勢い良くお店を飛び出してきたものの、由加さんにの言う通り、私の頭の中はぐちゃぐちゃで、どこに行って、何をすればいいのか、何も分からなくなってしまった。


私が解くべきミステリーって一体何なんだろう。ありすぎて困る。私は目的地の無いまま取り敢えず毎日通る下校道を辿ってた。ずんずんと足早に歩きながら、私は半分無意識で独り言をぶつぶつと呟いてた。


「どうしたらタイムリープを抜けられるの?って前に、なんで私はタイムリープしてるの?というか由加さんは何者なの?なんで私あそこでバイトしてたの?なんで1年後に書かれたはずのメモがあったの?

 2年生をずっと続けたいの?3年生になりたくないの?それとも、修学旅行に行きたいけど、受験勉強はしたくないっていう単なるワガママなの?何で由加さんに記憶の復旧を頼んだの?私はどうしたいの?どうしたかったの?

 将来の不安ってどうしたら拭えるの?てか不安な未来なんていっそ無い方が良くない?未来が来ないのに未来のために必死で頑張ってるみんなが馬鹿みたいじゃない?」


私は、ノストラダムス大予言の実現が近づいた世紀末の中高生たちの話を思い出した。どうせ世界は終わるのに、頑張って勉強するだけ無駄じゃない?って自暴自棄になって、結果、痛い目を見た人たちの話。


「二の舞にはなりたくないけど、徒労を喜べるほど大人じゃないし。あと別に私はタイムリープに関わるあれこれの謎を解きたいわけじゃないし。でも生まれつき不思議に思ったことを放っておけない性分だから、このまま無視し続けるのも無理だと思う。」


いったん深呼吸。一時的にせよ気分を落ち着かせることで、ありがたいことに私は由加さんの言葉を思い出せた。


「今日はしっかり休んでね。まだ気持ちの整理とか、いろいろ必要だと思うし。」


確かに。今の私じゃ頭をどれだけ酷使したって解けない謎ばかりだろうし、整理できないカオスばっかりだろうし。肉体的にも精神的にも疲れ果てちゃってるし、ちょうど帰宅のコース上にいるし。まっすぐ家に帰って休まない理由が1つも無い。


私はどこにも寄らず、どこにも逸れず、来た道を戻ることもなく、流れのままに自然のままに、言葉通りまっすぐに家路を辿った。


「そう、まっすぐに。ここからは1つ1つ数字を数えるように順番に、着実にまっすぐ進んでいけば良いんだよ。」


私はそう言い聞かせた。そして今の私が1番最初にするべき1つのことは、頭を休めることだと私の頭の中の由加さんが言ってた。

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