60.整理と理解
ラウルと話していると扉がノックされ、伯爵、伯爵夫人、それから馬車でここまで連れてきてくれた老人が入室してくる。リゼは起き上がろうとするが、伯爵が手でそのままでよいと合図をしたため、寝たままの状態をキープすることにした。
「先ほどはここまで送り届けていただき、ありがとうございました。体力が限界に近かったのですが、今日中に家に戻ってきたかったので本当に助かりました。あなたがいなかったらきっと街に泊まることになり、騒ぎも大きくなりすぎていたかもしれなくて……」
「気にしないでくれ。当然のことをしたまでのことだよ。それに、伯爵様がわしの孫をこちらで雇ってくれるそうで、なんともありがたい」
「それは嬉しいです。ご縁ができましたね。それではこれからも宜しくお願いします」
その後の話によると、老人の孫は騎士団にまずは見習いとして入隊することになるようだ。伯爵たちが部屋を後にすると、リゼとラウル、アイシャの三人だけになる。
「今日は疲れたので寝ますね」
「分かった。隣の部屋で待機しておくから何かあったらアイシャさんに言ってほしい」
「ラウル様は帰らないのですか?」
「今日は泊まっていくよ」
ラウルが部屋を退室し、アイシャは近くの椅子に座る。今日は一晩、リゼの近くにいることにするようだ。リゼは気づいたら夢の中なのだった。
次の日、朝早くに目が覚めた。近くの椅子に座るアイシャはずっと起きていたようなので、寝るように話しておいた。
そして、机に座ると日記を広げた。
早速神々の加護の情報を整理することにするのだ。ステータスウィンドウを表示する。
【名前】リゼ=プリムローズ・ランドル
【別称】フォルティア
【性別】女
【年齢】十二才
【レベル】8
【職業】伯爵令嬢
【属性】風属性、氷属性、無属性
【称号】運命の開拓者
【加護】大地の神ルークの祝福(大)、芸術の神ミカルの祝福(大)、武の神ラグナルの祝福(超)、叡智の神アリオンの祝福(小)、水の加護、土の加護、風の加護、人魚の祈り、竜羽の盾
【スキル】ルーン解読(固有)、毒耐性(レベル1)、衝撃耐性(レベル1)、毒検知
【状態】健康
【所持金】120000エレス
【ポイント】151010000
【メッセージ】「さて、あとは君次第だ。一つ良いことを教えてあげよう。リッジファンタジアはシリーズ物でね。君がやったのは『リッジファンタジア』で記念するべき一作目だよね。そしてファンディスクが『リッジファンタジア ~ Its the truth he speaks.~』で、次がブルガテド帝国を舞台にした『リッジファンタジアII』。そして、三作品目は『リッジファンタジア オルタネイティヴ』だね。三作品目は一作目と同様にゼフティア王国が舞台で主人公はレイラだよ。それから、私はね、転生については管理しているけど、他にも色々な神がいるということを頭の片隅に記憶しておいてね。さーて、危険は様々なところにあるから、加護を有効活用することだね。特別な名も授けたし、たまには君の生活を観察してみるとするかな。では頑張って~!」
(えっと、まずは名前だけれど、本当に名を授かったのね……。でも嬉しい気持ちもあるかな。なんとなく美しい響きだし。そしてレベルはメリサンドを倒したからあがっていて。あれっ? この無属性って何……? 加護の影響かな?? まあ、加護の詳細を確認したら分かるでしょう……そして称号はうん。ルーク様がつけてくれたのかも)
ここでリゼはアンドレにも称号がついていたとふと思い返した。あの時はカイがアンドレだったという事実に動揺して詳細は忘れてしまったが、何かついていたことは確かだ。
そして、念のため無属性魔法について説明を読んでおく。
『無属性 備考:特異な魔法属性。
(この説明だけ読んでもよく分からないかも……
リゼはルークからのメッセージを書き写し、加護の詳細を見てみることにした。
『大地の神ルークの祝福(大) 備考:前世の記憶を知識として与え、どこでも課金画面を表示、会得可能とする。課金画面は強力な要素がラインナップされやすくなり、特殊な武器も交換可能とする。レベル上限の制限解除。熟練度の向上率上昇。デバフ無効。攻撃時にデバフ、ボス特攻を付与。聖属性魔法への耐性。任意のタイミングで神に一度だけ会うことが可能』
『芸術の神ミカルの祝福(大) 備考:前世の芸術面の特技をそっくりそのまま与える。アイテムボックスを使用可能とする。ステータスウィンドウの共有時における内容を任意に調整可能とする。ダンジョンマップウィンドウを利用可能とし、索敵機能および味方の位置確認機能を追加する。未実装のウィンドウシステムを全て利用可能とする。今後いくつかのウィンドウシステムも追加予定』
『武の神ラグナルの祝福(超) 備考:加護取得確率の上昇、異属性の魔法取得(五個、上書き可能)、鍛錬によるポイント付与。魔法は手を向けなくても発動を可能とする。取得できる魔法属性の制限解除。
『叡智の神アリオンの祝福(小) 備考:魔法・スキル熟練度の初期値が一定数となる。魔法やスキルは応用可能とし、内容は魔法およびスキルの詳細で確認可能。非表示のステータス値を表示可能』
かなり長い説明となっており、少し理解するために眺めてみる。とはいえ、これらの加護をフル活用して生き残る必要があるため真剣だ。
リゼとしてはルークの加護は意味がわかる。戦闘用の効果が多数あるので、調整のために入れておいてくれたのかもしれない。逆にラグナルやアリオンの加護はよくわからないものが多いと感じた。
