第30話 協会の財政事情

 協会の運営は順調だった。問題もなく、良い感じである。市民からの信頼も厚く、依頼も順調にこなせている。


 そんな中で一つ、気がかりなことがあった。


 協会の資金について。管理はジャメルに任せている。なので、今現在どうなっているのか私は把握しきれていない。


 火災の復興支援に多額の資金を投入したし、増え続ける依頼に人員と物資を割いている。経費がかさんでいるはず。ちゃんと回っているのかしら。


 心配になった私は、ジャメルを呼び出して話し合いの場を設けることにした。


「ジャメル、いま大丈夫? ちょっと確認しておきたいことがあるんだけど」

「ああ、ノエラか。どうした?」


 応接室で、私とジャメルは向かい合って座る。お茶を淹れながら、切り出した。


「実はね、協会の資金について気になっていて」

「資金? うん、それなら心配ないぞ」


 ジャメルはニコリと笑って言葉を継いだ。


「確かに火災の復興支援には多額の資金を使い、依頼も増えて経費はかかっている。だが、小さな依頼を数多くこなすことで充分回収できているんだ」

「え? でも、小さな依頼だと報酬も少ないんじゃない?」

「確かにそうだが、その分依頼の数が桁違いに多いんだ。おまけに我々は教会の連中と違って、無駄に豪華な施設を建てて権威を示したり、贅沢をして資金を浪費したりしない。それだけで自然と貯蓄は増えていくんだ」

「そうなの?」


 実は、この問題について悩む必要はなかったらしい。私の心配は杞憂だったみたいね。


「それだけじゃない。アンクティワンが商人との交渉を担当してくれていてな。彼はやり手だから、おかげで取引はすこぶる順調なんだよ」

「さすがアンクティワンね。感謝しないと」

「それから、一部の貴族からも支援を受けている。王族や教会派の貴族じゃないか、背後関係もチェックしている。私たちの活動に共感してくれているんだ」


 ジャメルの言葉を聞いて、私は安心した。


「説明ありがとう。状況は理解した。おかげで、ずいぶん気が楽になったわ」

「ああ、安心してくれ。それより問題は、この溜まった資金の使い道だな」

「確かに……、貯めすぎてもよくないものね。有効活用しないと」


 私たちは顔を見合わせ、次に資金の活用方法について話し合う。


「まずは、協会メンバーの報酬を上げるべきだと思うの。みんな本当によく頑張ってくれてるもの」

「うん、それはいい案だ。あとは装備の強化もな。これから先、依頼の規模が大きくなるにつれて、それなりの装備が必要になる」

「確かに。あと、人員を増やすのも検討しないとね。もっと規模を拡大していくためにも」

「それと、拠点の拡張もだな。訓練場を整備して、もっと効率的に育成したい」


 次々とアイデアが出てくる。でも、これは私たち二人だけで決められない。


「ジャメル、この件は協会の主要メンバー全員で話し合うべきだと思うわ。いろんな意見を聞いたうえで、最善の選択をしたい」

「そうだな。君の言う通りだ」

「じゃあ、近いうちにミーティングを開きましょう。今日はこの辺りで切り上げて」

「ああ、そうしよう。ありがとう、ノエラ」


 有意義な話し合いを終えて、私たちは部屋を後にした。

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