Memory.4「救う手と守る手」
最悪の再会を果たした唯、真人、咲、ユニフィアの四人。
ユニフィアは世界を統一する理由として『三人を助けるため』と答えるも、『三人が抱える闇や希死念慮を利用して、アークを進化させる』という凶悪な真意に明らかにし、真人、次に唯と咲という順番で意思無きアークの種を植え付けた。
気絶した三人を謎の施設・ノアに運ぶ為、仲間に連絡したユニフィアだったが、何者かに三人を奪われて...
-相模原市 どこかの民家-
目を覚ますと、知らない家の天井で、隣にはブランケットを掛けられた真人と咲が寝ていた。
-どこかの民家 一階 ダイニング-
起き上がり、部屋を出るとダイニングと思われる部屋に出た。
この家で何があったのかは分からないけど、天井には穴が開いていて、穴は屋根まで突き抜け、そこから赤い月明かりが差していた。
部屋に置かれた大きなテーブルと、それを囲むように置かれた五つの椅子の一つに、フードを被った人物が座っていて、その人の前に一つ、少し離れたところに三つの麦茶が注がれたコップが置かれていた。
「助けてくれたんだよね?ありがとう。」
私はフードの人物の近くに行き、お礼を言った。
「えっと、よかったら顔を見せてほしんだけど...」
フードの人物はその場で首を横に振った。
「うーん...名前は?」
私がそう言うと、フードの人物は何かを書いて、私の前に突き出してきた。
その紙には『何も話せることない。』と書いてあった。
「『何も話せることはない。』って...」
私が困惑しながら読み上げると、フードの人物は『よく見ろ。』と言わんばかりに、書いた文章の下の指でなぞった。
そのジェスチャーに従って、もう一度読んだ私は、その意味をようやく理解した。
「そういうことね。」と言うと、フードの人物は慣れた様子で『ありがとう。』と手話で伝えてきた。
その後、二人を起こすように言われ、真人と咲を部屋に連れてきた。
私は今の状況と、フードの人物について二人に話した。
真人は戸惑いながらも、すぐに私の判断に頷いてくれたけど
「『見た目は怪しいけど、この人は敵じゃないから安心して。』って。」
「唯、本気で言ってるの?」
咲は前の一件もあって、私を信用できない様子だった。
「咲。あの時の俺達はこの人がいなかったらどうなってたかわからない。」
必死に説得する真人を見て、フードの人物は宙に浮いた紫色のディスプレイを出現させ、そこに自分の言葉を載せた。
『真人君の言う通りだよ。』
『今神奈川...いや、日本はユニフィアによって支配されつつある。』
『恐らく彼は君達を捕らえるまで、探し続ける。』
『かといって、このままずっと逃げ隠れることも出来ない。』
『私は岐阜に親友を残して来ている。』
『だから早く選んで。ユニフィアに大人しく捕まるか、ユニフィアと戦うか。』
数秒の沈黙の後、咲が口を開いた。
「待って。いくら大勢の人を巻き込んでるとは言え、ユニフィアは私達を助けに来たんでしょ?」
「なら、逃げる必要も戦う必要もないと思うんだけど...」
「その通りだよ。咲。」
その時、空からユニフィアの声が響いた。
「逃げる必要はない。せっかく再会したんだ。色々話そうじゃないか。」
ユニフィアの声が響く中、フードの人物が強く床を蹴ったのを合図に、私と真人は飛び上がり、フードの人物は咲を脇に抱えながら飛び上がった。
「もう飛べるようになったか...やはり素質があるな。」
その様子を見て期待の眼差しを向けるユニフィア。すると
「離して!私は逃げる気ないから!!」
フードの人物の腕の中で、そう叫びながら暴れる咲。
「2人は俺が捕まえる。他はフードのやつを撃ち落せ!」
そう言ってフードの人物を追い抜き、唯と真人に近づくユニフィア。
そして指示を受けてアサルトライフルを生成した仲間達は、フードの人物へ銃口を向けた。
フードの人物は咲だけでも守ろうと、自分を囲むように球体状のバリアを生成した。
「来るな!!」
近づいてくるユニフィアを見て、真人は唯の後ろにつき咄嗟に右の掌をユニフィアへ向けた。
するとチリチリと音がし始め、その直後ユニフィアの身体は炎に包まれた。
「マスター!」
その光景を見たユニフィアの仲間達は動揺し、撃つ手を止めた。
「っ...!」
フードの人物はその隙をつき、忍ばせていたナイフを投げてユニフィアが連れてきていた仲間のほぼ全員を負傷させた。
「お前達は下がれ!」
真人が出す炎を払い仲間に叫ぶユニフィア。それと同時に身体から黒く鋭い突起物を生やして、それを三人の足に突き刺した。
「ぐっ..!?」
「うわあぁぁぁ!?」
私と真人は突然の痛みに叫んで、民家から少し離れたところでゆっくりと降下した。
それに合わせてフードの人物も地上に降りた。
-相模原市 とある住宅街-
ゆっくりと地上に降りたユニフィアは、周りに仲間がいないことを確認して仮面を外した。
「っ...!」
『近づくな』と言わんばかりに三人へ近寄ろうとするユニフィアに立ち塞がるフードの人物。
「その足じゃ守ることはおろか、逃げる事すら難しいだろうに。」
そう言葉を発しながらフードの人物に近づいたユニフィアは、フードの人物に躊躇なく蹴りを入れた。
その衝撃のあまり私と真人の近くまで吹っ飛び、フードが外れた。
「お姉ちゃん!」
痛む足を必死に動かし起き上がった私は、フードの人物もとい姉・裕香のもとへ駆け寄った。
「てっきりあれから逃げたものだと思ったら、こっちに来ていたのか。」
そう言いながらユニフィアはゆっくりとお姉ちゃんに近づいた。
するとお姉ちゃんは起き上がり、私を後ろに下げて守ろうとした。
「旧友と再会できたことは喜ばしいですが...」
「今は退いてくれませんか?裕香さん。」
その様子を見たユニフィアは苛立ちを見せつつも、優しく語り掛けるようにそう言った。
「退かない。」
裕香の短い言葉に強く固い意志を感じたユニフィアは、立ち塞がるお姉ちゃんに膝蹴りを入れてフードを掴んで後方へ投げやった。
少し様子を伺い、お姉ちゃんが動けないのを確認したユニフィアは
「これで邪魔者はいなくなった。」
言葉と共に私達に視線を向けた。
その瞬間、ユニフィアの背後が金色に光り出した。
Next memory「求める種」
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