第13話 義妹と俺と1/3の鈍感な感情
左からモエ、ノゾミ、アヤカ。まるでアイドルグループのフロントメンバーみたいに、可愛い女の子たちが並んでいる。対面に座る、俺、関西(彼女持ち)、東北(既婚者)。男3人、女3人。まさに六芒星のバランスだ。
今、俺は、合コンの真っ最中だ。
東京、恵比寿駅の東口。線路沿いに少し登ると、おしゃれなこの店がある。まるで隠れ家みたいにひっそりとたたずんでいる。
いつまでも彼女ができない俺のために関西と東北が開催してくれたこの合コン。俺の人生の分岐点になるかもしれない大事なイベントだ。
俺にはわかる。モエ、ノゾミ、アヤカ。この中に1人、梨紗が紛れ込んでいる。まるで、マインスイーパーのように、俺は義妹を見つけ出して、避けないといけない。
「俺は関西! 彼女がいてます。ほんで、こっちは東北、最近結婚したんやで」
「えー。合コン来ていいんですかぁ?」
モエがびっくりしたように目を丸くする。
「俺らは浮気せえへんからええねん。今日はこの横島奏斗のための合コンや」
関西が俺の肩をガシッと掴む。
「え、えっと奏斗です。」
俺は緊張で声が裏返る。
「あかん! シラフモードや! 横島奏斗、はよ酒のみいな」
関西がグラスを差し出す。
「したっけ、乾杯すんべや!」
東北が大声で叫ぶ。
酒が入ると、体が熱を帯び、気分が高揚してくる。まるで、世界がピンク色に染まったかのように、眼前の3人の女が、より可愛く見えるのも酒の罪だ。
――冷静に見極めろ奏斗。この中に潜んだ義妹を。俺は心の中で自分に言い聞かせる。
「で、奏斗くんは今までどんな人と付き合ってたの?」
アヤカが俺を見つめる。
「実は、俺ね、義妹に童貞を奪われてさ……」
「なにそれ! ウケる。漫画じゃん」
ノゾミが大笑いする。
義妹の話を聞いた3人の反応を見る。犯人なら多少なりとも動揺するはずだ。
しかし、誰も動揺していない。本当にこの中に犯人がいるのか……。それとも動じていないだけなのか。俺は混乱する。
「義妹がさ、変装の天才でさ。行きずりの女と寝たはずが、朝起きると義妹なんだよ」
「待って待って、ツッコミどころ多すぎて草」
モエが笑いを堪えきれない様子だ。
「モエちゃん、ノゾミちゃん、アヤカちゃん。ちょっと立ってもらえる?」
俺は掛けていないメガネをクイッとする。
梨紗の身長は158cm。ヒールの高さを考慮して……。モエは怪しいな。俺はまるで探偵のように推理する。
「ありがとう」
俺は3人に礼を言う。
「なになに? 怖いんだけど」
「ごめんごめん。3人の中に義妹が紛れ込んでるんじゃないかって疑心暗鬼になってて」
俺は続ける。
「あっれれ? おかしいぞぉ! モエちゃん、君……俺の義妹だったりしない?」
俺はモエを指差す。
「ウケる! ちがうってば。コナン君」
モエが俺をからかう。
「ねぇねぇ、私達の中だったら誰が好み?」
ノゾミが俺に問いかける。
その言葉に俺の瞳孔が開く。義妹は、避けなければ。いや、むしろ全員選べば2人は義妹以外だ。俺は天才的な発想をする。
「みんな好き」
俺は即答する。
「奏斗くん、きっも!」
3人の女子が顔を嘲笑する。
「横島奏斗、きしょいねん」
関西が呆れたように言う。
くそぅ。可愛い子たちに罵られるのも悪くない。新しい自分の発見だ。まるで、Mの世界に目覚めたかのようだ。
東北が提案する。
「したっけ、二次会行ってみます?」
東北の提案に賛同する皆。まるで、新しい冒険の始まりのようだ。
二次会のシーシャバー。ふかふかのソファーに座ると、3人の女子に囲まれる。まるで、ハーレムの主人公になったかのような気分だ。
向かいの椅子には関西と東北。まるで、審判員のように俺を見つめている。
「そや、人間ってな、匂いで相性がわかるらしいで。横島奏斗、みんなの匂い嗅がしてもらいいな」関西が意味深な笑みを浮かべる。
「関西くん、それは名案ですね!」
――クンカクンカ。すんすん。俺はモエの首筋に鼻を近づける。
――クンカクンカ。すんすんすん。次はノゾミの髪の毛に鼻を埋める。
――クンカクンカ。すんすんすんすん。最後はアヤカの耳の裏を嗅ぐ。
「あふん! 皆いいフレーバーだ。シーシャなんて、
俺は叫ぶ。
まるで、犬のように女の子たちの匂いを嗅ぎまくる俺。これは合コンなのか、それともプレイなのか、俺自身よくわからなくなってきた。
「で、義妹が誰かわかった?」
モエが俺に聞く。
「ふふふ。わらかぬ!」
「なんで自信満々やねん」
関西のツッコミをスルーして、女の子たちに提案する。
「モエ、ノゾミ、アヤカ。明日、明後日、明々後日と1人ずつ俺とデートしてくれないか」
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