第2話『第一段階:人口倍増化政策①』

【注意】誤解忌避のため、最初に断っておきますが、加賀倉は、『優生思想』の崇拝者ではありません。IQ120の人が社会を作る、などというのは、あくまで俗的な考えであり、明確な根拠はありません。今作で強調したいのは、仮に、そういった前提(IQ120最適知能指数説、とでも言いましょうか、が採用される空想世界)で、構成要員皆がIQ120以上の巨大集団が現れてしまったら、世の中はどうなってしまうのか、IQが低い、とされる人々は彼らに支配されてしまうのか、という、根も葉もないお話です。その点をご留意の上、お楽しみくださいませ。



>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦



 鎖国中のア国で、『人口倍増化政策』が掲げられた。


 イ国との対立が深まる中、来るべき有事に備え、国力の増強が求められていた。


 ア国政府のお偉方が言うには、この『人口倍増化政策』により、ア国で長年続く少子化を解消できる、らしい。


 政策の具体的施策として、出産支援金、育児支援金、小・中・高・大の教育の無償化、十八歳以下の医療費無償化、公共交通機関利用費無償化が実現した。



>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦>≦



 ア国、くの字県にて。


 ここ、くの字県は、ア国の東西二つある県のうちの片方、西側にあたる。


 くの字県は、上空から見ると、その名の通りくの字の形をしており、東の三角形をした三角みかど県と、ちょうど、パズルのようにかっちりはまったような見た目である。


 東の三角県みかどけんでは第二・三次産業が中心なのに対し、くの字県では、農業、鉱業、水産業が栄えている。


 くの字県の真中町まなかまちと言うところに、安部零士あべれいじという、ごく平凡な男がいた。


 零士は、妻以千代いちよ、六歳の娘の美満みまと三人で、ごく普通の暮らしをしている。




「子育ての経済的負担が一気に軽くなって、本当に良かったよ。これで美満になんでもさせてやれるぞ」

 と、零士。


「そうね。で、あなた知ってる? 来月から、十八歳未満の子供が誕生日を迎えるごとに、百万クレジットが給付されるわよ」

 と、以千代。


「ねぇねぇ、ぱぱとまま、なんのおはなし? ひゃくまんっていくつー?」

 と、無邪気に会話に割り込む美満。

 

「とっても、たぁくさんよ。おほし様の数くらい」

 と、やさしく説明してやる以千代。


「じゃあ、せっかくだし給付金を使って、美満に何か好きなものを買ってやらないとだな! 小学校の入学祝いだ!」

 と、子煩悩な零士は、早くも娘を甘やかしたいようだ。


「わぁいわぁい! みま、たくさんかってもらうー!」

 と、美満は、大喜びである。




 このように、ア国では、子育て世帯にこの上ない大盤振舞いをしていたのだが……


〈第3話『第一段階:人口倍増化政策②』へ続く〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る