そしてミカルの加護でどのようなウィンドウシステムが追加されたのか気になるところだ。まずはそちらを確認することにする。
「えっと、ウィンドウ一覧という文字が画面下部にあるのできっとここから何が追加されているのか確認できるのでしょうね」
【ウィンドウ一覧】
『ステータスウィンドウ』
『装備ウィンドウ』
『アイテムウィンドウ』
『マジックウィンドウ』
『スキルウィンドウ』
『マネーウィンドウ』
『ダンジョンマップウィンドウ』
『ポイント交換ウィンドウ』
『製造ウィンドウ』
『戦闘ウィンドウ』
『メッセージウィンドウ』
ウィンドウ一覧が表示されたため、内容を眺めてみる。
「なるほど。ポイント交換ウィンドウは、いわゆる課金画面、つまりは喫茶店で見ていた交換画面のことなのだと思うけれど、製造ウィンドウから下は知らない……これが恐らくは未実装のウィンドウってことよね?」
リゼは知らないウィンドウについて、視線を向けて詳細を確認してみた。
『製造ウィンドウ 備考:アイテム、装備、武器、魔法、スキル、加護の調整が可能となります。なお、神から与えられた加護は調整できません』
『戦闘ウィンドウ 備考:戦闘時に相手のレベル、加護、スキル、魔法、武器、ヒットポイントが分かります。相手が自分よりもレベルが高い場合は、レベル差が十以下であれば表示可能。それ以上の場合はレベル、加護のみが表示されます』
『メッセージウィンドウ 備考:特定の知り合いと連絡を取り合うための機能。この機能を用いて相手にメッセージを送信した場合、自動的に相手にも本機能が実装されます』
「だいたい分かったけれど……。ひとまず気になるものはあとで開いてみるとしましょうか。続いて……そうね。アイテムボックスを見ておきましょう!」
元々入っていたものを除くと以下が追加されていた。
『ミルディンの奇跡 備考:アイテムボックスはどのような環境下でも利用可能となります』
『交換チケット×三枚 備考:ポイント交換ウィンドウで利用可能なチケット』
『モンスター投影石 備考:モンスターをランダムで投影し、実際に模擬戦が可能となります。モンスターからのダメージは受けず、鍛錬に最適。なお、この石はいかなる方法を用いても破壊できません』
これら以外にメリサンドやキメラ・ウォーリアー、ノーマルスケルトン、コボルトなどのモンスターたち、モンスターが落とした武器、メリサンドを攻略後に入手した二冊の本が入っていた。
ラグナルの加護について理解できたリゼ。モンスターを仮想的に出現させて戦えるようなものなのだろうと理解した。上級ダンジョンに出現するようなモンスターと疑似戦闘できるのは、もしもの場合のための予習としてはかなり有効だろう。
「そもそもとしていただいた加護を強化していただけるとは思っていなかったのだけれど、今回が最後ということでとにかく大盤振る舞いなのですね……十分に普通の人たちでは手に入らないようなすごい加護なのではないでしょうか……ルーク様のお考えであるチートの定義からは外れるのかもしれないけれど、かなり強い加護すぎるような……普通の人からすればチートではないのでしょうか……」
一旦落ち着こうとアイテムボックスを閉じた。
加護の内容は想像以上であり、持ち腐れにしないように計画を立て直さないといけないと考えるのであった。
ふと、気になったこともあり、マジックウィンドウを表示してみる。
【属性熟練度】
『風属性(初級):0699/1000』
『氷属性(初級):0712/1000』
『無属性:0000/5000』
【魔法および魔法熟練度】
『エアースピア(風):100/100』
『ウィンドプロテクション(風):056/100』
『ウィンドウェアー(風):050/100』
『スノースピア(氷):100/100』
『アイスレイ(氷):051/100』
『インフィニティシールド(無):1000/2000』
『スキルアブソーブ(無):1000/2000』
魔法の名前だけでは無属性魔法というものを理解出来ないリゼだ。とはいえ、おそらくどの属性にも分類されないような効果の魔法を覚えられるのだろうということはなんとなく感じていた。
なお、無属性には初級や中級といった概念は存在しないらしい。また、初期状態で二つの魔法を覚えているところも他の魔法属性と異なるところだ。魔法の詠唱において、マナは使用せずに
また、無属性魔法関連は何もしていないにも関わらず熟練度が半分に達しているため、これはアリオンの加護の影響かもしれない。まだそこまで発動していないはずのウィンドウェアーが半分に達しているのも加護の影響で調整されている可能性がある。そして魔法の説明を読んでみる。
『インフィニティシールド 備考:自己もしくは他者、もしくはその両方、あるいは指定した場所に結界を展開できます。壁型の結界。(応用:結界の形は自由に変形可能とします。無詠唱可能)』
『スキルアブソーブ 備考:相手の習得しているスキルをコピーできます。相手のレベルが高いと失敗しますが、熟練度が上がれば成功率が上がります。(応用:相手を追尾します)』
(この魔法って、色々と使えそうね……。アリオン様の加護である『応用』についてもなんとなく分かったかも。魔法の『追加効果』は相手に影響を与えるのだけれど、『応用』は魔法そのものの便利機能といったところよね。よし、インフィニティシールド!)
