Memory.5「求める種」
目を覚まし、隣の部屋にいたフードの人物お礼をしつつ話をした唯。
紙に書かれた字でフードの人物が自身の姉・
戦えない三人を守りつつ、ユニフィアとその仲間達を相手にする裕香だったが、予想外の攻撃に敗北した。
-相模原市 とある住宅街-
私を自分の後方へ投げ飛ばし、唯達三人の方へ近付いていくユニフィア。
ユニフィアから受けた攻撃の影響で、私はそれをただ地に這いつくばって眺める事しか出来ない。
大事な妹も、その友達も誰一人守れない自分の弱さに、悔しさに、涙を流した。
旧友のユニフィアが信頼できないわけではない。恐らく彼の言う『救う為に来た。』という言葉に嘘はない。そう信じたい。
でももし、私が見た"彼ら"のようにユニフィアが行う危険な行為に身を投じることになったら?
彼の話を聞いてからそればかりが頭を巡る。
どちらにせよ、私達の日常を壊したユニフィアを放っておくわけにはいかない。
そう強く思った時、私の頭にある記憶が流れ込んできた。
それはまだ唯と咲が仲が良かった頃、『ユニフィアと真人がPLAYERSの運営方針で揉めている』と咲から連絡を受け、その仲裁をした際の記憶だった。
いつもは唯か咲が口を挟めば、ある程度落ち着く二人がどちらの話も聞かなかったことで、同じく副主だった私に助けを求めてきた。
結局、私が
なぜこんな時にそんな記憶を思い出したのかは分からなかったけれど、そのおかげか私は力が沸いてきた。
『これならユニフィアと戦える、勝てる。』
そう確信できるくらいに。
ゆっくりと近づいてくるユニフィアに私達が怯えていると、ユニフィアの背後、丁度お姉ちゃんがいた位置が金色に光り出した。
「っ!?」
背後からの突然の光に、後ろを向き狼狽えるユニフィア。
ゆっくりと立ち上がったお姉ちゃんはじっとユニフィアの睨んだ後、私達の方を向いた。
「今助けるから。」
そう呟いたお姉ちゃんはユニフィアの比じゃない瞬発力で、ユニフィアのすぐ横を通り私達の元まで来た。
「赤く輝く瞳、金色に光る腕...種が芽吹いたか!」
嬉々としながら腕に黒いオーラを纏わせ向かってくるユニフィア。
「私の後ろに!」
お姉ちゃんは自分の後ろに隠れるよう私達に指示を出し、自分と私達の間にバリアを生成した。
「ヒーロー気取りか!?」
ユニフィアはオーラを纏った腕を全力で振り、お姉ちゃんはそれを片手で受け止めた。
岩を砕くような衝撃音と瓦礫を吹き飛ばすほどの風が吹き荒れた。
「そんなつもり...ない!」
「っ!?」
お姉ちゃんはユニフィアの拳を強く握り、離れられないようにしつつユニフィアの腹に蹴りを入れた。
「あれくらって無傷かよ...」
蹴られた腹を抑えつつ距離を取るユニフィア。
『でもこれなら...!』
再び向かってくるユニフィア。
それに合わせて両腕に金色のオーラを纏わせるお姉ちゃん。
宙に浮き、お姉ちゃんの頭をめがけて右足で蹴りを入れようとするユニフィア。
「だから...効かないって!」
左腕で蹴りを止めようと頭の隣で腕を構えるお姉ちゃん。
「やっぱそうするよなぁ...?」
不敵な笑みを浮かべるユニフィア。
その瞬間、ユニフィアの足につららのような氷の塊が生えてきた。
その塊は無数の棘となり、お姉ちゃんの腕を突き抜けた。
「うわぁ...っ!?」
ユニフィアはそのままお姉ちゃんに蹴りを入れ、身体を回して左足でお姉ちゃんの顔を踏みつけるように蹴った。
「お姉ちゃん大丈夫!?」
「心配しないで...これくらい...」
「腕に穴が空いてんだぞ?」
「並の人間がその痛みを我慢できるわけないだろ。」
痛みに震える腕を必死に抑えてユニフィアと対峙するお姉ちゃん。
「そう言うあなたも、足が壊死しても知らないよ。」
お姉ちゃんのその言葉を聞き、ユニフィアの足に目をやると、つららが生えていた箇所が黒くなっていた。
「そんなこと、どうでもいい。」
冷たい声でそう発するとユニフィアはオーラを纏わせ始めた。
「歩けなくなってもいい、ってことね。」
「そういうことじゃねぇよ。」
さっきより濃いオーラを両腕に纏わせたユニフィア。
「長引くと面倒だ。終わらせよう、裕香さん。」
右手で拳を作って左手でそれを包むと、ユニフィアは思い切り振り上げ地面にそれを叩きつけた。
再び発生した衝撃音と風で舞ったがれきで、見えも聞こえもしなくなった。
「せっかくまた仲良くできると思ったのに、残念だよ。」
気が付くとユニフィアは私達の真上にいた。その手に赤い炎を纏わせて。
「みんな!」
お姉ちゃんは私達を守ろうと、私達とユニフィアの間に入った。
「やっぱりあなたは優しいね。」
そう言うと炎を消し、お姉ちゃんの胸ぐらを掴んで地面に叩きつけた。
「った...!?」
あまりの痛みに声を漏らすお姉ちゃん。
ユニフィアはそのままお姉ちゃんを地面に押し付けながら、さっきお姉ちゃんが倒れていた位置まで引き摺った。
「ユニフィア...何のために...こんな...」
意識朦朧の中、私を見下ろすユニフィアに私はそう聞いた。
「あなたを含める"みんな"を救う為です。」
私にはその言葉の意味が分からなかったけれど、なぜか冷たい表情の奥に昔と変わらない彼の本質が見えた気がした。
それと同時に私の中にあった不安は無くなった。
私達の元から少し先まで一直線に延びた血の先で、お姉ちゃんは気を失った。
ユニフィアは気を失ったお姉ちゃんの胸元に手をかざした。
「なにしてるの!?」
咄嗟に私がそう言うと
「心の扉を開き、中にある芽吹いた力を奪うだけだ。」
やがてお姉ちゃんの胸元にゲートのようなものが開き、ユニフィアはその中へ手を入れた。
少ししてユニフィアが手を引き抜くと、手には金色に光る炎が乗っていた。
そしてユニフィアがその炎を握ると、ユニフィアの左目が赤く光り、両腕がゆっくりと金色に染まっていった。
「さて、次はお前達だ。」
ユニフィアは振り返り、私達にそう言った。
Next memory「愛と恨みと憎しみと」
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