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今日は日差しが痛い日だ。学食で聞き流すお昼の放送では、The Beatles のEight Days a Week が流れてる。


「真未はこの曲、知ってる?」

「なんのこと?」

「ほら、放送のビートルズ。」

「え、ビートルズ私よく知らないんだよね。タイトル何?」

「エイト・デイズ・ア・ウィーク。」

「あれ、なんか聞いたことある。数年前の映画でタイトルになってなかった?」

「あ、そうそれ。あれビートルズのドキュメンタリーだからね。」

「へー。どんな歌詞なの?」

「君を愛するには1週間に7日じゃ足りないや・・・。って感じの歌。」

「なにそれ怖。」

「それは、そう。」


ビートルズは、すーぐ好き・愛してます・君がいないと困る的な歌詞を歌う。それで、いいお年なレディやマダムたちが絶叫して、興奮のあまりライブ中に気絶し、警備員に搬送されていく様子を Youtube で見た。当時の女性に大受けしたんだろうね、韓流ドラマみたいに、今となってはもう、古き良きものなのかも。


「歌詞、意外と薄っぺらいね。」

「私たちがトキメクには昔の作品過ぎるんだよ。」

「でもジョン・レノンの声は好き。」

「分かる。良い曲だよね。」

「それは、そう。」

「あー、また私の口癖まねしてるー。」


ゆるゆると食べるのか喋るのかどっちつかずな時間が過ぎて、ごちそうさまと挨拶をしながらも、私たちは席を空けないでその場で話し続ける。食べ終わった後で風邪薬を飲むと、シンヤ君のことを思い出して。


「そういえば昨日、デジャビュが起きたの。」

「また!?ふーん。詳しく聞かせて。」

「ハドソンさんって覚えてる?」

「この前のパン屋さんね。」

「うん。そこの息子さんのシンヤ君がね、田んぼに突き落とされた時に。」


由加さんは、私のデジュビュには何か意味が隠されていることがあるかもって言ってた。自分が小説家なら絶対にそういう風に書くって。思い出したついでに私は真未に相談してみてる。


「じゃあ、シンヤ君を落とした相手は?」

「すぐ逃げちゃった。なんか意味があるのかな。」

「いや、誰だって逃げるでしょその状況じゃ。もしその逃げた子が犯人じゃ無かったとしてもね。」

「なに?その子は何もしてないのに、シンヤ君が自分から田んぼに落ちて、ピーピー泣く演技をしてたってこと?あの子、まだ小学生だけど。」

「じゃあ恵美はシンヤ君がまさに突き落とされてる決定的瞬間を見たの?」

「え、見てないけど。」

「じゃあ言い切れないじゃんね。」

「えー、自演だったとしてさ、何のためにそんなことするの。」

「恵美に気を引くためだった、とかさ。」

「なんでよ。私、あの子とは初対面なんだけど。」

「あの子は恵美を知ってたとしたら?」

「なんで?」

「だから、」


真未は深呼吸した。


「その子もタイムトラベラーなんじゃないの。恵美と同じでさ。知らないけど。」

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