第1章
私と相樂悠との関係は、高校の二年の夏頃から始まりました(この小説を読むのはどうせ私の限られた友人しかいないはずなので相樂悠にいちいち説明をつけなくてもよいと筆者は勝手に思っております)。元々彼女と私はクラスが別々だったので顔を合わせる機会はそう頻繁にはありませんでした。しかし、私がある日を境に彼女に一目ぼれをしてしまい(このある日については後から丁寧に説明します。)、その日以降彼女のことを考えない日はありませんでした。元が恋愛知らずの初心なものですから余計に質が悪い。彼女は私の顔も名前も知らないのに自分は彼女の事ばかりを昼も夜もそれこそ授業中だって考えてしまう。教室を通り過ぎる際に横目でチラリと確認して彼女の姿を眼に捉えられた日はどれほど幸福だったでしょう。私はその刹那の体験を味わえただけで学校に来た意義を感じることができたのです。反対にいつもと同じように、教室をチラリと覗いた先で彼女とクラスの男子が会話をしているのを見た刹那、私は身もだえする様な苦しみを味わうのです。思わず脇に抱えていた生物の教科書を床に投げつけてやりたくなりました。これがもし、彼女に彼氏がいると知った場合でしたら想像がつきませんね。実際私が一年の時、彼女には交際をしている彼がいました。これ以上嫉妬話につき合わせるのも恐縮なのですがもう少し我慢して聞いてください。それで、面倒だったのはその時彼女と交際していた彼氏が私と同じクラスだったのです。私はそれはそれは幸せでした。だって、毎日のように愛しの彼女が私の目前に姿を現すのですから。ですがそれも束の間で、彼女の向かう先は私ではなく愛しのダーリンという具合でした。何度彼氏に向かってシャーペンを投げてやろうか思案したかわかりません。私は当時野球部だったので投げることは得意としていました。それはボールに限らずです。何も難しいことはありません。要はダーツです。形が酷似しています、狙いを定めて彼の頭めがけてペンを放るのです。ですが彼女に命中しては一大事なので慎重にならなければなりません、と、こんな具合に阿保な事ばかりを憎き恋敵と女神の目前でぼんやりと想像していたのでした。
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