リゼが魔法を詠唱すると、透明な壁が出来た。一応、発動したリゼからは透過率の高い半透明の壁に見えており、試しに叩いてみるとそれなりの強度になっている。試しに何度かレーシアで切りつけてみたが、壊れることはなかった。ウィンドプロテクションは一度のみしか防げないが、この結界は何度か防ぐことができそうだ。
試行錯誤の末、消滅させようと念じることで壁が消えるということも理解できたのであった。
通常は念じた場所に壁ができるようで、自分の目の前、少し離れた所、といったように展開箇所の調整が可能らしい。また、同時に三つまで展開できた。もしかすると、習熟度が上がればもっと展開可能なのかもしれない。
そして詠唱の際に足元や結界を展開する場所に魔法陣が展開されない。魔法陣が展開されないということは、相手に魔法を詠唱したことがバレないという利点がある。
アリオンの加護によって応用が可能となっているため、意識して詠唱すれば自分の体の周りを四角く囲むように変形して展開できた。展開した後に形や大きさを変更もできたため、ある程度自由なようだ。
なお、再詠唱可能までの時間が異様に短いのだが、なぜだろうか。
(無属性魔法、強力すぎませんか……ラグナル様。ウィンドプロテクションと比べてみたけれど……この結界、かなり回数を防げるみたいだし。何度もレーシアで叩いても壊れない。まあ、何度もずっと攻撃すればそのうち壊れるのでしょうけれど。とはいえ展開すると、結界の内側から外へと通り抜けて攻撃できたりするわけではないから、使い所が肝心ね。展開して攻撃を受けて、すぐに消すという戦法は使えるかも!)
続いて、通常の魔法の詠唱プロセスで必ず実施しなければならない、手を前に突き出して詠唱するというルールを無視して、『エアースピア』を詠唱してみたところ、体の前から風が吹いた。右利きのリゼは剣を持っていない左手を突き出して魔法を発動していたが、両手が塞がっていても魔法を発動できるようになったようだ。ラグナルの加護の効果だ。不意打ちにも使えると感じた。
そして、製造ウィンドウを確認してみた。アイテムの効果を強化出来たりするようだ。例えばエリアスからもらったブレスレットは『魔法の威力を増幅させる』という効果がある。そういった効果をさらに強化できるらしいが、やはりポイントが必要になるとのこと。
最後にメッセージウィンドウを確認した。事細かに説明が書かれていて理解するのに少し時間がかかってしまった。例えば、リゼがアイシャにメッセージを送った場合、アイシャもメッセージウィンドウが利用可能になる。そして、リゼがラウルにもメッセージを送った場合、アイシャとラウル同士もメッセージのやり取りが可能になるとのこと。つまり、リゼが登録している人物同士はやり取りが可能になる。逆にアイシャなどが登録していない人物にメッセージを送ろうとしても失敗するようだ。
「ひとまず分かったことがある……とにかくバランスよく色々といただいてしまった。痒いところに手が届くというか。かなり強くないですか……。とは言え、慢心はダメよ! 結界魔法は頼りになるでしょうけれど、きっと相手が沢山いたら壊されてしまうでしょうし、強いスキルを手に入れないと一人でダンジョンに飛ばされたりしたらどうしようもない。そして製造ウィンドウでもポイントが必要。つまり、いずれにせよ、ポイントがないと始まらないということよね。いつも通り、毎日の日課を確実にこなしつつ、絵を描いていかないと!」
神々の加護を用いて何かを得るためには、ポイントが全てだ。リゼとしては、一億ポイントを超えるようなものにはミカルより貰った三枚の『交換チケット』を利用して交換することでポイントの消費を抑えつつ、うまくポイント運用をしていこうと考えた。
一通りのチェックを終えたリゼは兎にも角にも日々の練習の重要性を再認識したのだった。
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