が減ったような……気がします。


母に体当たりするのは相変わらずですが……。トホホ。

後半に続きます。

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