第12話 杖と魔力

案内されたクラスへ入ると、みな一様に緊張した面持ちで席についている。

私も空いている席に腰かけるとざっとクラスを見渡した。

入学式同様多種多様な人が集まっていた。

おそらく20人くらいの人が人クラスに集められていた。

能力テストでは魔法クラスといわれていたのできっと魔法の才能がある子ばかりだと思う。

しばらくすると黒いローブのようなものを羽織った大人が教室に入ってきた、この黒いローブはおそらく先生の制服なのかみな同じものを大人が着ている。


「それでは、改めましてようこそ魔術クラスへ。私はこのクラスの担任のエマルグスです。最初の一年は覚えることがたくさんあると思いますが、焦らず堅実に学んでいきましょう。」


担任の先生が挨拶をしてにこりと笑う、多分30歳前後の男の人だ。

声は男性なのだが髪を伸ばしていてスレンダーな体つきなので、もし女性といわれても違和感は覚えないと思う。


「では、このあと教科書と杖を配布いたします。最初はこちらから支給した杖で練習してもらいますが、一年時の間に自分専用の杖を作ってもらいます。」

お手伝いさんのような人が教科書と箱に入った杖を配って回る。

「みなさん行き渡りましたか?では箱を開けてください。」


その声にみんな一斉に箱を開ける。

箱の中には20センチほどの小さな木でできた杖があり、その持ち手部分には白い宝石のようなものが埋め込まれていた。


「その柄の部分についてある魔石に自分の魔力を流して、自分の杖にしてください。そうすることによって持ち主が決まり、自由に取り出せるようになります。」


魔力を流す?魔力って目に見えないけどどうすれば……

そう思っていると隣の席の髪が薄ピンクの女の子が杖をもってうーんと唸っていた。

私も杖をもってうーんと唸ってみたが何も変わらなかった。

所々でわぁ!とかできた!言った声も聞こえて内心ちょっと焦ってしまう。


「ふむ、できた子もいるようですが、できていない子は魔力の流れが分からない子が多そうですね。では一人ずつ席に回りますのでもう少し続けてみてください。」


そう先生は言うと一人ずつ生徒の手をとって何かアドバイスをしていく。

私の番になり先生が手を握る。

「これから少しだけ私の魔力を流します。その魔力を感じっとってみてください、そして感じ取れたらその魔力を私の方に返してください。」

握られた手がじわっと温かくなる、その温かさがじわじわと腕の方までくる。

おそらく心臓と胃の間位のところでぐるぐると渦をまいているのがなんとなくわかる。

これを押し返せといわれても…深呼吸をして目を閉じ集中する。

じわりじわりと暖かなものを胸、腕へと押し返すイメージ…

ふと何か細い糸のようなものが胸の当たりから腕に向けて出ているような感覚がある。

「はい、よくできました。この感覚を忘れず、同じことをこの杖にもしてください。」

そうそう言うと先生は手を離す。

私は忘れないうちに杖に持ち替え、また深く深呼吸をして目を閉じる。

私の隣の子も同じアドバイスをされいるようだった。


何度も何度も挑戦したが、そううまくはいかなかった。

なんとなくここにあるような気がするのに、それがうまくつかめていない。

杖を持った手がじわりと汗ばんでいることに気が付き一度手を離す。

教室を見渡すと成功してるのは6割といった感じでほかの子も頑張っていた。

隣の席の子もゆっくり深呼吸してもう一度挑戦するようだ。


よし、私も頑張ろう!そして出来たら隣の子の名前聞くんだ!

そう意気込みもう一度深呼吸をして目を閉じた。

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