第33話:公園の完成と広がる笑顔

 それからの俺は、レオとルナと村の外に出て資材の確保に動いたり、コーワンさんのところへ行って遊具のやり取りをしたりと、大忙しだった。

 時折子供たちのためにレオとルナを遊ばせたりもしたが、そんな時はミニゴレたちを連れてコーワンさんのお手伝いだ。

 上手いこと従魔のローテーションをこなしながら、少しずつではあるが公園が出来上がっていった。

 そして――


「…………か、完成だああああっ!!」

「「「「おめでとう! 領主様ー!」」」」

「どわあっ!? ……え? み、みんな、なんでいるの?」


 公園が完成したその時、俺は周りの様子に意識がまったく向いていなかった。

 そのため、コーワンさんが最後の仕上げを終えた時に思わず声をあげ、それに合わせて集まっていた村人たちも声をあげてくれていた。


「ありがとう、リドルさん!」

「すごーい! ねえねえ、あそんでいいの? いいの!」

「レオとルナもいこうよ!」

「ガウガウ!」

「ミーミー!」


 大興奮の子供たちは、今か今かと公園の完成を楽しみにしていた。

 それは、出来上がっていく中で遠目から公園を見つめていた視線でずっと気づいていた。

 だからこそ、妥協したものを作りたくないと思っていたほどだ。


「いいよ。だけど、気をつけて遊ぶんだよ? いいね?」

「「「「はーい!」」」」

「ガウーン!」

「ミーミミー!」


 俺が許可を出すと、子供たちが一斉に公園の遊具へ飛び出していき、レオとルナも駆け出した。

 実のところ、子供たちには作業中から時折、何を作っているのかという質問を受けていた。

 そこでどんな遊具なのか、どうやって遊ぶのかなども説明していたので、一緒に集まっていた大人たちに比べても遊び方を熟知している。

 とはいえ、子供たちの親としてはどんな遊具なのかは気になるだろうと思い、俺は口を開いた。


「これから一つひとつ、遊具の説明をしたいと思います。お聞きしたい方はいらっしゃいますか?」

「「「「聞きたいです!」」」」


 親たちから元気よくそう言われたので、俺はそれぞれの遊具に歩いていきながら説明を行っていく。

 まずはブランコ。座板を木製の支柱から紐で水平に吊るした遊具で、座板に腰掛けてゆらゆらする遊具。

 実際にブランコに乗って楽しんでいる子供たちを見て、親たちは微笑ましく見守っている。


「他の子供たちは、ブランコの前後にいかないように! ぶつかったら怪我をしちゃうからね!」


 注意事項も伝えながら、次の遊具へと進んでいく。

 次の遊具はシーソーだ。長い板の中心を支点にして遊具の両端にそれぞれ人が乗り、上下運動を繰りかえして遊ぶ遊具。

 一方が地面に近づくと、一方は高い位置になり、それぞれが笑い声をあげながら楽しんでいる。


 三つ目の遊具はすべり台。後方に階段を設置し、高所から前方の斜面を滑り降りていく遊具。

 斜面部分をツルツルにするべく、コーワンさんが頑張ってくれた遊具の一つでもあり、その頑張りがあったからか、子供たちは何度も笑顔で階段を上がっては、斜面を滑り降りていく。

 これにはコーワンさんも満面の笑みを浮かべており、満足気に何度も頷いていた。


 その他にも木製の鉄棒や雲梯、砂場も作っており、全ての遊具で子供たちが笑顔ではしゃいでくれていた。

 さすがにスプリング遊具は金属がなく、手元にある他の素材でも代用が難しいとなり、作ることができなかった。

 素材の確保ができるのであれば、次こそは作ってあげたいなと思う。


「こんな感じなんですが、いかがでしょうか?」


 一通り説明を終えたあと、俺は親たちに声を掛けた。


「……あ、あれ? あの、どうしましたか?」


 しかし、親たちからの反応はなく、何かダメなところがあったかと不安になってきた。すると――


「すごいです、領主様!」

「こんな遊具、初めて見ました!」

「あぁ、私が子供だったら遊んでみたいのにー!」

「子供たちがあんなにはしゃいでるなんて……くっ、涙が出てくるぜ!」


 少しの間を置き、親たちからは感激の声があがったのだ。

 わっと俺のところに集まってきては感謝の言葉をくれ、中には本当に泣き出している親までいたくらいだ。

 すると今度は遊具で遊んでいた子供たちがわっと集まってきてくれた。


「ありがとう、リドルさん!」

「とってもたのしいよ!」

「これからまいにちここであそぶね!」


 次に子供たちは俺から離れて、コーワンさんの方へ走り出した。


「な、なんだ?」


 困惑顔のコーワンさんだったが、子供たちの感謝は俺だけではなく、遊具を汗水流して作っていた彼にも向けられていたのだ。


「コーワンさん、ありがとう!」

「ぼくたちまいにちあそぶね!」

「これからもおもしろいゆうぐつくってね!」


 子供たちからの感謝の言葉を受けて、コーワンさんは恥ずかしそうにしながらも、その表情は笑顔を浮かべていた。

 ……やっぱり、子供たちは村を明るくする、太陽みたいな存在だ。

 この公園を頑張って造って、本当によかった。

 コーワンさんと子供たちの光景を見て、俺は心の底からそう思っていたのだった。

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