第26話 本気?

どこに行くのかと思っていたら、小さな居酒屋に案内された。


お店の中は年配の男性客で賑わっていて、テーブル席は既に埋まっている。空いているカウンターに座ると、女将さんと思われる女性が驚いた声を出した。


「上椙くん、女の子連れなんて初めてじゃない?」

「彼女なんです。夕美さんに紹介しようと思って」


思わず顔を見てしまう。

上椙さんは、そんなわたしに気がついて、小声で「短い間でも彼女でしょ」と言った。


「まぁ! デートにこんな店なんて! もっとおしゃれな所に連れてってあげなさいよ!」

「お酒が好きっていうから」

「上椙くんは常連さんなんだけど、こんなきれいな彼女がいたなんて初めて知ったわ」


夕美さんが笑顔を見せてくれたので、会釈した。


「じゃあ、おすすめと、あと適当に出して」


上椙さんが夕美さんと会話をしている間に、テーブルに置かれていた飲み物のメニューを見ると、お酒の種類がたくさん書いてある。


「これは、迷うかも」

「真剣にメニュー見ているところもかわいい」

「お酒も飲んでいないのに、さらっとそういうこと言う人だったんですね」


上椙さんは返事の代わりに笑った。


「丈径にします」

「僕も同じのにしよう」



お酒を飲むわたしに、上椙さんは終始笑顔だった。


「楽しそうに飲むね。お酒、本当に好きなんだ」

「はい」

「飲めないフリとかしないの?」

「好きなものを一生隠し通すなんて無理でしょ? 可愛げがない?」

「いや。そういう正直なところも興味深い」

「それ……どういう意味に受け止めたらいいの?」

「そのままの意味で」


本気なのか、ふざけているのか……

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