第12話 炭鉱の中に入ってみた!

 「...ッ!?」


 意識が戻ると最初に目にしたのは岩の天井だった。

 なんとなくわかった...私はまた死んでヤシロに救助されたのだと。

 というか私モンスターに殺られたよね?

 辺りを見渡すと巨大な蝙蝠のモンスターがぐったりしているのがわかった。

 よく見るとそのモンスターは全身穴だらけで大量出血していた。


 「え、ヤシロがあいつを倒したの!?」


 ヤシロは自慢気にアサルトライフル見せつけた。


 「なんちゅう物騒な物持ってんだよ! 戦力があるには越したことはないけどさ」


 思ったのだけど今までまともに武装してないの私だけ?


 「ああ言うモンスター他にもいるのかな? ユウキがいれば教えてくれるんだけど」


 ユウキは新しく買った装備を試したくて別のダンジョンに潜っているため聞けない。


 それに関してはヤシロも苦悩の表情をしたが両手でピースして『まぁ何とかなるだろ!』と言わんばかりの表情をした。

 やめようよと言っても無駄なんだとなんとなく思うから私は渋々ヤシロを尊重するためにダンジョンの奥地へ進んだ。

__________________


 ダンジョン内は不思議な所だった。 私達が暮らしている世界とはかけはなれているのもあるが、森林とは違い人の手が加えられているという事だった。

 まず火のついた松明があり周りを明るくしているのと炭鉱が崩れないように木で柱を設置しているのと地面に線路のような物が設置されているのがなによりだ。

 というか炭鉱自体が人の手で作られたようなものだから何を今更と言う話ではあるが。

 何を掘っていたんだろう...やっぱり石炭とか宝石とかだろうか...

 そんな事を考えているとふと前にユウキが炭鉱ダンジョンの事を話していた事を思い出した。


 『炭鉱ダンジョンほどアタリハズレが激しいやつはないな、堀尽くされたやつなんかはいくら探して見つからないし、モンスターにいたっては素材はたいして売れないし、引きの問題だな、うん』


 て、言っていたような...

 まぁダンジョンが出来ただけでも御の字なんだし、そんな都合の良いことあるわけn

 そんな事を考えていると私は何かに躓き『バタンッ』と勢いよくその場で転んだ。


 「いったッ!? もう何よ!」


 派手に転んだ私は顔面を強打して鼻血を出した。

 鼻血を出した私にヤシロはティッシュを渡した。

 私は流れ出た血を拭い鼻にティッシュをつめた。

 というか私は一体何に転んだんだ?


 ヨウコは転んだ原因を確かめるべく足元に目線を向けると『キラッ』と何かが光った。

 よく見るとそれは黄金色に輝く小石だった。


 「き、金だこれぇ!!」


 私がそう叫ぶとヤシロも黄金色の小石に視線向け目を輝かせた。


 「た、炭鉱でこの色は間違いないよね? 絶対金だよね! おいおいおいおい、良いの?こんなにうまくいっちゃて良いわけ!? やっべ!」


 興奮のあまり何を言っているのか自分でもわからないがヤシロはなんとなく理解してくれたの高速で頷いた。


 「た、確か金って重いんだよね? わ、私1度だけでいいから持ってみたかったんだよね」


 私は好奇心で黄金色のそれを持った。


 「お、おお! こ、これがッ...き...ん?」


 な、何だ? なんか変だぞ、この金? なんて言うか...思っていたより重くない...

 ヨウコは眉間にシワをよせ疑いの眼差しで見ていると、ヤシロは不思議そうにした。


 「いや...何て言うか、軽すぎると言うか...これ本当に金? て言うぐらいに」


 するとヤシロも気になって『自分も持ってみたい』とアピールするように両手を広げ、私はその両手に金を置いた。

 最初は期待に満ちた表情をしていたが手に持った瞬間その表情は期待外れでがっかりした表情をしその黄金色の小石を投げた。


 「あ、やっぱり金じゃなかった感じ?」


 そう訪ねるとヤシロは頷きドでかいため息をした。


 「...仕方ないよ、そんなうまくいかないって」


 ヤシロみたいにドでかいため息はつかなかったがめちゃくちゃがっかりはした。


 ヤシロが投げた黄金色の小石は大きく弧を描き『グチャッ』と地面にぶつかる音とは異なる音と「グギャァ!?」と断末魔のような声が聞こえた。

 

 私とヤシロは何処から声がしたのか後ろを振り向くと、少し離れたところに頭が異様に腫れた巨人があぐらをかいていた。

 巨人は棍棒のような物を手に持ちながら立ち上がりこちらを振り向き私達を見るや否や怒の眼差しでこちらを睨んだ。


 「な、なんか私達にたいして怒ってね? あいつ」


 何で怒っているのだろうかと思っていると、その巨人の足元に先ほどヤシロが投げた黄金色の小石が落ちている事に気がついた。


 「も、もしかして...」


 ヤシロの投げた黄金色の小石はおそらくあの巨人に当たり頭が腫れ、そうなった原因である私達に怒ったのだと察した。


 『オマエ ラ ブッコロシテヤル!!』


 巨人は雄叫びをあげて棍棒を振り上げながら『ドス ドス』と音を出しながらこちらに向かってきた。

 私達は全力疾走した。


 「ぎゃあああ!? や、やべよ! めちゃくちゃヤバいよこれ!」


 迫り来る巨人に必死に逃げるが、荷物が多いから走る速度が遅いのと巨人の歩幅が広いもあって、その距離はどんどん縮まっていった。


 「近づいて来てるぅ!? ヤバいよヤシロ! このままじゃ殺られるよ!」


 私がそう言うとヤシロは立ち止まり巨人の方に振り向いた。


 「や、ヤシロ!?」


 ヤシロはアサルトライフルを取り出し巨人の頭に照準を向けた。


 も、もしかして戦うつもり!?


