第9話 交差する色彩。
「いやあぁぁぁーーーーーーーーーーー‼ ここ どこぉーーーーーーーーーーー⁈」
身長が 2m近くは ありそうな体格の良い男前の顔 橙色の甚平は 前が はだけてしまっていた。
足は 裸足で 素足に 赤色の紐の下駄を 履いていた。
無造作に ハーフアップで束ねられた金髪のミディアムな髪 バサッと下りた前髪の大きな男が 真っ白な雲の上に ポツンと立って絶叫していた。
「なによ?これ?どう言うこと⁈ 」金髪の男は 体格に似合わず1人で おろおろしていた。
「え?ってか あたし 誰ーーーーーーーーーーーー?え?あたし なんで 何も覚えていないのよ?」大きな声の独り言は そこら中に 響き渡っていた。
「なによ?これ。どうなってんのよぉーーーーーーーーーーー?あたし なんで こんなところにいるの?どこーーーーーーー?ここ どこぉーーーーーーー⁈」金髪の男は 声も枯れ枯れに キョロキョロと周りを見渡しながら 叫んでいた。
「なんで 誰も いないのよう?みんな どこに 行ったのよぉう?」と 叫んだ後「え?みんな……?みんなって 誰……?」金髪の男は 親指の爪を噛み 考え込んだ。
「え?あたし 誰かと一緒にいた……?」今度は 呟くような小さな小さな声だった。
金髪の男は 深呼吸して 一呼吸おいた後 また 叫び出した。
「誰かーーーーーーーーーー?誰か いないのぉぉぉぉぉぉぉぉ?あたしを ひとりぼっちにしないでよう。みんな 出て来てよう。かくれんぼしてないで 出て来てよう。あたしの負けで いいから!みんな 早く出て来てよう。」両手を 口元の横において 少しでも 遠くに聞こえるように 大きな声を出した。
「みんなーーー!どこーーーーー?どこに いるのーーーーーーーー⁈」金髪の男は たまらず駆け出していた。
居ても立っても 居られなかった。どっちの方向に 進んでいるのかも わからず ただ ひたすら「どこに いるのぉーーー⁈どこーーーーー⁈」と 言いながら 走り続けた。
息も切れ切れになり「はぁはぁ……。ちょっと 休憩……。」金髪の男は 膝に手を置き 息を整えた。
深呼吸を繰り返しながら 身体を起こすと 遥か彼方を 飛んでいる白いものが 目に入った。
「いた‼ やっと 見つけたわぁー!みんなーーーーー!ここよーーーーー‼ 」金髪の男は 手を振りながら また 走り出した。
「……た。…………ぁー。……こ…………よーーーーー。」遠くから 声が聞こえた。
白龍に跨った
(遠くに 誰か おるのう……。)白龍は 声の聞こえる方向へ 身体を回転させた。
「
「やっと 見つけたぁぁぁぁぁん。もぉう ずっと 1人だったのよぉう。」大きな金髪の男が「ここーーー!ここよぉーーーーー‼ 」雲の上で 大きく手を振っていた。
「泣いては いないけど 桜みたいな人いたね。随分とキャラが 濃そうだけど。」クスクス笑いながら
「
「うん。お姉さんで いいと思うよ。」
白龍は 大きな金髪の男のいる場所より かなり手前で スッと雲の上に下りた。
(迎えに 行って来るといい。わしは ここで待っておるからのう。)そう言って 白龍は 目を閉じた。
もうちょっと 向こうで 降ろしてくれても いいのにと
「いやぁぁぁぁぁぁん。良かったぁ。やっと 誰かいたぁぁぁ。」金髪の大きな男は 身体を くねくねさせながら 大きな声で 駆け寄って来た。
「で?あなた達は 誰なのぉ?」
「いや。それ こっちが 聞きたい。」
「え?あたし?いやぁぁぁぁぁぁん。それが 自分でも わからないのよう。」大きな金髪の男が 両手を組んで 腕を持ち 自分を抱きしめていた。
「お姉さん?(声も 背も)大きいのね……?」
「そうなのよう。背だけ にょきにょき伸びちゃってぇ 困ってんのよう。」金髪の男は 笑顔で 手を左右に ひらひらと振っていた。
「なるほど。私達と一緒か……。」
「ん?一緒ってぇ?何がぁ?」金髪の男性は 不思議そうに聞いた。
「私達も 自分が 誰なのか わからないんだ。」
「あらん。そうだったのぉ……。でも 一緒なら 安心だわ。」大きな金髪の男は 頷きながら また手を ひらひらと 振っている。
「じゃあ 桜。この人にも 名前を 付けよう?この人の服の色は 黄色?橙色?オレンジ色か?」
「この人?この人ですってぇー?せめて『この子』にして ちょうだい!」金髪の男は
「わかった。わかった。ちょっと待って。今 桜が 名前を 付けてくれるから。」
桜は その間 大きな金髪の男を 上から下まで 眺めていた。
「琥珀。この色は 琥珀色。」桜は きっぱりと言った。
「へぇー!この色は 琥珀色なのか。」
「そうなの……。とても 綺麗な色よね。」桜は うっとりしながら 琥珀の甚平を 眺めている。
「んまぁ。あたしのこと綺麗って 照れちゃうわぁん。」琥珀は 両手で頬を挟んで 身体をくねくねさせた。
いやいやいやいやいやいや。誰も 言ってない。
「私は
「みんな 自分が 誰か わからないの。でも……でも 呼び名がないと 困るでしょ?だからね 桜が 着ている服の色で 名前を付けてあげてるの。どう?琥珀は 気に入った?」桜は にっこりしながら 琥珀を 見上げた。
「そうねぇ……。」琥珀は 人差し指を 顎に当て 上を向いて 考えた後「嫌いじゃないわ。」桜に 向かって にっこりと微笑んだ。
そして 琥珀は 膝を付いて屈んで 桜を持ち上げ 左肩に乗せて 左手で落ちないように そっと支えた。
「ありがとう。桜ちゃん。あたしに 名前をくれて……嬉しいわぁん。」琥珀の頬が 少し赤くなったように 見えた。
「キャーーーッ。怖い‼ 高いって!オネェ……琥珀さん!」桜は 琥珀の頭に 必死で しがみついた。
「じゃ みんなで
「ん?
