第9話 聖女の伝説と二人の従者

学校へ行くまでの数日間は特にすることもなく、簡単な読み書きの本をもらいフィーリアに教えてもらって何冊か本を読んで過ごした。

読んだ本の中には聖女の伝説について書かれたものもあった。

聖女は世界に一人しか存在せず、今いる聖女が亡くなった後数年で新しい聖女が誕生するらしい。

暗黒の時代に聖女が生まれ勇者と共に魔王を倒し世界に光り輝く時代を取り戻した、なんて記述があるように勇者や魔王なんてものも存在しているらしい。

フィーリア曰く、魔王は千年近く現れておらず勇者もまた魔王と共に現れる存在だと教えてくれた。

そんな剣と魔法のファンタジーなんてまっぴらごめんだわ。

簡単な文字を覚えた私は、家族に手紙を書きたいと何度かお願いをしたのだけど入学準備などでばたばたしていたため難しいと言われてしまった。

そんな私を見かねてフィーリアがこっそり教えてくれたことがある、それは聖女を生んだ家族は神殿から保護を受けることになるという。

聖女の弱点となりうる家族を保護し、穏やかに暮らさせることで私を間接的に護っているらしい。

生活面で困窮しないように、危険な目に合わないようにこっそりと支援されていると聞いてほっとした。

会えないわけでもなく、家族も穏やかに暮らせているという事実だけで聖女を頑張れる気がしてきた。


入学までの数日で一緒に行く二人の従者の面接もした。

入寮となると女子寮になるので、女性しか連れていけない。そのため女性の中から選出され最終決定は私がすることとなった。

ずらりと広場にならぶ白い衣の女性たちは、みな一様に水色か緑色の刺繍がされていた。

一人ひとり順番に挨拶をして簡単な質問する。それを二十人ほど繰り返し名前と顔が一致しないまま一通りおわる。

今日答えるのはむずかしいので明日に、とフィーリアに告げてもらい一度自室に戻り気になっていたことをフィーリアに質問する。

「刺繍の色が違うのは何か意味があるのですか?」

「はい、色はそのまま階級となっております。聖女様は唯一無二の金色、法皇様は銀色、大司教様は紫色、司教様は青色といった感じで位ごとに色が決められています。私はその下の司祭で水色、緑色はその下の助祭でございます。さらに下に見習いがいるのですが…それは追々お教えいたしますね。」


そもそも、司祭と助祭の違いが判りません…とは言えず、きっと紹介された順番に偉い人なんだろうなと思っておくことにする。

帽子の大きさもきっと位の高さに比例するのだろうと自己解決して、だれを選ぶか頭を悩ませることにする。


結局緑の刺繍の助祭から年齢もあまり上過ぎない二人選ぶことにした。

一人は茶色の瞳で、焦げ茶色の長い髪を後ろで一つにまとめていてそばかすが印象的なルイーズという十四歳の子。

もう一人は深い緑の瞳で、黄色味が強めの金髪をお団子にまとめた肌の色が白いおとなしそうなオリヴィアという十二歳の子。

彼女たちにそう告げると目を輝かせながら

「精いっぱいお勤めさせていただきます!」

とルイーズから言われ頭を下げられる、それに倣いオリヴィアも頭を下げる。


これで決めなきゃいけないことは決めた。

あとは学校へ通うだけだ。


幼稚園以来家庭環境のため友達ができなかった私は、実はとても楽しみにしていた。

学校でたくさんお友達を作ってできなかった青春をしてやる!

聖女だってそれくらい楽しんでもいいよね?

期待に胸を膨らませつつ、神殿で過ごす最後の安息日を過ごしていた。


うぅ、おなかすいた…

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