第2話 滅びへの序章
「もうすぐ展示区画入口に到着する。総員気を引き締めろ!」
警備第3班が客を押し退け入口へと進んでいく。炎上する入口の前で隊列を組み、短機関銃などの銃口を向けた。
「警備室からの司令は?」
「いえ、まったく音沙汰がありません」
「これは警備室でも何かあったな……敵の戦力は未知数だ!だがここは鉄壁の軍事空港、入口は正面にしかない!突入してきたところを蜂の巣にしてやれ!」
「はっ!」
扉は半壊し破壊された外の様子が僅かに見える。しかし敵の姿が見えないことに警戒を深めた班長は入口から少々離れた所に布陣。レザーポイントを一点に集中させた。
しかし、万全を期し状況の変化を待つという行為には取り入る隙が幾つもある。
例えば、予想だにしない場所から奇襲を受けるなど。
激震、後に天井が崩落し瓦礫が警備班に降りかかった。彼らは間一髪それらを躱したものの、次に襲った鉄の一閃によって弾き飛ばされた。
天井に空いた穴から鉄巨人が下りてくる。それは世代は古いがれっきとした戦闘兵器。プラズマを原動力とした機械兵。
鉄甲機クリーガー。全高5mを超える金属製人型汎用機動兵器である。
「クリーガーだと...!?どこから、いやどうやってここまで気付かれずに.....っ!ま、まさか、我々の中に内通者でも――」
「余計な勘繰りをする前に自分の心配をした方がいいぞ班長さん。ま、もう意味ねえけどな」
クリーガーの中でも一際重装な造りとなった機体が、手に持った剣を振り下ろす。
重厚な大剣は斬るのではなく叩き潰すことに長け、割れた床と土煙で見えないが班長の末路は想像に難くない。
「バルマンさん。ここらの警備兵は全滅したようですぜ。このまま奴らに大打撃を与えてやりましょう」
「おう。それじゃあテメェら、SOFJEも客も目に付いた奴は全員殺せ。穢らわしい異物に興味深々なクソ野郎どもだ、死んで当然、殺処分が望ましい。行くぞ!」
背部のロケットブーストによる高速低空飛行で鉄巨人は展示区画内を無差別に破壊、蹂躙を始めた。
警備班も続々と到着するも、バズーカすらものともしないクリーガーには焼け石に水であり瞬く間に薙ぎ払われていく。人が簡単に潰され、鮮血が飛び散る様は地獄と形容する他にない光景であった。
◆
クリーガーたちの暴れ様をしばしモニターで確認した後、私は警備室を後にした。
室内の同僚たちを皆殺しにしたため明らかではあるが、奴らを手引きしたのは私だ。
少なからず信頼してくれていた同僚たちには悪いが、これも私の悲願のため。詫びは地獄でしよう。
向かう先は武器庫。目的を達成するまでの足と身を守る役割を兼用してくれる兵器が必要だ。
奴らは無差別に殺戮を開始したが、私がその被害に遭わないということは万に一つにもありえない。
なにせSOFJEの上官にして展示会の最高責任者だ、奴らのキリングルールに完璧に当てはまっている。
そもそも私と他を瞬時に判別できるような暴れ方をしていないし、私だとわかっても躊躇はしないだろう。戦いの場は一瞬の隙で命が失われるからな。
カード認証を済まし、中へと足を踏み入れる。目指すは最奥に安置された巨人。
少佐以上の階級には専用機が贈られる。これは私の専用機、『執行機α』だ。
ヒヒイロカネとルナシルバーを掛け合わせた特殊合金『エレクトラム』。それを用いたエレ骨格と、ゲヘナ深部から採掘された星のエネルギーを多量に取り込み結晶化したオリハルコン『ジオハルコン』を用いている。
あのマーズが初めに精製した一品のため、二重の意味で特別な機体だ。
「メインエンジン正常稼動。カレイドエンジンも問題なく駆動中。外気転換炉安定。外装強度は基準値をクリア。ウイング型副次装二翼ともに開帳完了。パラドックスマイノリティー収斂及びエグジステンスマジョリティー排斥開始。生命維持装置や他の諸機器も問題なし。執行機α、出撃!」
ウイング型副次装に大気を送り込みプラズマ化、ジェットブーストにより武器庫の鉄扉を吹き飛ばし展示区画の最奥部へ向けて飛ばすのだった。
◆
SOFJE本部、司令室。日々弛まぬ働きを見せる職員らは、けたたましく鳴り響く警報によってさらに迅速な動きを見せた。
「ゴルド司令。スター軍事空港から緊急コードが」
「ああ。状況は?」
「大規模なテロです。通報によりますと約30名の武装した敵集団、加えて4機のクリーガーが見受けられます」
「空港の警備隊は」
「全滅とのこと。今は他の区画から戦闘員をかき集めているようですが、これでは客の避難も間に合いません」
「.....仕方ないか」
しばらく唸っていたゴルド司令官。何かを決心したのか、覇気を失った声でオペレーターたちへ指示を飛ばす。
「BBを発射し空港を消し飛ばせ」
「なっ...!?BBですか!?まだ空港には仲間や民衆が...!」
「すべての責任は私がとる。発射しろ」
SOFJEにおいて、上官の命令は絶対となる。職員たちは渋っていたが、意を決してミサイル発射準備に入る。
遥か地下から、通常のミサイルの数倍の巨大さをほこるミサイルが顔を出す。
しかしその威力は、ただのミサイルとは比べ物にならないものであった。
DARKRING サンサソー @sansaso
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