第22話:資材調達
森に入って最初に行ったのは、グースのところへ向かうことだ。
「グース!」
「モグ! モグモグー!」
「おはよう! 実は、伐採してもいい木を探しているんだけど、場所に心当たりはあるかな?」
グースは魔の森の土の中で生きてきた魔獣だ。
たぶんだけど、魔獣の縄張りにも精通しているのではないかと思い、声を掛けた。
もしも大型魔獣の縄張りに入って、そこの木を伐採しようものなら、襲われてしまうかもしれないから、そこだけは気をつけなければならない。
「モグー? ……モグ! モグモグー!」
「いい場所があるって? 助かるよ! 案内してくれるか?」
「モグモグー!」
さすがはグース、頼りになるな!
こうしてグースの案内で森を再び進んでいくと、ゴンコが栄養豊富な土――改め、|黄金土塊(おうごんどかい)を作っている場所の近くに到着した。
「ここの木々なら大丈夫なのか?」
「モグモグー!」
「え? この辺りはゴンコの縄張りなのか?」
「モグー!」
そういうことなら、一度ゴンコにも断りを入れておくべきだな。
従魔だからって、勝手に縄張りの木を伐採して持っていくのは、主としてもやりたくないし。
「分かった。それじゃあまずはゴンコのところに行こう!」
「モグモグー!」
それから数分歩いたところで、ゴンコがせっせと黄金土塊を作っていた。
「ゴンコー!」
「ギ? ギッギギー!」
俺が声を掛けると、顔を上げたゴンコが嬉しそうに手を振ってくれた。
「実は、ゴンコの縄張りの木を伐採して村に持っていこうと思っているんだけど、問題ないかな?」
「ギギー! ギギギギー!」
「どれだけ持っていってもいいって?」
「ギッギギー!」
ありがたい話だけど、ゴンコの縄張りを荒らし過ぎるのは申し訳ない。
「まずは五、六本の木を伐採して、それからまた必要な分が出たら声を掛けるよ」
「ギギー? ギッギギー!」
首を傾げられたけど、ゴンコも納得してくれたようだ。
ゴンコとしては確認なんて必要ないと思っているんだろうけど、やっぱり必要だよな。
主だからといって、相手の所有物を勝手に持っていっていいわけじゃないんだし。
というわけで、グースが教えてくれた場所へ戻り、俺たちは伐採を開始する。
……俺たちというか、伐採はレオとルナがやってくれるんだけど。
「ガウガウッ!」
「ミイイイイッ!」
レオとルナが鋭い爪を振り抜くと、たった一振りで大木が切れてしまう。
……しかし、何度見てもすごい切れ味だな、二匹の爪は。
「ガウガウ!」
「ミーミー!」
「よくやったな!」
二匹して三本、合計で六本の大木を伐採し終えると、甘い鳴き声を出しながら足元にやってきたので、俺は全力で褒めながら頭を撫でてあげた。
「それじゃあこの木は……ゴレキチとゴレオにお願いしてもいいかな?」
「「ゴッゴゴー!」」
元気よく返事をしてくれたゴレキチとゴレオが動き出す。
……え? ……うっそ、マジで?
「……一匹で、三本まとめて、持っちゃうの?」
「「ゴッゴゴー!」」
「……あ、あぁ、よろしく、お願い、します」
思わず敬語になってしまったが、ゴレキチとゴレオは気にすることなく、それぞれが三本の大木をバランスよく持ち上げ、村に向けて歩き出した。
「……ゴレキチとゴレオ、すごいな」
「「ゴッゴゴー!」」
「……だよな。お前たちもきっと、すごいよな」
俺の呟きに自分たちもやれると言ってくれたミニゴレとゴレミを見て、驚きと共に頼もしさを感じてしまう。
予想以上に木材の調達が早く終わったので、今度は石材の確保へ動くことにした。
「さて、石材はどこから切り出してこようか」
「ゴゴ! ゴゴゴゴー!」
「え? 石材ならいい場所を知っているって?」
今回はグースではなく、ミニゴレが声をあげてくれた。
確かに、ミニゴレは鉱石の魔獣だし、石のことなら専門家……なんだと思う。
「そういうことなら、案内をお願いしてもいいか?」
「ゴッゴゴー!」
「グースもここまでありがとう! また何かあれば声を掛けるよ!」
「モグモグー!」
ここでグースと別れた俺は、今度はミニゴレの案内で森の中を歩いていく。
すると、今度はミニゴレを助けた場所の少し手前で足を止める。
「……ここか?」
「ゴゴー!」
「でも、周りに石材にできそうな場所なんて……え? まさか、この中か?」
俺が周りに目を向けながら困惑していると、ミニゴレが大木の根元を指さす。
そこへ目を向けてみると、大木や垂れ下がっていた蔓に隠れた洞窟の入口を見つけた。
「……もしかして、ミニゴレたちはここで生活をしていたのか?」
「ゴゴー!」
「そんな大切な場所で石材を切り出してもいいのか?」
「ゴッゴゴー!」
もちろんだとミニゴレが言ってくれると、その隣に立っていたゴレミも大きく頷く。
「……ありがとう。ミニゴレ、ゴレミ」
俺は二匹にお礼を伝えると、そのまま洞窟の中へ入っていく。
不思議なもので、洞窟の中には微かな光を放つ苔が地面近くの壁に生えており、薄暗いがまったく見えない、ということにはならなかった。
ゆっくりとではあるが洞窟を奥へ進んでいくと、最奥でミニゴレが案内してくれた理由を発見し、俺は思わず声を漏らす。
「……これは、すごいな」
「ゴッゴゴー!」
「……ありがとう、ミニゴレ! これは最高の石材になるよ!」
俺たちの目の前にそびえ立っていたのは、洞窟を最奥にしてしまっている、巨大な大岩だった。
これを切り出していけば、最高の石材になるだけでなく、この奥にも洞窟が広がっているのであれば、新たな発見があるかもしれない。
「ミニゴレと話しながら、可能な限り石材を切り出していこう!」
「ガウガウ!」
「ミーミー!」
「だけど無理は禁物! 疲れたら休むこと、いいな!」
レオとルナが無理だけはしないよう声を掛け、石材の切り出しが始まった。
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