第32話:職人との話し合い
意見を集め終わった俺とティナさんが屋敷に戻ると、すでにナイルさんとルミナさんも戻ってきていた。
話を聞くと、全員が中央広場に公園を造ることを賛成しており、そのまま決定となった。
「遊具に関してはみんなで遊べるもの、それに従魔と一緒に遊べるものがいい、という意見をいただけました」
「従魔と? それはいい案だね!」
従魔と遊べる遊具というのはナイルさんも思いついていなかったようで、驚きと共に嬉しそうな声をあげた。
「俺は早速、コーワンさんと相談して、どんな遊具を造るか考えたいと思います」
「面倒を掛けるが、任せてもいいかな?」
「もちろんです! 言い出しっぺは俺ですし、俺がやりたいですからね」
ナイルさんにそう答えた俺は、一人でコーワンさんの屋敷へ向かった。
「おう! 公園についてだろう? 村長から話を聞かれたぜ!」
俺がコーワンさんを訊ねると、その理由にもすぐに合点がいったようで、ニヤリと笑いながら出迎えてくれた。
「その通りです。どんな遊具を造るべきか、コーワンさんに相談したくて」
「いいぜ! 中に入りな、図面を引きながら考えよう!」
「ありがとうございます!」
突然の来訪だというのに、本当に頼りになる人だな、コーワンさんは。
……あの酒癖さえなければ、なお良しなんだけど。
そんなことを考えながら俺は、コーワンさんの作業場へ移動する。
作業場は屋敷の裏にあり、以前に運び込んで余っている木材や石材が保管されている。
木材はまだまだ余っているようだが、石材はだいぶ少なくなっており、必要であればミニゴレたちに頼んで切り出し、運び込まなければならないな。
「それで、どんなもんを作りたいのか決まっているのか?」
コーワンさんの言葉を受けて、俺は前世の公園にあった遊具を思い出していく。
メジャーなものだとブランコやシーソー、ジャングルジムやすべり台だろう。
他にも鉄棒や
ただ、今ある資材だと作れるものも限られてしまうのも事実だ。
「金属はあったりしますか?」
「金属だぁ? あるにはあるが、そこまで多くはねぇな。こんな辺境の地だと、金属も貴重なんだよ」
「そうですよね」
家屋改善に動いていた時も、金属を目にする機会はほとんどなかった。
そうなると、金属を使用する遊具は諦めなければならないな。
それを踏まえて、俺はいくつかの遊具をコーワンさんへ説明していく。
「紙とペンをお借りできますか?」
「おう、これだ」
「ありがとうございます」
すぐに準備してくれたコーワンさんへお礼を口にすると、俺は遊具のイラストを描いていきながら、これがどういった遊具なのかを説明していく。
「……ほうほう……へぇ〜……都会には、こんなもんがあるんだなぁ」
感心したように感想を口にしているコーワンさんだが、それは違う。
都会の公園ではなく、前世の日本の公園にある遊具だ。
そこまで伝える必要はないので、俺は曖昧に笑いながら説明を続けていく。
「大きいやつは土台を石材で、子供たちが触れる部分を木材にしてやれば、比較的安全な遊具が作れるんじゃねぇか?」
「そうしていただけると助かります」
絶対に安全なものなどありはしないけど、可能な限り安全に近づけたものを作りたい。
前世では、公園の遊具が使用禁止になることも多かったから、少し淋しい気持ちになったこともあったっけ。
「……だ、大丈夫か、リドル? 急にしんみりしてねぇか?」
「あー……いえ、なんでもありません」
おっと、顔に出ていたみたいだ。
まだまだ仕事は終わっていないので、感情に浸るのはあとにしよう。
「それともう一つ、子供たちと従魔たちが一緒になって遊べるような遊具も作りたいです」
「子供と従魔が?」
「はい。これは子供たちからの意見で出てきたものなので、なんとしても実現したいと思っております」
今までの遊具は俺の記憶から引っ張り出してきたものなので、最悪の場合は作れなくても構わない。
しかし、村の子供たちから出た意見は絶対に実現したかった。
「なるほどな。それは確かに、実現したいじゃねえか!」
子供たちの願いだと分かったからか、コーワンさんの職人魂にも火が点いたようだ。
「一応、こんなのがあればいいなー、みたいな形はあります」
「なんだ、聞かせろ!」
「それはですね――」
そうして俺はコーワンさんと遅い時間まで話し合いを続け、公園に作る遊具が決まっていく。
その中でも子供と従魔が一緒になって遊ぶことができる遊具の話し合いには時間を掛けており、最終的には完成が楽しみになるくらいの手応えを得ることができていた。
あとは資材を集めて、コーワンさんに頑張ってもらうしかない。
明日からまた、忙しくなるぞ!
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