 狙いを定めトリガーを引くと巨人の頭上を撃ち抜き穴だらけにした。


 「す、すげぇ!?」


 撃ち抜かれた巨人は血と肉片をぶちまけ、ガックリと足を崩し『ドスン!』と音を立て倒れた。


 ヤシロは「ふぅ」とため息をつき額に流れた汗を拭った。


 「や、やったか!?」


 私がそう言うとなぜかヤシロは目を見開きながらこちらを振り向いた。

 どことなく怒っている様子だった...私なんか変な事言った?


 と、思った時だった。

 倒したと思った巨人は急に起き上がりうめき声をあげながらヤシロに向けて混紡を振りかざした。


 「ヤシロ!? 後ろッ!!」


 ヤシロは回避するためすぐに後ずさったが遅かったのか肩の所に混紡がかすり、その勢いで壁へと激突した。

 その際、アサルトライフルは『ガヂャン!!』と粉砕した。


 「ッ!?」

 「ヤシロ!!」


 私は直ぐ様ヤシロの側に駆け寄り安否を確認した。

 ヤシロは額と混紡がかすった所から血を流し、壁に激突した衝撃でヤシロは気を失っていた。

 息はしている、だけど出血が激しいから早くポーションを飲ませないとッ!

 私は急いでバッグからポーションを出そうとした。


 『ヨクモ...オレノアタマヲッ』


 その声からすごい殺気を感じた。

 メンバーの中で私だけがモンスターの声が聞こえると言う特別な事に嬉しさと自惚れしていた...

 

 だけど今この特技が嫌悪を感じた。


 何せ人一倍にモンスターの殺気を感じる。怒りと憎しみを知る。恐怖を感じる。


 ______怖い


 私が死ぬからとかじゃない...ヤシロが助からないんじゃないのか...それが怖い。

 ミユと一緒に色々とひどい目にあったが、それでもヤシロは大切な友人の1人だ。


 ヨウコは取り出そうとしていたポーションを出し蓋を開けヤシロに飲ませた。

 ヤシロにポーションを飲ませた直ぐにヨウコは立ち上がりロングソードを手に持ち後ろを振り向いた。

 振り向くとそこには重症をおったからなのか怒りなのかわからないが息を荒くした巨人が立ちふさがっていた。

 おそらく巨人は満身創痍、だけど勝てるかどうかわからない、それでも今はヤシロができる限り助かる可能性が上がるようにしなければならない...力がわいてくる...というかやる気しかわかないッ!


 ...あ、あれ? 今私スッゲェ勇者ぽくね?


 ※ ヨウコは直ぐに調子に乗るタイプです。


 いやぶっちゃけあいつ満身創痍だから勝てるんじゃね? めっちゃ息荒いから動きとか鈍って楽勝じゃね?

 それに私はデビちゃん(デビルベアー)と撮影だけどいくつも手合わせしたんだぜ?(※一方的に殺られてます) こんな奴楽勝だろ!

 ロングソードを持った手に力が入る。

 するとヨウコはロングソードを振り上げ飛びかかった。


 「うおおおおお!! 私に喧嘩を売ったのが運のつきだぜぇ」


 ヨウコはロングソードを降り下げ巨人の頭上『ガギンッ』とヒットさせた。

 勝ったッ!...そう思ったが。

 『バギッ』...ロングソードはへし折れた。


 「折れたァァァァ!?」


 慢心していた表情は一気に焦りと絶望に代わりヨウコは涙目になった。

 そこを追い討ちを、かけるように巨人は混紡を振り上げた。


 「ひ、ひぃぃぃ!?お、お助けおっ!?」


 ヨウコ泣きわめくが巨人はやめる様子はなかった。


 あ...終わった。


 ヨウコはそう思い諦めた瞬間だった。


 『ザシュッ』


 「!?」


 突如、巨人の頭上に斧が突き刺さり頭は真っ二つに割れた。

 巨人は白目を向き倒れ、今度こそ息絶えた。

 私は何がなんだかわからず困惑していると巨人の頭に刺さった斧を引き抜く人影がいた。

 その人影はまるで子供のように背が小さいががたいはよく髭を蓄えた男だった。


 「怪我はないか?」


 その人物はそう訪ね、私は動揺しながらも「あ、ありません」と答えるとせの者は「なら良かった」と微笑んだ。


 「あ、あの...助けていただいてありがとうございます」

 「なにたいしたことはしてないさ」

 「たいしたことなんてそんな、貴方のおかげで、私達は助かりました...あ、自己紹介が遅れました。私ヨウコと言います」

 「儂の名前は『マルク』...ドワーフだ」

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