第15話 義妹と俺と料理教室のマダム

 自宅の晩酌は適当だ。

 濃いめのハイボールに缶詰を用意。

 そして、アル中のおっさんが、カラカラ音を鳴らしているYoutubeを見ながら飲む。


 1人ボッチの家で、俺は掛けていないメガネをクイッとする……。


「実に味気ない」


 そんなことをするくらい、俺の暮らしは淋しいのだ。

 ふと自動再生で料理系Youtuberの動画が流れる。


 家で、うまい魚料理なんてできたら晩酌も充実するんだろうな。

 いいなぁ。いいなぁ。俺の気持ちは高ぶる。

 うぉぉぉぉ。魚さばきてぇぇぇよぉぉぉ。

 


 はぁ。とりあず、料理教室の体験に行くか。

 「さあ、検索を始めよう」

 


 料理の基礎から

 しっかり学べる料理教室

 まずは、体験レッスンへ

 - はじめての方限定 -

 通常4,400円相当が 特別価格

 

 550円!


 これだ! 500ml缶のビール2本分じゃないか。

 俺は早速、次の土曜日の午後のコースを予約する。


 Amazonで包丁や鍋やフライパンを一式揃えたい気持ちを抑えるのが大変だった。

 酔ったときのAmazonほど危ないものはない。


 前に酔ってポチった、携帯用浄水器。泥水まで透明になるコレ。


 多分一生使うことはないだろう……。


 ***

 

 土曜日。

 さぁ、待ちに待った料理教室だ! 充実した晩酌ライフが俺を待ってるぜ。

 期待に胸を弾ませて渋谷へと向かう。


 渋谷駅、宮益坂方面に、歩いて6分。

 おしゃれな打ちっぱなしコンクリート壁面のビルがそびえ立つ。

 

「あの、体験で予約した横島です」

「はい! お待ちしておりました。もうすぐ始まるので教室に入ってお待ち下さい」


 ついに始まる。ワクワクがとまらない。

 ハチャメチャが押し寄せてくる。


 先生が登場だ。軽く挨拶をすると、俺達生徒にグループになるよう指示を出す。

 

 同じグループには、1児のママさん、シンママさん、未亡人マダム。

 4人1組になり、簡単な自己紹介をする。


 ――男少なっ! 熟女多っ!


 俺、最年少だ。大人の女性に囲まれて料理をするのも悪くないぞ。

 きょうの料理は、高知の料理『ナスのたたき』


 ナスを切り、皮面を下にして揚げることできれいな色になる。

 7割方火が入ったら、網に上げて、予熱で火を入れる。

 大葉やら、生姜やら、ネギやら、ニンニクやら。

 とにかく、みじん切りを繰り返し、薬味を作る。


 「実に美味そうだ」


 実習開始!

 ナスに格子の飾り包丁をする。俺の拙い包丁さばきを横目で見て微笑む未亡人マダムのナオさん。その妖艶な雰囲気に俺の黒く光る長茄子が反応する。


 ――最近しばらく、ABCクッキングより自慰だったからなぁ。

 あぁ。料理教室楽しぃぃぃ。


 完成した料理を食べる時間がやってきた。

 俺の切った食材を美味しく調理してくれる熟女たち。


 不器用な手つきにあたふたする俺をみて


 「奏斗くん可愛い♥」


 なんて言われると、俺は熟女の魅力に目覚めてしまいそうだ。

 料理教室が終わり、名残惜しみながらも、同じグループの愛しき熟女たちとお別れの時間だ。


 1児のママさんも、シンママさんも、子供のお迎えに行く。

 未亡人マダムのナオさんは、お時間があるとのことで、お茶に誘われた。


 ***


 代官山のカフェに移動する。


 ――おしゃれなカフェだ。お酒も置いてあるじゃないか!


「わたくし、サングリア」

「では俺も、サングリアの白を」


 昼下がりにマダムとサングリア。

 ――おしゃれだ。


「ナオさんは彼氏とかいるんですか?」

「いないわよ。未亡人の熟女なんて誰が相手するのよ」


「奏斗くん、お相手してくれるの?うふふ」


 ははぁん! さみしいのですね。僕が穴埋めしてあげましょう!文字通り……。


 この股間の長茄子でなぁぁぁ

 ブラックロングエッグプラントォォォォ


 俺は、未亡人ナオさんの手を引き、恵比寿駅に向かって走る。

 さながらボニーとクライドだ。

 疾走、その表現がしっくりと来る、その勢いでラブなホテルに走り込む。


 

 はぁぁぁぁん♥ ナスのなすがままぁぁ〜!


 

 いたした


 

『美しさは女性の「武器」であり、装いは「知恵」であり、謙虚さは「エレガント」である。』

心のなかにココ・シャネルの言葉が響き渡る。


 

 薄れゆく意識の中、洗面所に向かうナオの気配。化粧を落としているのか。水道の音が心地よい。

 我は、今までにない賢者の時間を過ごし、まどろみの中に落ち、眠りについた。


 

 ――朝、初めての大人の女性に抱かれ、甘い雰囲気の中、目を覚ます。

 上目遣いでナオさんを見上げると、優しく微笑む梨紗がいた。

 


 ――梨紗?



 なぜ、生まれたままの姿の梨紗がいるんだ?


 「お義兄ちゃん! 熟女の魅力はいかがだったかしら」


 クソ! なんという特殊メイク! ちょっとだらしない体まで作り込んでやがったか!

 

「んがぁぁっぁぁぁ! またもや義妹を抱いてしまったぁぁぁぁぁ」

 


 今日も、家で晩酌だ。



 俺は、缶詰を開ける。

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