8.交換画面再び
次の日。
朝食前、キュリー夫人や騎士の授業を受けつつ、隙間時間を活用して魔法の練習を重ねていった。
そして、昼の休憩時間。夕方には喫茶店に行くことにしているため、昨日の夜に見たばかりではあるが、現状把握のためにステータスウィンドウを確認する。
【名前】リゼ=プリムローズ・ランドル
【性別】女
【年齢】十二才
【レベル】2
【職業】伯爵令嬢
【属性】風属性、氷属性
【称号】なし
【加護】大地の神ルークの祝福(小)、芸術の神ミカルの祝福(小)、武の神ラグナルの祝福(大)
【スキル】なし
【状態】健康
【所持金】120000エレス
【ポイント】100260000
【メッセージ】「メッセージなし」
(あ、レベル2に上がっている! 今朝の練習で上がったのかも。ポイントも微量程度の回復はしている……何はともあれ、夕方はゆっくり交換画面を見ないと)
朝食の際に伯爵たちに喫茶店に行くことを告げていたリゼは、何を交換しようかと意気込むのだった。
今回は怪しまれないように授業で使っている本も持参する。読んでいるふりをして落ち着いて確認するためだ。
午後の授業をこなし、アイシャと共に馬車に乗り込む。
「お嬢様、ずっと授業や練習を頑張られていましたので、こうして休息をとるのも大事ですよ。羽を伸ばされるようで良かったです」
「そうなのよね。ゆっくりしたい気分の時もあるから……定期的に喫茶店でお茶にしましょう? 場所はあの店を気に入ったからあそこでね!」
「サービスも雰囲気も良かったですもんね。私も気に入っちゃいました。良い紅茶を出しますし」
二人きりにならないと話せない話題である、魔法の練習結果について議論を繰り広げていると、程なくして喫茶店の前に到着する。先日の来店の時よりも奥の落ち着けるテーブルへと案内されたリゼたちはメニューを見る。
「私はそうですね。今回は……ケラヴノス帝国よりもさらに東方の国より輸入された、この希少茶葉を使った紅茶のティーセットでお願いします。お嬢様はどうされますか?」
「うーんと、それじゃあ、この前と同じブルガテド帝国の茶葉を使った紅茶でお願いします。私、この紅茶大好きなのよね」
「ブルガテド帝国の茶葉って、国同士の関係もあってなかなか入ってこないので貴重ですよね」
そして、魔法の話をしていると店員がティーセットを運んでくる。
リゼが魔法の本を取り出すと、アイシャはアイシャで土属性魔法の本を取り出した。事前に軽く勉強すると伝えておいたのが正解だった。彼女も勉強するらしい。
(ポイント使用!)
リゼが心の中で呟くと交換画面が表示される。ふと、(ルーク様の話では、会得できる要素は定期的に変わるという話だった)と回想しつつ、内容を見ていくことにする。
最初に見るのは属性だが、相変わらずのラインナップであった。ただし、詳細を確認しておく。
『聖属性 備考:聖女用の属性。全属性の魔法が使用可能となる。ただし、雷、氷属性魔法は使用不可』
『雷属性 備考:古代魔法属性の一つ。ゴーレムなど、鉱物や無機物の敵以外には無類の攻撃力を発揮する。全体的に再詠唱に少し時間がかかるのが難点』
(古代魔法属性……ね。氷属性もそんな感じ。詳細は不明ね……)
次にリゼが見たのはアイテムだ。何があるのかと期待する。
【アイテム交換画面】こちらはアイテム交換画面です。ポイントを消費してお好きなアイテムを獲得することが出来ます。
【??????????】100000
【魔法ポイント(大)】1000000
【スキルポイント(大)】1000000
【上級ポーション】500000
【世界樹の葉】10000000
【転移石】50000000 (限定1組)
リゼは一部の文字化けに驚きつつも、アイテムの名前に視線を集中させて、詳細を表示する。
『?????????? 備考:ロックされたストーリーを進めます』
『魔法ポイント(大) 備考:属性熟練度、魔法熟練度を向上させます。80アップ』
『スキルポイント(大) 備考:スキル熟練度を向上させます。80アップ』
『上級ポーション 備考:骨折などの怪我を治癒します』
『世界樹の葉 備考:瀕死状態から完全回復します』
『転移石 備考:二つで一組。それぞれの石を置いた場所で転移可能となります』
(なるほど……。まずこの文字化けしているのはアプリ版リッジファンタジアであったストーリーを進めるための『赤ハート』ね。完全に無意味……。他はどれも便利なアイテムだけれど……、地味に高いのよね。魔法ポイントはゲームでかなり利用して、一気に上級魔法を使えるところまであげたりした。えっと、初級から中級にあがるには……カンストさせるのにおよそ十三個必要。つまり、千三百万ポイント。いきなり殺されそうになったりすることはないでしょうから、ひとまずはスルーかなぁ。ちょっと考えていることがあるから、そっちが軌道に乗ったら買うのもありね。転移石って確か、都市を繋いだりしているもの。この石のおかげで地方貴族も悪さ出来ないのよね。定期的に状況をチェックする役人が来るから。スキルと加護は後で見るとして、次はこの……その他? というもの)
続いて、その他と書かれたタブを確認することにする。
【その他の交換画面】こちらはその他、特殊な効果の交換画面です。ポイントを消費して獲得することが出来ます。
【属性枠追加】5000000
