Memory.6「愛と恨みと憎しみと」

 自分の弱さに涙する裕香。

 何故か過去の記憶を思い出し、力を芽吹かせた裕香は3人を守るため、再びユニフィアに立ちはだかった。

 芽吹かせた力で優位を取るも、三人を攻撃しようとするユニフィアに騙し討ちを受け、致命傷を負って気を失った。

 ユニフィアが救おうとしている"みんな"とは...


 -相模原市 とある住宅街-

「二人とも下がってろ。」

 ユニフィアの前に立ちはだかる真人。

「おいおい、力の使い方を理解してないお前が俺に敵うと思うのか?」

「やって見なきゃ分からねぇだろ。」

「よせ。無駄に傷つけたくない。」

「こんなことしといてよく言えるな。」

 黒く染った自分の腕を見ながら、ユニフィアに怒りをぶつける真人。

「お前ができるとすれば、二人が逃げるまでの時間稼ぎだけ。」

「まぁ、逃げてもそこら中に俺の仲間が居るから意味無いがな。」

「仮にそうでも俺が守る!」

 そう言って勢いよくユニフィアの方へ走り出した。

「真人!」

 真人は手当たり次第に火の付いた拳をユニフィアに振り続けた。

 ユニフィアは真人の行動の全てを見切っていて、振られた拳は当たるどころか、かすりもしなかった。

 ユニフィアは振られた腕を掴んで、真人を自分の後ろへ投げて見せた。

「ぐっ...」

「これでわかっただろ。」

「お前は俺に勝てないし、唯と咲を守ることはできない。」

 ユニフィアはゆっくりと真人の方を向き、実力と共に正論を叩きつけた。

「うるせぇ...」

「時間稼ぎでも何でも、やるしかねぇんだよ!」

 真人はユニフィアの言葉を無視して立ち上がり、再びユニフィアにぶつかった。

「前はある程度、俺の話を聞いたのにな。」

 ユニフィアは真人と同じように掌から炎を出し、真人を燃やした。

顔や衣服は黒く焦げ、真人はその場に倒れた。

「せっかく力が手に入ると思ったのに、残念だ。」

 ユニフィアは剣を生成し、真人に刺そうとした。

 その時、私の中に声が響いた。声の主は私の中にいる別人格・シグだった。

『唯、あのままだとあいつは...』

『わかってる!でも...』

『俺に身体を貸せ。』

『え?』

『ユニフィアには個人的に恨みがある。』

『なによりアークは...俺の恋人だ。』

『恋人に親友を殺させるような真似はさせたくない。』

『...わかった。』

『真人を助けて。シグ。』

『あいよ。』

 そして私は目を閉じて、身体をシグに預けた。


「唯!?」

 突然倒れた唯の身体を介抱する咲。

 俺はゆっくりと目を開けた。

「よかっ...ちょっと唯!?」

「俺は唯じゃない。」

 そう言って俺はすぐさま立ち上がり、真人の方へ走った。

「え...俺?」

 咲の困惑したような声が聞こえた気がした。


「ユニフィア!」

 ユニフィアの激しい攻撃に倒れた真人を気にしつつ、ユニフィアの名前を叫んだ。

 そして植え付けられたアークの力を利用して木刀を生成し、勢いよくユニフィアに振り下ろした。

「青い目...シグか!?」

「そうだよ!」

 ユニフィアの質問に答えつつ、俺は咲に倒れている真人と裕香を離れさせるように視線を送った。

「また勝手に身体を使っているのか?」

「その後唯がどうなるか分かってるくせに!」

「黙れ。今回のは同意の上だ。」

「そんなことより...」

俺はユニフィアに視線を戻し、鋭く睨んだ。

人格ジンカクが持つ力は、暴力や支配するために使ってはいけない。』

「そう言ってたお前が、なんでこんなことをしてる?」

 俺の質問に、ユニフィアはすぐに答えた。

「何度も言わせるな。」

「俺はお前達を...」

「ふざけんな!」

「何が『唯達を救う』だ!」

「唯や真人、咲...多くの人をこんな姿にして、唯の姉を痛めつけて!」

目に涙を浮かべながら木刀を持つ黒い腕を見て訴えて。

「俺達を、日本を、世界を巻き込んでまで、お前は何がしたい?」

「...まだ、話せない。」

シグの心の叫びに、ユニフィアは短く答えた。

「...そうか。」

「じゃあ、死ね。」

曖昧な答えに呆れた俺は無意識にユニフィアとの距離を詰め、彼の腹部に木刀を刺そうとした。が

「っ...!?」

『どれだけ許されないことをしていても、ユニフィアは殺させない。』

唯の意識がそれを阻んだ。

『唯...!』

『こいつは多くのものを奪った。』

『もしここで俺達が止めなければ、誰が止めれる?』

『ユニフィアの、アークの力の全容を把握してるのは俺達だけなんだぞ?』

『俺が見る限り、アークの力は人間に宿ったことで変化してる。』

『このままじゃ誰も止めれなくなる!』

危機感に駆られながら必死に唯に訴えた。

『でもユニフィアは何度目的を聞かれても、その答えが変わることはなかった。』

『それだけで信じるって言うの...?』

『うん。大事な友達...だから。』

『...わかった。』

俺はユニフィアの事を信じる唯の判断を渋々信じた。

というか、もし俺が唯の事を信じなくても、唯は"あの力"を使って俺を阻んだと思う。

「ありがとな。唯。」

寸前の所で止まった木刀と、元に戻った唯の目を見て、ユニフィアは唯が俺を止めたことを察した。

そしてその事に感謝をしつつ、謎の施設・ノアに運ぶ為、唯を気絶させた。


「ん?」

 気絶させた唯をその場にゆっくりと寝かせ、顔を上げた俺は目線の先が金色に光るのを見た。

 その瞬間、身を一瞬で焦がすほどの強い炎に包まれた。


Next memory「開花」

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