第15話 とある大神官との会談 ※エリック王子視点

「馬鹿か? そんな金、出すわけないだろう」

「で、ですが資金援助がないと神殿の業務が滞ってしまい……!」


 神殿の大神官である中年男性が目の前で情けない表情を浮かべている。彼は神殿に資金援助を求めてきた。神殿のために、と。その男が考えていることは自分の地位や名誉、お金のことだけだろう。神殿の連中なんて、ろくでもないやつしか居ないのは知っている。


 この話し合いも、時間の無駄でしかない。さっさと部屋から追い出したい。今は、神殿に資金の援助なんてするつもりはない。


「前に十分な援助をしただろう? あれだけの資金を出してやったのに、お前たちは足りないというのか?」

「そ、それは、その……」


 愛する聖女エリーゼのために、これまで資金援助してきた。仕方なく出したのだ。それなのに、神殿の奴らはさらに要求してくる。本当に呆れた。


 ここで俺が折れたら、また同じことの繰り返しになるだろう。だから、神殿の奴らには、しばらく資金援助などしないつもり。


 俺が欲しいのは、愛する聖女エリーゼだけ。彼女が聖女であり神殿に所属しているから、俺は資金援助を行ってきたんだ。それを無駄に浪費されたら、腹が立つ。


 もう少し、自分たちで何とかしてくれ。王国を頼りすぎるな。


「もういい! これ以上の話し合いは無駄だ。下がれ!」

「お、お待ちください! もう一度、話をっ!!」

「ええいっ! うるさい!」


 兵士に命令して、大神官を部屋から追い出した。ようやく静かになって、落ち着ける。


「はぁ……」


 神官の連中には、イライラさせられる。どうやら最近、神殿の評判が悪くなっているらしい。内部での揉め事や権力争いが発生して、依頼の失敗も増えているそうだ。


 俺が資金を援助してやったのに、そんな状況になるなんて。無能ばかりなのだろう。まったく迷惑な話だ。


 将来が不安になってくる。この先、俺が治める王国は大丈夫なのか? 神殿が負債になったりしないか?


「まあでも」


 歴代最強と言われている聖女エリーゼが居る。なんだかんだ言って彼女が居れば、神殿も安泰だろう。つまり、王国も。俺が頼りにするべきなのは神殿の大神官の連中ではなく、聖女エリーゼだ。彼女さえいれば、大丈夫なはず。


 今は大変でも、彼女に任せればきっとなんとかなるはず。俺は、そう信じている。期待していた。


 そのためにも、婚約者であるエリーゼとの関係を深めておくのは大切。ついでに、このイラつきを発散するため会いに行こう。きっと彼女も待っているはずだから。


「で、殿下? どこへ行かれるのですか……?」

「ああ、ちょっと重要な案件があってな」


 エリーゼに会いに行くため、部屋を出ようとする。だが、大臣に呼び止められた。ええい、面倒な。


「しかし、政務がまだ残っておりますが」

「そんなもの、他の者に任せろ」

「し、しかしですね」

「やるべき事がある。今は、そっちを優先しないと駄目だからな」

「……かしこまりました」


 俺はちゃんと、王国のために働いているのだから。これぐらい、いいだろう。


 大臣は、まだ何か言いたげだったが諦めたようだ。頭を下げると、部屋に残った。護衛の騎士を引き連れて、俺はエリーゼに会いに行く。

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