第19話 相談

会社を出てから、スマホでそのURLを開くと、お店のHPが表示された。駅西にあるお店だった。




こういう時に相談する友達がいない。


元々決まっていた内定を蹴った挙句に、両親の反対を押し切ってこっちで就職して以来、親とも、地元の友達とも連絡をとっていない。


唯一の友達のマキちゃんは、上椙さんが旦那さんと友達だからというのもあって、上椙さんと仲が良いから話にくい。



いつも、たわいのないやり取りしかしたことのない人のことが頭をよぎった。


どうしよう……


これまでの、かっちゃんとのやり取りをスクロールしながら考えた。


相談してみようか?

でもこんなこといきなり……


一番古いところまで遡ったところで、手を止めた。

最初の頃のメッセージ。

『知らない相手の方が話しやすいことありませんか?』


そうなのかもしれない。


一番最近のやりとりは、一昨日送ったもので、『明太子パスタを作りました』『隠し味はめんつゆです』『紫蘇は外せませんね』といったやり取りだった。

その下に新しくメッセージを書き込んだ。


<相談してもいいですか?>

<何でしょう?>


いつも通り早い返信だった。

今まで聞いたことなかったけれど、一体何をしている人なんだろう?


<会社の人に飲みに誘われたのを 土壇場で断るにはどうしたらいいと思いますか?>

<断る前提なんですか? どうしよう? じゃなくて?>

<はい>

<なぜ?>

<どういう意味ですか?>

<なぜ断るのですか?>

<その人 彼女がいるからです>

<いつ聞きましたか?>

<1年前くらい>

<今もいるとは限りませんよ>


それは、考えていなかった。

でも、例え彼女がいなくても……


<彼女がいなくても やっぱり断りたいです>

<彼女がいたらすぐに帰ればいい つまらなかったら二度と行かなければいい ずっと今のままでいいんですか?>

<今のままって?>

<何かを変えたいとは思わないのですか?>


誘いを断ることしか考えてなかった。

「行く」という選択肢はわたしの中になかった。


<お酒を飲むだけでしょ?>


普通にお酒を飲むだけ。

誰かを好きになるわけじゃない。


<行ってらっしゃい 僕は仕事に戻ります>

<ありがとうございます>


最後のメッセージには既読がついただけだった。

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