痴恋

翠 颯太

はしがき

 男女間の関係ほど難解なものはない。私は事あるごとにそう考えます。それはうわごとなどでは決してなく、私の実体験に基づく経験則なのです。これから記すのは、私が中学生から大学生にかけて付き合った女性との関係について少し事細かに書かれた記録のようなものであります。なぜこんなものを書くのか、実は去年の冬に、私は高校の時からお付き合いしていた女性とお別れをしたばかりでして。これの執筆を始めたのが今年の一月、女性との離恋を経て一か月足らずでこんなものを書いている男の心情が読者の皆様には理解しがたいと思われます。それは十分承知の上です。しかし、この女性との恋愛が私の人生上初めてのもの、所謂「初恋」でありまして、それをあったのか、なかったのか曖昧なものにしてしまうよりかは、ここに明確に私が恋をしていた青春の記録として残しておくのがよいと考えたのです。また、この書き物を通して皆さんに問うてみたいこともあった為です。それは、彼女と別れて一か月も経たないうちに新しく彼女を作る男はやはり悪なのでしょうか、ということです。別れてから毎晩夜遊びしている男よりははるかに誠実であると私は感じるのですが。世間ではこの二種類の男が同一視されているようです。この問題についても読者の皆さんはこの先の文を読み進めていただく中で頭の片隅に一片ほどでもよいので仕舞っておいてほしいのです。

 これから先の恋物語は嘘偽りのない恋愛未経験の初心な少年の記録になりますので、書くのに小恥ずかしいことや読者の皆様を不快にさせてしまう内容が多々あると思われます。ですがそれも恋の味というものでありますので、どうか辛抱強くお付き合いしていただけたら幸いです。

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