第13話 新しい人
「おはようございます」
「おはよう」
席に着いたところで、隣の席の大西くんがイスを寄せてきた。
「館山さん、課長と一緒にいる子誰だか知ってます?」
課長の方を見ると、知らない女の子と、その隣に男性がいて、何か話をしている。
「女の子の方は知らないけど、その横の男の人は派遣会社の人」
「あ、じゃあもしかして……」
「何?」
「小山内さん、家庭の事情って、結構長く休んでるじゃないですか? 代わりの人とか?」
「考えられるかも」
派遣で来ていた小山内さんは、母親が入院したということで、先週からお休みをとって休んでいた。表向きには「家庭の事情」ということになっていたので、大西くんはそのことを知らない。
「みんな揃ったみたいだからちょっと聞いてください」
課長がフロア全体に聞こえるように大きな声で言った。
「先週からお休みされていた小山内さんですが、諸事情により、そのまま退職されることになりました。それで、急ではありますが、今日からこちらの水戸愛美さんに来てもらうことになりました。引き継ぎがない状態で大変ですが、サポートしてあげてください」
派遣会社の男性にうながされ、水戸さんと紹介された子が頭を下げた。
「水戸愛美です。よろしくお願いします」
ずっとわたしの近くにイスを寄せていたまま聞いていた大西くんがつぶやいた。
「かわいい。彼氏いるんですかね?」
「自分で聞いたら?」
「そうします」
「でも、小山内さんの代わりってことは、こっちの仕事とは接点ないかもね」
「大丈夫です。そこはなんとかします!」
大西くんの働きで、その日のうちに水戸さんの歓迎会が行われることが決まった。
こういう時のためだけに、入社早々上椙さんが個人的に作った「飲み会出欠システム」という社内だけで動くプログラムが役に立っている。
チェックを入れた人だけに一斉連絡が入り、返事の有無のチェックが自動で行われ、連動しているカレンダーに各自が希望の曜日を選択すると、自動で全員に一番都合の良い日がリストアップされる。
このバカバカしいプログラムは日々改良されていて、今では他の部署も使っていたりすると聞く。
やたら厳しいかと思えば、こんなことを許しているこの会社を不思議に思う。でも、前に社員が遊びで作ったプログラムがパッケージ化されて実際に販売されたことがあったから、こういうのはありなのかな。
すぐに歓迎会は金曜日に行われることが決まって、お店も予約された。
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