すだちとの出会い
第3話 愛犬マロンの死、そして新たな出会い
愛犬マロンを失った時、私たちは心の準備が全くできていませんでした。
もちろん年でだんだんマロンは弱っていました。
散歩にも行きたがらなくなり、寝ていることが多くなっていました。
とこが痛いのか辛そうにもしていました。
でも、頻繁に獣医にもかかっていて、きちんと、お薬も飲んでいました。
だから、マロンがいなくなる日はもっと、もっとずっと先のことだと思っていたのです。
亡くなる前日、マロンは久しぶりの美容室の日でした。
朝ご飯を完食し、準備万端。
母と父から、いつも通り頭を撫でられ、きれいになって帰ってくるんだよ、お母さんとお父さんはお仕事行ってくるからねぇと声をかけられてました。
私は、犬の美容室(トリミングサロン)にマロンを預けたあと、あんまり自分自身の調子が良くなかったので、自室でずっと惰眠を貪っていました。
眠っている途中、トリミングサロンから電話があり、マロンを迎えに来て欲しいという言葉とともに「マロンちゃん、あまり体調が良くないみたいです。それに舌の色が悪いです」
と告げられました。
私は急いでマロンのお迎えに行きました。
マロンはあはあ、と肩で息をしていました。
そして、確かに舌の色が紫色をしていて、私はすぐその場で、かかりつけの獣医に電話をかけ診てもらえないか頼み、夕方の街中をキャリーケースを持って、疾走しました。
その日の獣医さんは、いつもの獣医さんとは違って臨時勤務の獣医さんでした。
彼はマロンの様子を見ると、すぐ酸素吸入が必要だ、と言って。
急患だからと、他の患畜さんを全て断って、マロンの処置を始めました。
私はマロンに声かけをしました。
マロン頑張って。でもマロンは酸素の吸入器を拒んでしまいます。
顔に器具をつけられるのが嫌みたいです。
ここには、酸素室の設備がないため、伝手のある病院に運ぶしかありませんが、大きな病院ご存知ですかと聞かれ、いいえ、今まで小さな動物病院にしかかかったことがないので。と言うと、その非常勤の獣医さんは酸素室のある動物病院に連絡を取ってくれました。
そして、私とマロンはタクシーでその動物病院に向かいました。
運ばれた大きな動物病院で酸素室に入れられ、点滴をされ、それでもマロンは小さな部屋の中でチョコまかと動いていました。
私はそこで連れて帰るか治療するかの二択を迫られました。
連れて帰れば、今日中に亡くなるだろう。
治療すれば半々ですと言われました。今日が山だとも言われました。
私はそこで母にマロンを会わせたい気持ちもあったのですが、マロンを連れて帰らず治療すると言う選択をしました。
そして、翌日の朝方
病院からマロンが亡くなったと言う知らせを受けました。
マロンが亡くなる前日の朝、美容室に連れて行ったのも、動物病院の手配をしたのも、治療すると言う決断をしたのも、
亡くなったあと、マロンの亡骸を引き取ったのも、ほぼ私一人でした。
母はたった一日で変わり果てた姿になったマロンと対面することになりました。
母は冷たく、硬くなったマロンに会って、泣き崩れました。
目を開けてよ。マロン!
母の悲痛な叫びが今も耳にこびりついています。
生きているマロンに会わせてあげたかった
最後の時間を一緒に過ごさせてあげたかった
私は選択を誤った。
家族全体が、途方もない絶望と苦しみに包まれていました。
それだけマロンの存在は、私たちにとって大きかったのです。
マロンを失って、数日は、バタバタと過ぎていきました。
お花の手配やお寺の手配もありました。
お世話になった動物病院や犬の美容室にもマロンが亡くなった報告をしに行きました。
でも、マロンが骨になって手元に戻ってきて。
家に犬がいないことが。
私たち家族を和ませ、つなぎとめる、存在がもういないことが。
ひしひしと辛く、切なく苦しくて堪りませんでした。
私も母も食事をほとんど取れなくなり
睡眠もあまり取れなくなり
これはまずいなぁと思っていました。
母の憔悴ぶりが特にひどく、家から笑いが消えました。
私もこのままではまた入院になるかもしれないと思うほど、追い詰められていました。
そんな時に、私はInstagramでフォローしているある保護団体(保護団A)の存在を思い出しました。
その保護団体は、毎日のようにたくさんの保護犬をアップしていて、幼い仔犬から成犬に至るまで様々な子の写真を載せていました
成犬はともかく、ペットショップでまだ売っているようなかわいい仔犬が、なぜ保護犬なのか疑問に思わなくはなかったのですが、譲渡会なども、都内で頻繁に行っていると言う事は、記憶の片隅に残っていました。
マロンがなくなって、まだ一ヵ月も経っていませんでしたが、保護犬譲渡会を近所でやっていると言う知らせがInstagramに出ていました。
私は、母に、見に行くだけ見に行ってみない?
と声をかけました。
母は見に行くだけだよ。
と言いましたが、絶対に貰わないから
とは、言いませんでした。
父は
お前たちに全部任せるから
と言っていました。
もうこの時点で
うっすらと私たちは次の犬を迎えたいと
そういう気持ちを持っていたのだと思います。
本当はもっと保護団体について
保護犬について
知識を深めてから
譲渡会に参加するべきだったのかもしれません。
でも、あの耐えようもない
絶望的な喪失感の中で
一筋の光のような縁にすがってしまいました
譲渡会の知らせは、私にとって、私たち家族にとっては
間違いなく希望の光でした。
そうして、都内某所で行われている譲渡会で
私と母はあの子に出会ったのです。
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