第17話 成長と予感 ※元大神官ジャメル視点

 彼女が自ら、神殿の外へ出たのは大正解だったと思う。引き止めなくて良かった。


 ノエラは、幼い頃からずっと神殿の中で育ってきた。しかも、早いうちから聖女という大変な役目を務めることになってしまった。実力も高くて、普通の女神官とは大きく違う存在だった。


 そんな彼女が神殿の外に出たらどうなるのか、少し心配ではあった。だけど、その心配は杞憂だった。


 冒険者の活動には早々に慣れて、ギルドに馴染んでいた。人付き合いは問題なく、かなり上手にこなしているように見えた。もちろん、彼女の内面までは分からない。けど、少なくとも表面上は上手く溶け込んでいる。


 それだけじゃない。今まであった冒険者ギルドの風潮をガラッと変えてしまった。助け合いの精神を大事にするようになった。それは、間違いなくノエラの影響。


 彼女が聖女だった頃のように、冒険者ギルド内でも信奉者のような者たちが増えていった。聖女ノエラの記憶が失われて居場所が変わっても、同じように彼女を称える声が次々と上がる。


 カリスマというものなのか。彼女はただ強いだけではなく、人々の心を惹きつける魅力があった。




 最近、ノエラの笑顔を見るようになった。付き合いのための作り笑いじゃない。自然に笑うようになった。


 ナディーヌやエミリーと一緒に居る時は本当に楽しそうで、心の底から笑っていた。それは、彼女が神殿に居たときには見ることのできなかった表情。


 それと比例するように、最近は魔法の実力も成長しているようだ。以前と比べて、さらに腕を上げた。


 魔法と精神は密接に関係しているらしい。つまり、今の環境が彼女にとって良い影響をもたらしているのだろう。


 この状況がずっと続けばいいと思う。だが、そんなに甘いものではないことは分かっていた。このまま何も起きなければいいが、そうはならないだろう。必ず何かが起こる。我々にとって都合の悪いことが近い内に。そんな予感がするのだ。


 冒険者として評判が上がれば、神殿の連中にも存在を知られることになるだろう。その時、彼らはどうするのか。きっと、神殿に取り込もうとするはずだ。


 どうやら最近、トラブルが増えているという神殿。有能な女神官を手元に置いておきたいと考えるに違いない。非常に優秀な人材であるノエラが現れたら、彼らはどうするのか。


 そうなったら、どう動くべきか。今のうちに考えておかなければならない。


 どんな選択をすればいいのか。ノエラにとって。そして、我々にとって一番良い対処方法は何だろうか。私は一人、悩み続けた。より良い結果を導き出せるように。

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