第16話 振り向かないで
いつも同じ夢を見る。
後ろから女性に呼び止められる。
「あなたが雄介の相手?」
冷たい、氷のような声で。
そのまま無視して逃げれば良いのに、走って行ってしまえば良いのに、振り返る。
だから、その人の顔を見てしまう。
「佑香ちゃん、あなただったの……」
悲しそうな顔でわたしを見るその人は……
わたしが傷つけたその人は……
何度も会ったことのある人。
親友のお姉さん。
「二度と彼とは会わないと約束して」
その瞳に涙をためて、彼女はわたしを睨む。
何を言っても言い訳にしかならない。
わたしが傷つけてしまったことに変わりはない。
「どこかへ消えてしまって! この先、幸せになろうなんて思わないでよ! あなたのせいで――」
最後の言葉を聞く前に目が覚める。
優しい人に、ひどい言葉を言わせてしまう。
夢の中の自分に何度も「振り向かないで」と叫ぶけれど、わたしは振り向いてしまう。そして、自分に向けられたその顔を、その言葉を、何度も胸に刻みつける。
ついこの間、もう前に進んでもいいんだと言われてるような、そんな気がしたばかりだったけれど、やっぱり許されないんだな、って思い知らされる。
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