第2話 ダンジョン企業開始!
「一儲けしようぜ! お前ん家のダンジョンで!」
ミユのその言葉を聞いて思わず口角が上がった。
「な、なにをしたら良い?」
そう聞くとミユは「そうだね~」と腕を組み考え始めた。
するとおもむろに携帯を取り出しいじり始め、私は何が何だかわからず置いてけぼりできょとんとした。
「まずは人手が欲しい! 手始めにみんなを呼ぶ」
なるほど...私達2人では人手不足って事ね...ん?というより今、仕事中なんじゃ?
「あ、もっし~? 今よっちゃんの家に直ぐ来てくれない?....え? 仕事中だから無理?」
そりゃあそうでしょ...
するとミユは不適な笑みを浮かべた。あ、あれは悪巧みをしている顔だ...な、なんて悪そうな...
「確か...仕事内容にたいして給料が低いから辞めたいって言ってたよね?...めちゃくちゃ良い物件があるんだけど?」
誘い方が悪徳商法の手口にしか見えない。
「...え? 内容? そりゃあ来てくれたら教えるよw まず辞表を出してもろてw ...え?行かない? それは残念だな~ 今の給料の2...いや、3倍ぐらい稼げるのに~ しかもアットホームでみんなと仲良くワイワイと出来るのに~」
そんな感じでミユは次々に電話をかけていった。
正直、こんな話し誰が食い付くんだよっていうぐらい怪しさ全開だ。
ああ...大変かも知れないけどミユと2人で頑張るしかないようだ。
__________________
しばらくして...
「で、何をするだ?」←金で釣られた奴
この銀髪のショートヘアーに黒のカチューシャ。黒のパーカーに赤のチェック柄のスカートを履いている子は『ユウキ』
「ほ、本当にみんなと楽しくできる仕事なの?」←アットホームで釣られた奴
この紺色の髪に水色の主体に白の水玉模様のリボンで髪をまとめサイドポニーテールにし、白のワンピースを着ている子は『ユメ』
「...」←呼ばれたから来た奴
そして最後にうす緑のショートヘアーに眼鏡をかけ、白いカッターシャツに白衣を羽織りジーパンを履いている彼女は『ヤシロ』
...何故か大量の荷物を背負っているが。
全員ミユ同様に中学からの付き合いの友人達である。
来たよ、来ちゃったよこいつら...人の事言えないけど、どんだけ今の仕事に不満があるのよ...
「信じていたよみんな...私達のもとへ来てくれるって」
ミユはホロリと涙を溢した。
「嘘臭い演技はやめて本題に移れよ」
ユウキがそう言うとミユは「おっと、そうだった そうだった」とケロッとした。
「まぁ説明する前に見えてくれた方が早いかな~」
ミユはヨウコの方に目線をむけた。確かに見せた後に説明した方が早いわね。
察したヨウコはダンジョンが繋がる押入と向かいみんなはついていった。
押入の前に着き、ヨウコはその扉を開けた。
本来、押入にはあるはずの無い森の風景に、ヨウコとミユ意外の全員は驚愕した。
ユメは「え...何これ?」とあからさまに混乱してるのがわかり、ヤシロは「おー」と興味津々に眺めた。
「これダンジョンじゃねーか!」
そんな中、ユウキだけはこれがダンジョンだとわかりそう叫び、目を輝かせた。
ユウキは趣味でダンジョンに潜ったりしている。言わばダンジョンオタクなのだ。
「何でダンジョンがあった事今まで隠してたんだよ」
何故か邪険で見るユウキに「ヒエッ」と血の気が引いた。
よくわからないけど機嫌を良くしないと!
「隠してないよ! 気づいたらこんな事になって」
「何で私のところじゃなくて、お前の所に現れるんだよ!」
な、何で更に機嫌が悪くなってるのよ!
