#12 日本アニメの未来

サトシ「─────────────────────────────────です」


箕浦「……なるほど」


一方的に話してしまっているけど大丈夫かな……


箕浦「キリヤさんが仰る意味が何となく分かりました」


サトシ「え、何のエビデンスもない与太話を延々する厨二病の痛い奴って話ですか? 嫌だなあそれ、勘弁して下さい……」


箕浦「ははは、冗談ですよ……ただね、自分業界の中の人でしょ、その位置から見るとあながち与太話でもない気もするな……」


サトシ「ありがとうございます、正直話聞いて頂いただけでも嬉しいです。 こういった話する相手いなかったですし、居酒屋トークする機会もめっきりでしたので」


箕浦「……何点か突っ込んだ質問しても良いですか?」


サトシ「勿論です、どうぞ」


箕浦「何故日本アニメの未来をそう考えるに至ったのでしょう?」


サトシ「現状、日本国内でひしめき合っていて、ブラッシュアップされた一部が世界に波及してる状況ですよね。 しかしこれを世界の盤上で見た時、光景は異なると思うんです。 国内か海外かの二択ではなく、実際には世界各国見方も考え方も様々ですよね。 そこから客観的に見た時に、『良い作品ができた、人気が出た』と満足してしまうと、その先に待ち受ける未来は危険だと思うのです、進み続けないと。 地球上にあるのは日本だけではないし、日本中心に回っている訳でもない。 各国皆、自分達中心に考え、その位置からの視点で日本アニメも見ているので、日本人の思っている日本アニメとは捉え方が根本的に違うと思うからです」


箕浦「具体的には?」


サトシ「例えばブランド果物、日本の農家が膨大な時間とお金と労力を費やして開発した作物をあっさり盗み、模倣し、自国産と称して未開の市場へやりたい放題販売されてますよね? 『美味しいのができた』で満足し、国外のマーケティングや法整備等を怠った故の財産の流失と言えると思うのです。 各国へ目を向ければ、中国は破格に安い人件費と人海戦術で技術さえ入手すれば無尽蔵に製造し、その物量と価格で市場を席巻します。 現にアメリカでは規制する動きも見られ、中国ウイグルの下請けを使ったユニクロ製品も人権問題を理由に規制を受けた事がありました。 日本の白物家電も安価な中国メーカーに市場を取って代わられました。 同盟国アメリカでも日本車が急成長した際には不買運動が起こり、ヨーロッパではガソリン車を規制し環境問題と理由をつけてEV100%へと舵を切りましたが、実際には日本のハイブリッド車対策に他なりません。 アメリカでは既にポリコレを理由に日本アニメを叩く論調が見受けられます。 彼らの言う白人と黒人の問題など、アメリカやアフリカ系移民の多いヨーロッパの話であって、日本や他国では状況が異なるにも関わらずです。 世界にはアジア系やアフリカ系、ラテン系、ポリネシアン等、他にも民族はおり、登場人物の人種など言いだしたら創作の自由など無くなってしまいます。 


いずれも理由など自国利益又は政治的な既得権益を優先した上での後付けに過ぎず、同じ事が日本のアニメ産業に向かないとは限りません。 今日の円安を考えれば青田買い的な買収の思惑を既に持っている可能性も十分あり得るかと思います」


箕浦「……なるほど」


箕浦「じゃあネットの話は?」


サトシ「主に広告のあり方についてになります。 元々広告の有用性はどれだけ多くの人目につくかであったと思います。 日本ではかつて人通りの多い銀座の看板の単価が最も高価でしたが、それがTV広告に取って代わり、今やネット広告が主流になりつつありますよね。 ネット広告は不特定多数ではなく、興味のありそうな特定層へのアプローチが可能で有用性が高く、単価も1件毎と安価なものも多いです。 特定のSNSチャンネルに依頼する所謂やステマ等、派生も多岐に渡ります。 アニメでも公式垢を見るとPRの手法が各作品異なっていて興味深いです。 しかし、ここまではweb2.0と呼ばれる世界観の中での話で、世間で言われているweb3.0への移行期である現在及びその先の未来はより多様化し、現在とは異なる手法が可能だと思うのです」


箕浦「ふむふむ……」


箕浦「……サトシさん、金融業界勤務じゃないのですよね。 お金の話はどこから出てきたのでしょうか?」


サトシ「自分は旅が好きなのですが、海外では保険として必ず米ドルを持ち歩く様にしています。 米ドルならどこでも換金できるからです。 世界は貨幣制度で動いていて、中でも米ドルを基準に回っているのは間違いありません。 米ドルが世界経済の中心となったのは、原油の取引決済に米ドルを採用したからだと言われています。 流通量と通貨の価値は比例します。 今日までの人類の活動に不可欠であった原油の売買を掌握した事で米ドルの流通量は増大し、今日の確固たる位置を築きました。 現にアメリカと経済闘争の只中である中国は産油国に働きかけ、原油の中国元決済での取引を可能としました。 そして時を同じくして、世界初の国家発行のデジタル法定通貨、デジタル人民元を正式に発表しました。 これらの意図するところは明らかです」


サトシ「……すみません、話長いですよね。 眠気誘ってしまいましたか?」


箕浦「…………え? あ、大丈夫です起きてますよ。 ところで、サトシさん最近週末は何してますか?」


サトシ「へ? ……基本暇してます、アニメ観たりとか?」


箕浦「なるほどですね……やっぱキリトさんが言う通りですね、サトシさん変わってます」


サトシ「うう……そんな」


箕浦「ほら、私変わった人好きですから」


サトシ「フォローになってませんよ」

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