【VIP事業証明カード】100000
【ダンジョンマップ】10000000
リゼはVIP事業証明カード以外は名前の通りだろうとは思うが、当然ながら詳細を確認する。
『属性枠追加 備考:魔法属性を獲得するための枠を増やせます。五枠まで拡張』
『VIP事業証明カード 備考:特別なカード。どの商会でも格安の手数料2%で事業を開始できます』
『ダンジョンマップ 備考:ダンジョンマップウィンドウをウィンドウシステムに追加。ダンジョンに入ると描画され、宝箱や罠の位置も判別可能となります』
(その他……って、そういうことね。いまの私のポイントでは雷属性を追加しようと思ってもポイント的に出来るものではないから、これもスルーね。あ、そういえば、属性交換画面に火や水とか……基本属性が追加されることってあるのかな……? それと、事業証明カード……これは少し考えていることに使えるかもしれない。交換しましょう。ダンジョンマップ……罠は脇道の小部屋というのがよくあるパターンだから入らなければ良いだけのこと……なかなかダンジョンに行く機会はないでしょうし)
次にリゼが表示したのは加護だ。すでに三つの加護を持つリゼとしてはどのようなものがあるのか気になるところだ。
【加護交換画面】こちらは加護交換画面です。ポイントを消費してお好きな加護を獲得することが出来ます。
【水の加護】1000000
【土の加護】1000000
リゼは少し予想外のラインナップであったため、驚いて目を見開いた。視線を合わせて詳細を確認すると、該当属性魔法に対しての耐久力の向上や、威力の向上といった内容であった。水属性や土属性ではないリゼだが、ある考えに至る。
(えっ、基本属性の加護も入手可能なの……? それにしても耐久力の向上は使えそう。あ、そうだ! アイシャ……アイシャにも加護をつけてあげるべきではないかな? 私と一緒にいる機会が多いから、必然的に危険に巻き込まれる可能性が上がってしまう)
少し考えを巡らせたのだが、どうやって特定の相手に対して交換を成立させるのか分からなかった。体の向きを変えたり、顔を傾けたり、色々と試しているがうまくいかない。リゼの奇怪な行動に気づいたアイシャは立ち上がり「お嬢様……?」と、肩に手をかけてくる。
すると、交換確定の横に譲渡という項目が表示され、アイシャの名前が表示された。
(あ! アイシャを選べるように! 急いで交換実行!)
するとアイシャの足元に魔法陣が展開される。驚き飛びのくアイシャだが、リゼは何も知らないといった形ですました表情で紅茶を飲む。
「あ、あれ! いま魔法陣が足元に出てきたような気がしたのですが……気のせいだったのでしょうか……。それにしてもお嬢様、大丈夫ですか? 何かおかしなポーズをとられていたりしたので……」
「ご、ごめんね! ちょっと腰のあたりが痛くて……もう治ったみたい! 少しひねったのかも」
うまくごまかしたリゼは恥ずかしい気持ちを抱きつつも、また交換画面へと集中する。最後に残ったのはスキルだ。一番気になっていたのはこの項目だったりする。
【スキル交換画面】こちらはスキル交換画面です。ポイントを消費してお好きなスキルを獲得することが出来ます。
【レイン・ショット(ランス)】50000000
【ルーン解読(固有)】500000(特価:半額)
【アイテムボックス】80000000
【アブソルーテリー・シールド(シールド)】100000000
【毒耐性】2000000
リゼは(これらはなんだろうか)と、画面を冷静に眺める。必要なポイント数にばらつきはあるが、ひとまずは詳細を確認してみることにする。
『レイン・ショット(ランス) 備考:所持する槍を複製し、敵に対して雨のように降らせます』
『ルーン解読(固有) 備考:ルーン文字を解読可能となります』
『アイテムボックス 備考:千個まで物を収納可能な空間を提供します』
『アブソルーテリー・シールド(シールド) 備考:すべての攻撃を二十秒間、必ず防げます』
『毒耐性 備考:毒への耐性がつきます。育成型のスキルです』
(流石に本来は課金したポイントを交換する画面ということもあって、明らかに強いスキルがある。ポイント数が高い槍と盾のスキルは相当有効ね。剣がないのは残念。アイテムボックスは……そういえば私はすでに使えるようになっているはず。夜にでも見てみましょう。あとは……ルーン文字を解読できる、というのは要するに太古の書物を読めるようになるということよね。そして毒耐性。育成型ということはスキル熟練度を上げて育てていけばより強い毒への耐性がつくということね。確かルイ王子のシナリオは、ジェレミー王子の派閥が毒を盛って、倒れたルイ王子を主人公であるレイラが闇魔法で打ち消すというシーンがあった。つまり、この王国では暗殺の方法の一つとして毒が用いられる可能性がある。絶対取得するべきね。育成型なら早くレベル上げをした方が良いから、いま入手しておいて損はない。よし……)
結局、色々と交換したのだった。
ふと気づくと、読んでいるフリをしている本の上にVIP事業証明カードが置かれていたので急いでページをめくって隠す。
集中して少し疲れたため、紅茶を飲んだ。
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