第28話 待ち合わせ

水族館の最寄り駅で待ち合わせをしたのは失敗だったかもしれない。


土曜日ということもあってか、駅前は大勢の人で賑わっていた。

待ち合わせの定番とも言えるインフォメーションの近くには、一目で誰かを待っているとわかる人が大勢いる。


その中に上椙さんをようやく見つけて、近寄ろうとしたら、先にひとりの女性が近づいて行った。最初、知っている人なのかと思っていたら、どうやらそうでもないようだった。

それでようやく気がついた。逆ナンされてるのだと。

その間に割って入って行くこともできず、しばらく待っていると、上椙さんの方がわたしに気がついて、こっちに向かって来た。

さっきまで上椙さんに話しかけていた女の人が恨めしそうな顔で見ている。


「声をかけてくれればいいのに」

「女の人と話してたから」

「店の場所を聞かれただけだよ」

「嘘つき。インフォメーションの前でお店の場所なんて聞かないと思うけど?」


上椙さんは嘘がバレたことを楽しそうに笑った。


「何か一方的に話してたみたいだけど、聞いていなかったから」


この人が本気で嘘をついたら、わたしには見破れないかもしれない。


「何?」

「何でもない」

「この水族館、館内をペンギンが散歩するって」

「それ、見てみたい」

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