第2話 運とは
お互い名前も知らなければ、住んでる場所も知らないパチンコ店で出会った間違いなく年金貰ってる年代の腰が曲がり膝が悪く足を引きずりながら歩いてるおじさん。
兄ちゃんとおじさん(心の中では、引き神様)と呼び合い、お互い素性も名前も何も知らないけど、その関係は私はとても居心地が良いです。
散歩コースにパチンコ店が入ったことでおじさんに挨拶する様になりました。
必ず挨拶すると「コーヒー買ってこい」と私の分を含めたお金を渡してきて、最初は遠慮して要らないと言っていたのですが買ってきてしまうので今は、遠慮なくご馳走になってます。
たまに、買って渡したりももしますがその倍飲み物が返ってきます。
付き合いが短いのもありますが、おじさんは基本的にスロットは、番長か北斗、パチンコは、海物語か北斗しか打ってる所を見ません。
スロットでは、自分が引けない時と目押しが出来ない時だけ呼ばれます。
「弁当揃えてくれ。チェリー揃えてくれ。」ボーナス図柄以外の時も呼ばれます。
自分で小役を揃える時と呼ばれる時があります。
毎回では無いので、私は頼まれたら断らないで揃えます。
ボーナスは当たってないと揃わない時もあるのでその時は
「なんだ。兄ちゃんでもダメか」
としょんぼりします。
レバーを叩いた時点で決まってるんだよと言っても聞いてくれないので諦めました。
ある金曜日、スマホの充電が無くなりパチンコ店に寄った時、おじさんはいつもの番長を打っていました。
挨拶しておじさんの隣の台が空いていたのでスマホの充電準備をしていたらおじいさんが、
「俺は平日しか来ないから明日と明後日はおらん。」と言いました。
へーそうなんだと思ってたのですが、とりあえず「なんで?」と聞いてみました。
するとおじさんは、「競馬があるから」と言いました。
この人、根っからのギャンブラーだなと思いました。
話を聞くとむしろ競馬の方がメインだそうです。
私は競馬に疎くたまに有馬記念に適当な数字を買うくらいで何も分かりませんし、当たりません。
馬の名前を出して話されたのですが、さっぱり分かりませんでした。
要は系統が重要らしいです。
私は「今度、自信のあるとき教えて。のるから」と伝えました。
その日は特に何も無くおじさんも勝ってる様子もなく終わりました。
そして次の日の朝、またスマホの充電を忘れて散歩にでた私はいつもより早くパチンコ店に入ると、いつもの番長におじさんが座ってました。
この人嘘つきです。
昨日の今日でいます。
絶対昨日負けたから来たんだ。
びっくりです。
おじさんに近づいて行くとこちらに気づきニカッと笑って
「今日は出る気がした」と言いました。
しかし、見た感じ出てません。
私は「おじさん出てないよ」
と言うとおじさんは、
「死ぬ気で回すから見てろ」と回し始めました。
その年齢で死ぬ気で回すと言われても、死んじゃうんじゃないかと思いながら、しばらく私もスロットを打っているとおじさんが来て、
「兄ちゃん7揃えてくれ」と頼みに来ました。
揃えに行くと、おじさんの台は天井での当たりで、スランプグラフは1500枚ほど凹んでました。
私は「この台これから出るの?」と聞くとおじさんは、
「見てろ、パンダの野郎ぶっ飛ばしてやる」と回し始めました。
番長の台には演出のキャラクターがいるのですが、大きいパンダはパンダの野郎と呼び小さいパンダは子パンダ、マチコ先生は、女と呼びます。謎です。
それからしばらくして、見に行くとおじさんは2箱積んでました。
おじさんがタバコ吸いに行くというので一緒にタバコを吸いに行きました。
喫煙所でなんで途中で辞めなかったの?と質問すると、
「当てたあと、当たる時はとことん当たる。当たらない時はとことん当たらん。そん時はすぐ辞める。運はそんなもんだ。今日はとことん当たる時だ。」と言いました。
私は、「なるほど意味わからん。」と伝えると、おじさんは、
「1度当ててダメそうな気がしたらダメだ。辞めろ。行けそうなら天井まで死ぬ気で回せ。」と謎理論で立ち回ってます。
おじさんには、設定と言う概念がありません。1だろうが6だろうが関係ないようです。
そう言うのは引きが強い人だけなんじゃないかと思いましたがとりあえず納得してしばらくして、私は帰ろうと思っておじさんに挨拶行くと5箱積んでました。
挨拶するとおじいさんは、
「明日はおらん。」と言って私は、さすがに今日は買ってるし居ないかと思いながらも翌日夕方前にパチンコ店に行くとおじさんがスマスロ花の慶次で8000枚だしてました。
やっぱりこのおじいさん嘘つきです。
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