Memory.7「開花」

 唯と咲を守るためユニフィアに立ち向かうも、圧倒的なユニフィアの力に倒れた真人。

 真人が殺されそうになった時、立ち上がったのは唯の別人格・シグだった。

 シグは唯と魂の置換を行うことで唯の身体を借り、真人を助けた。

 その後、ユニフィアの真意を探るも矛盾した回答が返ってきたため、ユニフィアを殺そうとする。

 しかし、唯の意識に阻まれ自分が信じる唯の判断を信じ、シグはすべてを託すことにした。

 その直後、ユニフィアの身体は炎に包まれた。


 -相模原市 とある住宅街-

「熱っ...!」

 ユニフィアは突然浴びせられた炎から逃れるため、空へと飛び上がった。

「まさか...」

 顔を上げてユニフィアを睨む真人の腕は金色に光り、目は赤く染まっていた。

「ユニフィア!」

 砂利が転がるほどの勢いで飛び上がり、ユニフィアに向かっていく真人。

「よくも唯を!!」

 上昇していく真人は手に炎を宿した拳で、ユニフィアに殴りかかった。

「まて!誤解だ!」

 殴りかかる真人を躱しながら、必死に訴えかけるユニフィア。

「何が誤解だ!」

「唯は生きてる!」

「嘘をつくな!!」

 周囲に竜巻を発生させ、巻き上げた瓦礫を乱雑にユニフィアへ吹き飛ばした。

『避けられない...!』

 ユニフィアの身体の二回りほど大きい瓦礫を見て、ユニフィアは避けられないことを悟った。

「っ...え?」

 無意識に目を瞑るも瓦礫はユニフィアの後ろへ飛んでいき、地面落ちて砕けた。

「まさか...」

 ふと考え付いたことを実践した。

 するとユニフィアの腕は金色の粒子へと変化した。

「これが裕香さんが芽吹かせた力か...」

 腕を戻して再び真人と相対するユニフィア。

「これならどうだ...!」

 つららを生やした巨大な瓦礫に、生成した鎖を巻き付けた即席のモーニングスターを手にする真人。

「...真人、いくらスポーツが出来るからって、それは無理があるんじゃないか?」

 思わず苦笑いするユニフィア。

「今までの俺だったら無理だろうな。」

「でも今はアークの力がある。だから」

 真人は思い切り力を入れ、巨大なモーニングスターを振り回し始めた。

「おいおい...まじかよ...」

「いくぞユニフィア!」

「ちょっと待て!」

 ユニフィアに突撃する真人、その勢いに後ろへ下がるユニフィア。

 逃げるユニフィアを追いかけながら、真人はモーニングスターを何度もユニフィアへ向けて振った。

 モーニングスターが振り下ろされると、ブォンという風切り音と共に地面に転がった小石が動いた。

『一か八か...出来るかどうかわからないが、試すしかないか。』

自分へ振り下ろされる瞬間、ユニフィアは身体全体を粒子化し真人の前から姿を消した。

「っ!?どこに行った!!」

「ここだよ。」

 真人のすぐ後ろから発せられる声。

 すぐさま真人は後ろを向くもそこには何もなかった。

「出てこい!正々堂々戦え!」

 ユニフィアに向けて訴える真人。

 そこにあらゆる方向からユニフィアの声が響いた。

「正々堂々?」

「武器を持たない俺に、武器を振るい続けるお前がそれを言うのか?」

「お前が言ってるのは「正々堂々戦え」じゃない。」

「怒りや憎しみに支配され、俺を殺したいから出てこい。」

「そう言ってるんだよ。」

 次の瞬間、ユニフィアは真人の頭上に現れ、真人を踏みつけながら地面へ急降下した。

 真人が地面に叩きつけられた衝撃音と共に、あたりには土煙が舞った。

「何度も言うが、お前は勘違いしている。」

「唯は生きてる。」

「...誰がお前の言葉なんか信じるか。」

「別に信じなくていい。」

「お前はこれで戦えなくなる。」

 より強く真人を踏みつけ、裕香の時と同じように心の扉を開いた。

「これは...俺の力だ!」

 力を奪おうとするユニフィアの腕を掴んで抵抗する真人。

 しかしユニフィアはそのまま強引に手を伸ばした。

「俺の力だって...言ってんだろうが!!!」

 その瞬間、真人の目は赤く、腕が金色に輝き始めた。

「何だ!?」

 身の危険を感じ直感で真人から離れるユニフィア。

その直後「ウオオォォォ!」という叫び声が聞こえた。

「こんなことも出来るのか...」

 ユニフィアと私の目に映ったのは全長十メートルほどの大きさの三頭狼

《ケルベロス》だった。


Next memory「敗北と安堵」

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人間と人格(ニンゲン) 赤松 ゼロ @Akamatsu0

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