第3話 ダンジョン探索の下準備!

 ㈲Y5の最初の活動は宣伝とダンジョンの探索を兼ねて動画配信から始める事にした。


 「ダンジョンに潜るのか? なら一旦家に帰って良いか? 装備を整えたい」

 「ぼ、僕も良いかな? ダンジョンは危険がいっぱいって聞いたから、その...武器とか持って行こうかと」


 と、ユウキとユメは自宅に戻った。


 「ねぇねぇ私達も防具とか武器とか揃えた方が良いんじゃない?」


 ゲームとかで見るかっこいい勇者像を思い描き、目を輝かせながらそう言った。


 「え? よっちゃん『冒険者登録』とかしてるの?」


 え? 何、冒険者登録って...


 キョトンとしていると、その様子で察したミユは「あー無理無理」と答えた。


 「防具と武器を買うには冒険者登録しないといけないよ?」

 「じゃ、じゃあ今すぐにでも登録しに行った方が良いんじゃ」

 「申請を出したとしても、登録までに1ヶ月以上掛かるからそんな時間あるわけ無いじゃんw」


 それを聞いて私の中の勇者像が崩れ愕然とした。


 「え!? じゃあどうやって身を守れば良いのよ!」

 「その為にあの2人を呼んだじゃないか」


 ユウキはダンジョンを潜ったりしているからわかるけど...


 「ユメは何で武器とか持ってるの?」

 「確か、前職でダンジョンに行く内容とかあるらしいんだよね、多分それで持ってるんじゃね?」


 もはやら警備の範疇じゃなく無い? どちらかと言うと軍人とかの類いじゃない?

 ユメとユウキがいるから大丈夫とは思うけど、念には念を入れよ、と言う言葉がある。


 「だけど私自身を守れる何かは欲しいよ」


 するとミユは徐にキッチンの方へと向かった。

 しばらくすると戻って来てキッチンにあった包丁を手渡した。

 その包丁は刃渡りが10㎝ 厚さは1㎜ 程の一般的な物であり、ダンジョンに持っていく武器にしてはあまりにも頼り無かった。困惑し思わず二度見した。


 「まぁこれでなんとかなるしょ!」


 ミユは満面な笑みでそう言い、私の頭は真っ白になり頼りない包丁をジーと見つめながら放心した。


 「こんなんで、身を守れとか無理難題過ぎない?」


 私は何かしらの作業をしているヤシロに話を投げ掛けた。

 するとヤシロは腕を組み深々と何かを考え初めた。

 しばらくすると腕組みを止め親指を立てた。まるで『お前なら出来る、頑張れ』と言わないばかりに「ムフー」とドヤ顔をしていた。


 そういや、ヤシロは動画の編集とか経理とかの裏方にまわるからダンジョンには入らないんだった。

 

 うん、ヤシロに聞いた私が馬鹿だった。

 

 というより、あの大量の荷物はそういった機材ばかりで、まるでダンジョン企業をやるのがわかっていたような感じだった。

 ミユがあらかじめ説明していたのだろうか?

 するとヤシロは機材が設置し終えたようで早速パソコンをいじり始めた。

 配信と言えば最近流行りの動画サイトだろうか?

 興味本位で画面を覗くと私達の配信を投稿するであろうサイトが表示されていた。

 チャネル名は会社名で...というかこのサイト見たことも聞いたことも無い...


 「ヤシロ、そのサイt」

 「おーう、戻ったぞ」

 「お、お待たせ~」


 私が訪ねようとしたタイミングでユウキとユメが戻った。

 それと同時にヤシロはパソコンを閉じた。

 何のサイトなのか気になるけど、そんなの後でいいか!

 


 「おー戻っt うおっなんかめちゃくちゃすごいな」


 ユウキとユメの姿を見てミユは驚いた様子に私も気になり見てみた。

 ユウキはパーカーとスカートは変わらないが小指 薬指が露になった黒い手袋に、スカートの下に黒いタイツを履いていた。

 この時点でだいぶ変わっているが特に背中にあった『弓』と『矢の入った筒上の入れ物』がよく目立つ。

 加えて腰周りにはポーチと短剣のような物があった。

 ゲームで見る『弓使い[アーチャー]』の姿に見惚れた。


 「あんまりジロジロ見るなよ、恥ずかしいだろ」


 頬を少しばかり赤らめる姿に思わずキュンときた。


 「というより、私よりこいつの方が見応えあるぞ」


 そう言われユメの方に目線を向けるとワンピースは変わらないが白銀色に輝く鎧が手足に着け、動く度に『ガシャ』と金属がぶつかる音がなる。

 見るからに凄いが、特に背負った『両刃斧』に圧巻した。

 見る限り全長2メートル程ありその1/3を占めているんじゃないかと言うぐらいに刃がある。


 「...確かに凄いよね、その大きな斧」


 巨大な斧に圧巻して、そう言うが何故かユウキは「そこじゃねぇよ」とため息をついた。


 「見た目もだけどこの斧、『アダマンタイト』製だぞ?」


 アダ...マン?...何それ?