「
「龍ーーー⁈いやぁぁぁぁぁぁぁ。龍 怖いーーーーーーー‼ 」琥珀は 絶叫しながら 内股になり じたばたした。
ああ だから
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」琥珀は 絶叫を続けていた。
「琥珀さん 大丈夫だから 桜も いるから‼
「ってか 琥珀 うるせぇ!」
(ふぉふぉふぉ。楽しくなって来たのう。)白龍は 心底 面白がって笑った。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。龍が しゃべったぁぁぁ。」桜は 絶叫する琥珀の肩の上で 耳を塞いでいた。
(愉快。愉快。ふぉふぉふぉ。)
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」琥珀の声が 雲の上で 響き渡っていた。
「まじで 琥珀 うるせぇ……。
(ふぉふぉふぉ。わしの耳元で 騒がれたくないからのう。騒ぐのは 今のうちだけじゃぞ?うるさいやつは 振り落とすからのう。ふぉふぉふぉ。)白龍は きりっとした顔で 笑って言った。
「琥珀さん もう少し小さな声で ね?ね?でないと 桜達 落とされちゃうから!ね……?」桜は 一生懸命 琥珀を説き伏せた。
「本当に……?本当に 大丈夫なのぉ?」琥珀は 声のトーンを落としながら チラッと白龍を見た。
「うんうん。本当に優しいよ。大丈夫だよ。」桜は コクコクと何度も 頷いた。
「
「わかった……。もう1人は 嫌なの……。みんなと一緒に いたいから 大人しくするわ。」琥珀は 空いていた右手で 自分を落ち着かせるように 胸をギュッと 拳で抑えた。
2人のやりとりを見ていた
「いやよぉ。あたし 食べられたくない!」琥珀は 左右に首を振りながら 今にも 泣きそうな顔になった。
「
「ごめんごめん。余計なこと 言っちゃったっぽいね。」
「それに 桜 自分で歩けるよ?琥珀さん 降ろしてくれない?」桜は 琥珀に頼んだ。
「ダメよぉう。桜ちゃんみたいな 小さい子は あたしが 連れて行くの。」琥珀は 首を ブンブンと横に振った。
「琥珀さん?桜 子供じゃないのよ?」桜は 脅すように 目を細めて 目一杯低い声を 出した。
「知ってるよ。ただ 不安……なんだよ。急に 知らないところにいて ここが どこかもわからなくて……自分が 誰かもわからなくて……。色んなことが 起こり過ぎてて 怖いんだ……。だから 桜ちゃん 肩に乗ってて……?側にいてくれると……助かる……。」琥珀は 立ち止まって 下を向いたまま 小さな声で話した。
琥珀が 本音を言う時は 男性になるのか……面白いな……見た目は 自分より10歳ほど 年上に見えるのに 少年のような琥珀の呟きを
「わかった。桜 ここにいるね。それに 琥珀さん 背が高いから 遠くまで見えるし。本当は ちょっと気に入ってたの。」桜も 一瞬びっくりしたけれど 琥珀に気付かれないように 慌てて にっこりと笑った。
琥珀は 下を向いて 目を瞑り 少しだけ微笑んだ。
琥珀は スッと顔を上げると 元のテンションに 戻っていた。
「だってぇ 本当は 桜ちゃんを ぎゅーって抱っこしたいんだけどぉ ほら。あたしって 見た目が 男じゃなぁい?気持ち悪いかと思ってぇ 肩に乗せてるのよう。」琥珀は また手を左右に ひらひらさせながら 笑った。
「えーーーーー⁈ 抱っこは 桜も ちょっとやだなぁ……。」桜は ケラケラ笑った。
「桜!飽きたら 私が 代わりに乗るよ。その時は 言って?」
「いやぁよう。
「なんだとぉぉぉぉぉ。琥珀ーーーーー‼ 」
「
「
「キーーーーーーーーーッ‼ 私は 食えないぞ?うん。そうだ。やっぱり
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」琥珀の絶叫が また雲の上で 響き渡った。
今回の絶叫は たくさんの笑い声も 一緒に 響き渡って行った。
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