#14 陪席者
千里の道も一歩から──
何事も地道に一歩ずつというのが日本の美徳でもあり、現実的な定説でもある
しかし往々にして人生では何かの切っ掛けで物事がドラスティックに動き出す
望んでか望まずかに関わらず
目の前でリアルタイムに起きている事実が正にそれだ
アニメ関連の業界人である箕浦さんに連れられて入った建物
その建物の醸し出す物々しい出で立ちと大日本帝國アニメ協会の表札
そして今、上座に座り挨拶をする烏山を名乗る当協会会長──
それってたぶん……あれだ、あの烏山さんだ……本物の
アニメを知らない人でも彼の名は認知しているであろう、SSR級の超大物で大御所の漫画家、烏山晶
事実は小説よりも奇なり──
烏山「じゃあ順々に行こうか、次岡口くん」
岡口「はい、ご紹介に預かりました㈱KADOONAの岡口です。 本日は当協会理事を務める弊社秋野の代理を兼ねて出席させて頂きました」
㈱KADOONA 取締役 岡口俊夫
発起人箕浦の上席 協会会員の筆頭である㈱KADOONAより選任
協会会員を代表しての出席
ダン飯「㈱MCFの代表をしております飯塚です。 箕浦さんにお声掛け頂き出席させて頂きました。 どうぞ宜しくお願い致します」
㈱MCF CEO ダニエル飯塚 通称『ダン飯』
投資家としても知られ、金融経済アナリストとしてTVコメンテーターも務める
代表を務める会社はファンドの他、メディア関連の事業等、幅広く行っている
キリヤ「キリヤです。 個人で活動しています。 同じく箕浦さんにお誘い頂きました」
インフルエンサー キリヤ 主にYouTuber及びWeb全般で活動している
執筆中の書籍の編集担当が箕浦
そして──
サトシ「…………」
やべえ……何を言っていいか分からん……言葉が出ない
沈黙と視線が痛い
箕浦「㈱KADOONAの箕浦です。 基本的に社内では編集しておりますが、本日はその枠を一歩超えて皆様にお声掛けさせて頂きました。 ご賛同、ご出席頂き本当に感謝しております」
沈黙を察してか、箕浦さんが淹れた茶を配りながら先に挨拶してくれた
箕浦「で、こちらが本件発案者のサトシさんです。 恐らく皆様は初対面だと……あ、キリヤさんは面識ありましたかね」
キリヤ「……いえ、ありません」
箕浦「はは、ではサトシさんも簡単にご挨拶宜しくお願いします」
サトシ「……え、あ……えーと、サトシです。 会社員です」
箕浦「サトシさん、本件との繋がりを」
サトシ「……えーと、言い出しっぺ? かな? です」
一同「…………」
烏山「サトシさん……君ね、各企業のいい大人が君発案の話の為に休日割いて集まってるんだよ? 言い出しっぺなんてそんな無責任な言い方は困るよ。 発案者なら発案者として凛と構えてくれなきゃ」
サトシ「すみませんでした、改めまして本件発案に携わらせて頂きましたサトシです。本日はどうぞ宜しくお願い申し上げます」
もう頭がパニックだった
だが条件反射的にその場を取り繕う程度の言葉は発する事ができた
烏山さんの𠮟咤で、飛びそうだった気を持ち直す事ができたが、錚々たる面々に完全に萎縮してしまっていた
しかもあのキリヤまでいたとは……
自分の席に着き、こちらにてへぺろしてる箕浦さんが憎い
あの人、気さくで良い人だとばかり思っていたが、とんだ食わせ者だ!
サプライズの使い方絶対間違ってるだろ!!
烏山「じゃあ茶も入ったので本題について進めていきましょうか」
烏山「進行は箕浦くんで良かったかな?」
箕浦「はい、概要につきましては既にお話させて頂いた通りで御座います。 及び、手元資料、先に送付させて頂いたものになります。」
箕浦「ではまず本件の背景から──」
箕浦「今日、ほぼ日本の独占的な市場となっている、日本アニメという特殊な枠ではありますが、海外での人気の高まりに比例して昨今、海外からの参入も目に付くようになりました。 日頃国内でしのぎを削っている我らですが、今後より市場が大きくなれば出る杭はより目を引き、より多くの参入や弊害に直面する事は想像に難くありません。 海外の類似産業や企業、団体からの規制や圧力、買収もあるでしょう。 さすれば日本勢にとっての市場の牌は、いずれ減少を余儀なくされ、より厳しい状況に晒されることは歴史を見れば明らかです。 しいては日本の成長産業を衰退させる事となり、国益をも損ねる事態を招きかねません。 この問題に立ち向かうにはいち企業でどうこうできる話ではなく、アニメ関係者だけでどうこうなる話でもありません。 つきましては当協会に主導頂きたく、差し当たり当方に所縁のある各分野の有識者の方々にお時間を頂き、問題提起とさせて頂いた次第です。 尚、本件はサトシさんの発案を元に作成、発起しております」
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