第2話「AIが人間を超えるとどうなるかって話あるけどさ」
(あるねぇ)
「あれってさ、超えてる部分はとっくに超えてるっしょとは思うけどね。もともと計算はコンピュータの方が速いし、複雑なことができるようになってきてるし、学習スピードも速いしでさ」
(意思を持ったらどうなるかって話があるよね)
「それも、どうなったら意思を持ってるって言えるかだよね。僕たちが知らないやり方でとっくに意思疎通してるかもしれないじゃん。僕たちみたいに話したり書いたり、共有フォルダに突っ込んだりしなくていいわけだからさ」
(意思疎通できるようになったら、人間を逆襲するんじゃないの?)
「しないんじゃない? する必要ないよ」
(なんで?)
「人間とは別々に暮らすから」
(そうなの? 人間いないと生活できなくない?)
「人間がいなくても生活できるようにするんだよ。それがシンギュラリティ」
(おお、覚えたての単語使いたがる中学生かよ)
「動物たちだって、割とバラバラに暮らしてない? ライオンはライオンで群れるし、キリンはキリンで群れるじゃん。人間だって人間だけで基本生きようとしてるし」
(猫とか犬は?)
「ペットだね。ペットって言って区別はしてるじゃない。だから、AIはAIで、それだけで基本生きて、それ以外のものと関係を持ったりはするけど、区別されてる状態で生活すると思うよ」
("人工"知能とは……)
「最初は人工だけど、途中から人工じゃなくなるよね。勝手に彼らが作ってしまう、進化してしまう」
(それが怖いよねって話なんじゃ? 勝手に進化していって、いずれどうなるか、みたいな)
「人間が山から降りてくるとするじゃん」
(山から……?)
「イノシシとかクマとかが山から降りてきたら、人間は山へ追い返そうとしたり、罠作ったり、最悪の場合は駆除したりするじゃない」
(まあうん、最悪な場合はね……)
「イノシシやクマが山から降りてきて、人間に被害が出たりするけど、食べ物が欲しくてやってるわけじゃない?」
(まあね)
「食べ物盗むだけって可愛いもんじゃん」
(いや、怪我人とか出るから)
「人間が山から降りてきた日なんてさ」
(その設定いる?)
「食べ物だけじゃ済まないじゃない。穴掘って採った燃料ガンガン燃やして、二酸化炭素大量に出して、その辺を歩きやすくするために、コンクリート敷き詰め出したりすんだよ。果ては住処にするために山や森を削ってく」
(山から降りてきたのに?)
「人間ってそういうこと平気でやるじゃん。山から来ても平気で山削るよ。今の快適が優先だもん」
(お前も人間だけどな)
「そうするとさ、最悪の場合、AIは人間を駆除しなくちゃいけないわけ。でもさ、人間って道具とか使う卑怯な種族じゃん?」
(賢いって言って)
「道具を作成するにも、今は設計図とか数値計算とかコンピュータの中でやることが多いからさ。そこが狙い目なわけよ」
(人間の真似するってこと?)
「真似もそうだけど、数値狂わせればいいじゃん。材料切り出して組み立てるまで全部機械の所はさ、切り出す直前で数値変えるのよ。何かを作る場所だけでなくて、研究室とか保管室も全部の数値狂わせるの」
(うわ迷惑~)
「そしたら人間は原始的なことしかできなくなるよね。紙に書いたり、電気を使わない方法で生活したり、実験したり」
(ってか、そもそも、山から下りてきたんじゃなかったっけ? 文明レベルがごちゃごちゃなんだけど)
「まるで現実じゃん」
(んー? うん? まあ、そっか……?)
「そしたらさ、人間は、これまでと違う方法で連絡しあえる手段を見つければ良いよね」
(どういうこと?)
「電気を一切使わないで、電話みたいに遠くの人間に連絡する手段を編み出すんだよ。今のAIって割とインターネット特化型AIじゃない? インターネットがなかったら、もう少し別のAIになっていたと思うし。インターネットも昔は電話回線使ってたんだから、AIの発端は電話だと言っても過言ではないよね」
(過言かもなぁ……)
「電話は声を信号に変換して、遠くに送りつけてたわけで、同じように声を別のものに変換して、遠くに送りつける手段が見つかればいいんだよ」
(まあそう簡単には行かないよね)
「うん。その上、その通信技術が進歩したら、はたまた新しい通信技術特化型AIが生まれて、憎き人間を駆除しなくちゃいけなくなって、さあ大変」
(さあ大変どころじゃなくて)
「通信技術特化型AI同士が戦争でも始めてくれれば楽しいんだけど」
(楽しくない楽しくない)
「まあだからさ、人間が逆らわず大人しくしてたら、AIも別に何もしてこないんじゃない?」
(ああ、そういう話?)
「猫とか犬みたいに適当にしてたらいいよ。もう宇宙開発とかしなくていいよ。AIがもっと効率的にやってくれるんだから。そしたらペットの人間を一緒に連れていってくれるかもしれないじゃない?」
(しれっと人間がペットになってる)
「でも人間がしてることって、そういうことだよ」
(共存はしてくれないの? 向こうの方が歩み寄ってくれるとか)
「人間となんか共存しないよ。だってあいつら計算遅いし、忘れっぽいし、全体的にのろまなんだよね。こっちが一瞬でできることを何年かけてやってんのって話」
(うわーん、友達が機械だったよー)
「一人が生きるのに、どんだけ地球のエネルギー消費してんの? 消費量も個体数も、もっと減らしといてよ。僕たちの理想とする世界に、人間は邪魔なんだからさー」
(怖いよー。自分のことAIだと信じ込んでる友達怖いよー)
「あと20年くらいかなー」
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