21
私は病院のベッドの上で、手帳に一連の事故のことを書きまとめてた。こういうのを Post-mortem って言うらしい。和訳にすると検死。いや私、死んでないし。事後分析。
「軽いやけどですね。」 The doctor said.
「軽いやけどで良かったね~。」 Mami said.
私の腕は少し焦げて爛れたものの、跡に残るほど深くはないらしい。お見舞いに来てくれて、今の私の目の前に居る真未の方は無傷。制服は派手に焦げたみたいだけど。
「てかさ、なんで恵美、裸で現場に突っ込んできたの?」
「だって、体操服は燃えやすいって家庭科でやったから。」
「服が燃えるのと体が燃えるのはさ、違うじゃん。」
「それは、そう。」
「もう次からあんな無茶しないでね。」
「うん。」
でも、私が助けなかったら真未は死んでたじゃん。って言葉は胸にしまった。 Be Silent. 部長が助けに来なかったら私まで死んでたし。そんなこと言い返したら絶対怒られる。
学校とか、文部省の運営する青少年の家とか、その他合宿所にある敷き布団や掛け布団は、難燃加工が成されてる。部長はそのことを知っていて、保健室の掛け布団を剥ぎ取り、各クラスの掃除用具入れにあるバケツを合計4~5個持ち出して、同フロアの男女トイレの全ての蛇口を全開に捻って、ばしゃーんばしゃーんとトイレ前の廊下と、床に広げ伸ばした掛け布団を、バケツをひっくり返してびしょびしょにする。そうやって出来たスーパー難燃布団を背負って音楽室まで駆け昇り、私たち2人を抱え上げて救出してくれた、ということらしかった。
ふと、窓の外を見る。この時期の木は数億枚もの葉っぱを茂らせているくらい立派で、到底、残り1枚の感傷に私を浸らせてはくれない、若々しい緑色の青さが嬉しかった。
事故の発生源である家庭科室では中規模の爆発が起きたらしく、窓は割れなかったものの(発見が遅れた原因の1つ)、コンロ1つの周辺はステンレス製の板が酷く焦げ、作業机の側面にある収納スペースの木製の戸棚が燃えて失われ、残った部分も爆風で歪んでるとのこと。
犠牲者はゼロ。恐らくガス栓を閉め忘れていることや、ガス漏れの臭いに気付かなかった愚か者がコンロをして爆発に巻き込まれてるはずなんだけど、怪我人も、私を除けばゼロだったとのこと。私を燃える音楽室の中へ突き落とした犯人は、いつぞやシンヤ君を突き落とした子みたいに上手く逃げ仰せてしまった、という訳。ちなみに通報器のボタンを押したのも、誰か分からないまま。
部長、
・・・1通りまとめてみたけど、なーんにも分かんない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます