第8話 入学準備と清めの間
アンガスから学校の説明を受け、準備ができ次第入学という流れになる。
準備といっても学用品や制服といったものなので二、三日後には入学できるらしいが切りのいいところで安息日の翌日からとなった。
全国から人が集まる学校らしく、寮も完備されており入寮してもどちらでも構わないといわれたので寮に私は寮に入ることにした。
一節に一度帰宅許可が下り、実家への帰省も可能だと教えられる。
私の実家はここからだと転移魔法を使わないととても遠いらしく、馬車で一節もかかるということが分かった。
めちゃくちゃ遠かったのね……
一年に二度ほど長期休暇があり、温かくなってきたころ新節のお祝いのためのお休みと、豊穣を祝う収穫祭のためのお休みでその日は家族や親しい人たちと過ごすのが通例となっている。
我が家も毎年家族で屋台を見たり遅くまで広場にあつまってみんなで踊ったり歌ったりと、とても賑やかだったのを覚えている。
お祭りには町長からもお酒がふるまわれたりと小さな町だからこそのあったかいお祭りだった。
長期休暇には送迎付きで帰宅許可もでたし、お手紙を書いてもいいと許可ももらえたので当分会えないと思っていた私は心の中でガッツポーズをとる。
実際にやっちゃうとフィーリアにまた咳払いされちゃいそうだしね。
一通り説明を受けて席を立ちまた自室へと案内される。
真っ白な建物だから覚えるまでは迷子になりそう…
自室へ向かう途中夕日が差し込んでいることに気が付きもうそんな時間なのかと気が付く。
程なくして自室へと到着するとソファーに座った私にフィーリアがお茶を淹れてくれる。温かいお茶を飲んでほっとしているとフィーリアから私に話しかけてくれる。
「サリーシャ様、寮に入られるということですが取り急ぎ侍女と従者をお決めになっていただこうと思います。」
「侍女と従者ですか?」
「はい、学園の寮ということですが身の回りのお世話をするものを最低でも3人はつけていただきたいと思います。これはサリーシャ様の身を守るためでもあるためご了承ください。女子寮になりますので女性だけでそろえさせてはいただきますが、みなそれなりに腕の立つものばかりですのでご安心ください。」
「フィーリアは付いてこれないのですか?」
そう聞くとフィーリアは少し驚いた顔をしたあとにこりと微笑み
「お声をかけていただき光栄にございます。サリーシャ様が望むのであれば私はどちらへでもお側についてまいります。」
「フィーリアが無理じゃなければとても心強いです。」
「ではそのように司祭様へ申告しておきます。あと二人はこちらから選出した中からお選びいただけますか?」
「はい、よろしくお願いいたします。」
にこりと微笑んだフィーリアはどこか嬉しそうだった。
コンコンとドアがノックされ夕食が運ばれてくる。
昼と同じように一さじずつフィーリアが食べて問題がないと判断され食事が並ぶ。
「水と大地と太陽の恵みに感謝し、いただきます。」
神殿の食事は一般家庭よりは品数が多いくらいで、決して豪華とは言えないが、スープをメインにパンとチーズハムといった一般的なものと蒸した野菜や果物が一緒に並ぶ。
自分が食べれるだけの量を注いでもらい食事を済ませると配膳の人は部屋から食事を運びどこかへ行ってしまう。
食事の後は身を清めるといわれまた自室から離れると、大浴場のようなところへ連れていかれる。
日本のお風呂とはつくりも違うが、白を基調としたタイムスリップするお風呂映画のような豪華な感じだった。
この世界に来て広いお風呂というのは初めてで、元日本人としてはゆっくり浸かれることに心が躍る。
フィーリアは浴場まで案内すると、一度失礼しますと出ていく。
きっとこのあと夕食をとるのだろう。
浴場には何人かの女性がおり促されるまま布一枚の姿にされる。
髪を洗ってくれ、オイルみたいなものをぬられたりする。
体を洗おうとしてくれたので断固拒否をしたら驚かれた。
体くらい自分で洗えますと答えたが、隅々まで清めなくてはならないといわれしぶしぶ手の届かないところだけ洗ってもらうことにした。
しっかり洗ってもらった後はお待ちかねのお風呂!!
側にぞろぞろと女性がいておちつかないが、それよりもお湯に浸かれることのほうが勝ってしまう。
少しぬるめのお湯につかると、あぁー、と声が漏れてしまう。
日本人なら仕方ないよね!?
女性に見守られながらのお風呂はなんだかちょっと居心地が悪く、お風呂くらいゆっくり一人で入りたいと心の底からしみじみと思う。
こっちの世界でもお風呂に入れるなんて……聖女になって一番良かったと思った瞬間だった。
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