ユウキは恨めしそうにヨウコを睨んだ。
「というか、職って言うのは『ダンジョン企業』の事か?」
「よくわかってるじゃ~ん☆」
それを聞いてユメは「それってアットホームなの?」と恐る恐る訪ねた。
その表情は不安が見え、加えてプルプルと震えていた。
前の職場で『そういったトラブル』があったのだろう...あまり首を突っ込まない方が良い気がする。
「人それぞれだろうけど、ミユの話しからして私らでやるだろうから...お前が働いてた警備よりマシじゃね?」
それを聞いてユメは『にへら』と笑い安心した様子だった。
...優しくしよう、うん。
「今さらなんだけどダンジョン企業って具体的に何をするの?」
「何のダンジョンによって色々と違うが『草原』なら牧場とかそこでしか採れない作物を育てるとか『炭鉱』なら言うまでもなく採掘『海』なら海産物を採ったり、ビーチを開設する場合もあるな、他には___」
ユウキは生き生きと語り始めた。
流石はユウキと讃える程に詳しく説明し、私とユメは「「なるほど~」」と頷いた。
「__で、これは『森林』だな、草原同様にそこでしか採れない作物もだが、一番の利点としては『薬草』とかが取れるだな」
怪我や病気等をした場合は普通は薬を使用されるが副作用や効果が遅い等ある。
一方、薬草を材料とした『ポーション』は調合次第では傷を癒す物、病気や毒等を打ち消す物、逆に殺傷力のある猛毒もあり、その効果をピンポイントの生物に作用させる事で細菌等で引き起こす病気を治したりする。
即効性と副作用が無いため薬の中で重宝されている。
しかも『とある薬草』を使用した『蘇生薬』と呼ばれる死んだ者を蘇らせる事ができる代物もあるらしい。
「物によるけど薬草は高値で取り引きされる...それだけでも、あの安月給[規制済み]より収入は期待できる」
眉間にシワを寄せクソデカため息を吐くユウキの顔は怒りと憎しみが入り交じっていた。
暴言ヤバッ!? なんかピー音で伏せられたけど!? めちゃくちゃ怖いよ!
「流石はゆうちゃん♪ ダンジョンに詳しい人が欲しかったから、来てくれて安心だぜ」
「まぁでも、薬草が絶対に採れるわけでは無いからあまり期待するなよ、それだけ価値があるんだから」
「え!? じゃあ薬草がなかったら収入とか無いんじゃないの?」
私はそう聞くとユウキとミユは呆れた表情で「フッ」と鼻で笑われた。
なんかムカつく。
「お前は何も知らないんだな...いいか? 薬草とか無くてもダンジョンには必ずモンスターてのが存在して、その中に『ダンジョンボス』て言う強いモンスターがいる。冒険目的の『冒険者』はそのダンジョンボスを討伐したい が大半だから、そいつらに提供して収入を得る。ダンジョン企業をやってる奴の収入源はだいたいこれだな」
「上手い人だったら提供に加えて指定のモンスターを討伐してもらってそのモンスターを回収。そのモンスターから取れる素材を売る事で更に収入を得る人がいるぐらいだから、討伐してもらった人にはサービスなんかして互いにWin-Winて言うやり方も良いね!」
「配信するのも良いぞ、広告とかで収益を得る事もできるし宣伝にもなるからな」
それを聞いてダンジョン企業について改めて感心した。
やり方はいくらでもあり昨日話していたとおりの、夢のある仕事に期待と喜びが膨らむ。
「なんだかワクワクするね♪」
ユメは『ふふっ』と笑みを浮かべ、ヤシロも口角が上がり頷いた。
同じ事を考えているであろう2人に私は思わず笑い「そうだね」と答えた。
そんな3人を見てミユとユウキも同様に笑った。
(ゆめっぴとやっさんはやるとして、後は...)
「ゆうちゃんはどうする?」
ミユがそう聞くとユウキはため息をつき「それわざわざ聞くか?」と呆れた表情をした。
「私らを呼んだのは必要だからだろうに...というか辞表を出してここに来た時点でお前の話しに乗るつもりだったし、転職を視野に入れてたから丁度良かったし」
それを聞いてミユは『ふふん、まぁね♪』と笑った。
「よ~し! 善は急げと言うから早速始めちゃおうかダンジョン企業を!『㈲Y5[ワイファイブ]』の設立だ!」
ミユは右腕を掲げそう叫んだ。
ユメ ユウキ ヤシロ 私はそれを見て同様に右手を掲げて「「「「おー」」」」と掛け声を出した。
私達の会社が設立し、ダンジョン企業活動の始動である。
「というより『㈲Y5』て何? 何でそんな名前なの?」
「ほら、私らの名前に『や行』が入ってるじゃん? や行が5人で ㈲Y5 てわけ」
「へー」
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