第4話「人との絆で魔法が強くなるとするじゃん?」
(なにそれ?)
「友達とか恋人とか、周囲に人がいて、その人のおかげで魔法の威力が強くなることってあるじゃない? 心が繋がってるとか、絆が強いからだって説明されたりするけど、本当にそれが理由なのかなって」
(いや分かんないけど、漫画とかゲームがそう言ってんなら、その世界ではそうなんじゃない?)
「魔法とは何か、魔法がなぜ使えるのか、に対しては、魔素とか精霊とか使って、理屈で説明したりするのに、そういうとこだけ感情論なのおかしくない?」
(ご都合的だけど、許容範囲かなあ。ファンタジーって、そういう感動的?なものが醍醐味だったりするし)
「ファンタジーじゃないってば」
(ファンタジーじゃないの……?)
「SFじゃん?」
(SFじゃん……?)
「だからさー、この前、科学技術でどう魔法を作るかって話をしたじゃん? つまり、魔法は科学だし、科学は魔法なんだよ。十分に発達した科学が魔法と見分けがつかないなら、いっそのこと科学から魔法を作ってやろうって契りを交わしたよね? あの茜色の夕日に向かって」
(知らん知らん)
「放課後の校舎裏でもいいよ。立ち入り禁止の屋上でも秘密の隠れ家でもいいし。でも、午前2時に踏切に望遠鏡担いでいくのは、流石に勇気がいる」
(大げさな荷物しょってきて、はしゃいでる彼女かわいいよな)
「いうて、あれは主人公もベルトにラジオ提げてる辺り、かなりはしゃいでる」
(あんな青春なかったなあ……)
「僕たち高校生だから。これからこれから。ああいうのは頑張れば経験できるから。たぶん」
(頑張ればできることだったんなら、どうして青春を嘆いてる大人が多いんだ?)
「……君のような勘のいいガキは嫌いだよ」
(えへへ)
「魔法発動にDNAが強く関わってるって話したじゃん?」
(急に話戻すなよ)
「魔法は遺伝だからね。魔法――つまり、科学技術がDNAを読み取って、その人の能力を認識して、それに応じた魔法が発動される」
(ああ、確かそんな話してたね)
「だからDNAなんだよ。どこまでも理屈で成立してる」
(何が?)
「発動者のDNAを読み取るのはもちろんなんだけど、科学技術側の読み取り機能が甘いんだよね。だから、近くにいる人のDNAも読み取ってしまう」
(へー)
「その結果、誰かが近くにいれば、その人の能力値が多少混じった魔法になっちゃうんだよ。でも発動者メイン、っていう部分は変わらないから、発動者個人の魔法だとその世界の人たちは考えるってわけ」
(まあ、呪文唱えてるのはそいつだから、そいつの魔法だって考えるよな)
「そんな感じで、友愛とか心の絆とか、そんな抽象的なもので魔法が左右されていたわけじゃなくて、単に科学技術の仕組みがそうなっていた、という話」
(そんな身も蓋もない……)
「でも、そこで終わらないのが設定づくりの醍醐味だよね」
(急に設定づくりとか現実的なこと言うのやめて)
「ここで過去人が出てくるんだけど、この科学技術が作られた後に、これを上手く利用しようと考えた別の集団が、他の動物のDNAも読み取れるようにしちゃうんだよ。その結果、魔法が使える魔物が生まれたってわけ」
(動物たちが魔物になったってこと?)
「厳密にはキメラだね。だって、ファンタジーの世界にも家畜はいるわけでさ。それとは別物。飼ってるニワトリが急にサンダーボルト使い出したりしたらマズいだろ?」
(確かにファンタジーでも動物と魔物って分かれてることが多いよな)
「キメラを作ったのは、もちろん人間なんだけど」
(予想はしてたけどね)
「何を隠そう、この僕もね、キメラを作る研究所にいたってわけ」
(もう突っ込まないからな)
「キメラを作るときに目印を体内に入れるんだよ。機械の方は、目印を判断できるようにしておいてさ。そうすれば、目印がない動物で魔法は発動しない。動物と魔物の違いはそれだね。で、呪文の代わりに鳴き声とかで魔法が起きる感じで」
(人間のエゴって怖い……)
「そんで、世界規模の戦争が起きるわけ」
(勝手に起こさないで)
「いやいや、これまでの歴史を見てみてよ。魔法みたいな科学技術が生まれればさ、やっぱり戦争で使われちゃうじゃない? 魔法を使える陣営とキメラを使える陣営、どちらでもない陣営が戦争して……」
(便利なものが、結果的に戦争に使われるの悲しいよな)
「われわれキメラ陣営は負けたんだよね」
(人間が戦場に出てない分、一番有利そうなのに?)
「やっぱり、動物を使ってるのが倫理的に駄目だったのかなあ。国に攻め入られて惨敗したんだ。降伏宣言する頃には、人口も大量に減っててさ」
(キメラじゃなくて、元締めの人間狙おうってなったのか)
「だから、人間からの制御がなくなったキメラがフィールドを闊歩してんの。それが魔物」
(は?)
「だって、キメラ生成はうちの専売特許だったんだもん。他の国にはできないよ。だから国が滅びれば、ロストテクノロジーになるわけでさ」
(制御する人間がいなくなったら止まるようにしとけよ)
「なんか丈夫に作りすぎちゃってさー。頑丈だし寿命も長い。生命維持するために勝手に食事もする。まいっちゃうよねー」
(やれやれ、じゃないんだよ)
「ちなみにキメラ――魔物の身体に入れた目印は、人工石だよ。人工の宝石ね。魔物が絶命すると身体が崩れ落ちるんだけど、その人工石だけは、形として残るんだよ。人工石は未来では、魔物を操る魔石ってことになっていて、冒険者は魔物討伐してこの魔石を売ることでお金を得てる。換金できるお店があるんだよね。ほら、フィールドの魔物を倒したら何故かお金が入ってくるシステムも解決するじゃん」
(やっぱファンタジーじゃねえか)
「人工石はダイヤにしとく? エメラルドとか? それともサファイア? うふふ~とかやってる場合じゃなかったよね~」
ふたりでSFの設定を話すだけ 飛鳥たぐい @asukatagui
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