 聞いた事の無い単語に私はキョトンとした、しかしミユは「はぁ!? まじで!?」と大声で驚いた。

 よく見るとヤシロも目を見開いて驚いていた。

 ...あ、あれ? 置いてきぼりなの私だけ?

 キョトンとしている私にミユが「よっちゃんマジ!?」と再び驚愕して、私は「ぜ、全然わかんない」と恐る恐る口にした。

 するとユウキとミユに詰められ圧迫された。


 「『固い!』『強い!』この言葉はもはやアダマンタイトの為にあるようなってレベルでめちゃくちゃ凄い金属なんだよ!」

 「希少が高くて高い...別荘が買えるんじゃないかって言われるぐらいだからな」

 それを聞いて思わず「えぇ!?」と驚愕した。

 めちゃくちゃ凄い金属ってのはわかったのはわかったのはもちろんだけど...な、なんで、そんなスッゴい物をミユが持ってるの? 警備の仕事ってそんなに儲かるの?

 そんな事を思っていると、ユメは何故か気分が落ちていた。


 「せ...先輩に『今後必要だから買っとけ』て無理やり買わされて...でも結局使う事がなかったから後悔で死にたかったな~...買った時1年半ぐらいモヤシ生活だったから」


 ユメは涙目を浮かべながら絶望のオーラがにじみ出ていて私達は息苦しくて何も言えず仕舞いだった。


 「で、でも、今回のでみんなの役に立てられるんだと思ったら買って良かったよね!」


 ニコッと微笑むユメを見て私達はなんとも言えない気分になり思わず私はユメを抱きしめてしまった。


 「...まぁアダマンタイトの武器持ちがいるってだけで心強いとして、お前ら2人、準備とかしてなさそうに見えるが大丈夫なのか?」

 「準備したかったけど、冒険者登録してなかったから、これしか準備出来なくて」


 頼りない包丁を見せるとユウキは呆れた表情でため息をついた。

 ぶっちゃけ私も同じ気持ちである。


 「まぁ何とかなる なるって!」


 そう言いながらミユが取り出したのは『ハンドガン』だった。


 「はぁ!? ズルッ! 何でそんな物持ってるのよ!」

 「護身用だよ、と言っても私は撮影しないといけないから戦闘とかには参加するつもりは無いけど」


 ミユはカメラマンと経営方針を決める指導者、言わばリーダーとしての役割である。

 探索係のユウキとユメ 裏方のヤシロ リーダーのミユ 頼りになる仲間達ではあるが、ある疑問が頭に過った。


 「私いる?」


 ぶっちゃけこんなにも役者が揃ってる時点で私の存在意義が無いように感じた。


 「何言ってるんだよ よっちゃん! よっちゃんは㈲Y5の『顔』なんだから」

 「顔...え、ちょっと待って私が代表なの!?」

 「そりゃそうじゃん、そもそもこのダンジョンの地主はよっちゃんなんだし、動画のメインはよっちゃんなんだから」


 ミユになだめられたヨウコは「え?そうなのw」とまんざらでも無い表情をし気にする事を止めた。


 「さぁ気を取り直して早速ダンジョン探索に行こうじゃないか、よっちゃん!」


 そう言いながらミユはカメラをとりだし撮影を始めようとした。


 機嫌が良くなった私は「まっかせなさーい!」と胸に手をポンッと叩いた。


 (調子良いなこいつ)

 (ヨウコちゃん、良いようにされてない?)


 ヨウコは意気揚々と扉を開けてダンジョンへ潜ろうと踏み出した。


 私達のダンジョン企業への第一歩が今始まる。

 その瞬間、頭に強い衝撃と激痛が走り私はその場に倒れこんだ。


 意識が朦朧とする。


 ...私は多分_____死んだ。


 【ダンジョン 森林編】

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