第41話


 


 次の日の夜。

 ここが、この林間学校の本番とばかりに、盛り上がっている人たちが多かった。


 日中は山登りを行ったためか、疲れの溜まっている人も多いというのに、かなり賑わっている。


 俺たちは、ジャージに着替えて外へと出ていた。

 これから、キャンプファイアーと肝試しが行われるため、その準備だ。


 といっても、キャンプファイヤーの骨組みなどは先生や実行委員たちが行っていて、すでにほとんど完成している。


 空はすっかり暗くなっている。

 ……この夜を楽しみにしていたという生徒も多くいるのは周囲を見れば明らかだ。


 見るからに気合いの入っている生徒たちで溢れているわけで……それは俺の身近でもそうだった。

 高崎も、その一人だ。

 俺と本庄はそんな高崎の様子を後ろから眺めていた。


「道明寺。高崎は今から誘うと思うか?」

「まあ……どっちでもいいとは思うけどな。焦る必要もないわけだし。」


 そんなに、急ぐ必要はないだろう。

 二人はいまのところ、どちらも想いあっている。


 俺たちだって、別に高崎と久喜を急かしているわけではなく、あくまで一緒にいる時間を作っているだけだ。


 その様子を眺め、マイナスイオンならぬ、ラブコメイオンを楽しんでいるだけだ。


「でもよ、あんまり時間が経つと熱も冷めるともいうからな」


 ……それも、そうだよな。

 同じ関係のまま長くいれば、友達という枠組みから出られない可能性もあるが。


「まあ、どう決めるにしても邪魔しないようにだけしねぇとな」

「そうだな」


 少し待っていると、戸塚たちもやってきた。

 一応、肝試しは班で行くことになっているので、これで全員合流だ。


 肝試しの方も準備が終わったようで、一組から順番に歩いていく。

 ルートがいくつかあり、それを自由にいけばいいようだ。


 まとまっていくグループもあれば、一人二人と少数で行くところもある。


 別に、どこをどういってもいいし、メンバーも特に関係ないようだ。

 ……ていうか、もう先生たちなんてほとんど管理をしていない。


 彼らは彼らで自由にやっていて、こっちも問題を起こさなければいいと言う感じだ。

 一つ前のクラスになると、途端に男女二人ペアで行って、からかうような声が響いていく。


 ……ネタとしての雰囲気は強いが二人ペアで楽しんでいるようだ。


「せっかくだし、あーしたちも二人ペアで行く? なんかラブコメっぽいことしたいし」


 戸塚があからさまな提案をしてきた。……恐らくだが、高崎と久喜の二人きりにさせたいのだろう。

 確かに、この後のキャンプファイアーで一緒に行動しないのなら、ここが最後の二人きりでの行動になる。


 本庄も戸塚の意図は理解したようで、腕を組みながら頷く。


「二人ずつで行くってのはまあ、悪くねぇな。振り分けはどうするんだ?」


 振り分けに関しては、クジで決めるか話し合いで決めるか、だ。

 クジ自体は、アナログのものではないがスマホのアプリで可能だ。ただ、それだと細工が難しいだろう。


「うーん、どうしよっかねぇ」


 ただ、戸塚はクジまでは用意していないようだ。

 ……ここで、俺と本庄。戸塚とソフィアとするとさすがに露骨だろう。


 だったら、男女別々で特に違和感なく組んだほうがいいな。


「それなら……俺は、桐生院と行っていいか?」

「……え?」


 俺がそう提案するとソフィアがちらとこちらを見てきた。

 どこか驚いた様子のソフィア。

 皆からの視線も集まっていたので、俺はちゃんと考えていた理由を伝える。


「一応この後のキャンプファイアーの風除け係だし、お互い婚約者もいるわけだし。その方が面倒なことにならないと思ってな」


 昨日話しておいた内容をしっかりと利用して、提案すると皆からは納得されるがソフィアは少し不満そうだった。

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