第25話 かわいい

<かわいい館山さんと飲みに行くのが楽しみです>


飲みに行こうと誘われた日の前日、上椙さんからきたメッセージに、スマホを見つめて困惑してしまった。

かわいい?

かわいいわたし?

かわいい服装のわたし?


聞き返すこともできず、後者の意味とみなして、白の袖コンニットに花柄のフレアスカートを合わせて、長い髪の毛を低めのポニーにしてみた。

誰かと出かける時にはしないような格好。

これを「かわいい」と思うかどうかは個人の好みの問題だけど、こんなふうに服を考えたり、髪型を気にしたりするのはいつ以来なのかも思い出せない。



家を出る時、玄関の鏡に写った自分が楽しんでいるように見えた。


もっと無難な白のブラウスに無地のスカートにするべきなんじゃないの?

髪型だって、いつもみたいにそのままで。


そんな心の声に、蓋をした。


その日は朝から、緊張してしまって、上椙さん見ることができなかった。

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