第21話 ようやく抜糸の日を迎えて

やっと待ちに待った抜糸の日を迎えました。

新しく貸し出してもらった長めのエリザベスカラーのおかげで、すだちの傷口は

また開くこともなかったし、以前のように血がじんわり滲むこともありませんでした。


C動物病院に赴いて、先生の診察を受けると先生はまず、すだちの左脚をぐるぐる回し始めました。遠慮のない大きな動きにすだちが身をよじらせますが、先生は容赦なく、前方に、後方に、やや外回し、次に内回し、といろいろな角度から回転させ、すだちの様子を見ています。


すだちは「この人に抵抗しても無駄だ」という雰囲気を感じ取ったのか、意外と大人しくされるがままです。怖いので有名な先生は、珍しくにこっと笑って

「リハビリ、頑張ったみたいだな」

と言いました。


「足がちゃんと柔らかく動いている。リハビリをちゃんとしていた証だ……まあ筋肉は相変わらず全然なくて、ふにゃふにゃだが、これから鍛えればいいだろう」


私は感激のあまり、ちょっと泣きそうになりながら、はい、とだけ応えました。


「じゃあ、抜糸するからな」


と、言って先生は鮮やかな手つきでパチンパチンと、糸を切り、足とお腹の糸をするり、取ってしまいました。

傷跡はきれいでした。

もちろん、傷のある個所は毛を剃ってありますから、ちょっと目立つと言えば目立つのですが。でも、見た目にはほとんどわかりません。


「油断せず、リハビリはこれからも、続けるんだぞ」


先生はやっぱり犬が好きなんだ、元気になった犬をみると嬉しいんだ、そう感じさせる弾んだ声でした。私はとてもうれしくなりながら診察室を後にしました。


エリザベスカラーを返却すると預り金1500円が返ってきました。

買い取らせる動物病院も多いと聞きますが……C動物病院は本当に良心的なんです。


さて、せっかく抜糸されたので、次に挑戦したいのは、お散歩。トリミング。ドッグラン。


やりたいことはいろいろあります。


すだちはうっとおしいエリザベスカラーが取れて嬉しいのか、目をきらきらさせています。


リハビリが終わったわけではないけれど、大きな山を一つ、超えた気分でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る