第4話 知らない相手

待ち合わせした場所から随分離れた所まで行って、「かっちゃん」にメッセージを送った。


<ごめんなさい 急用を思い出したので また後日にしてください お金は必ずお支払いします>


すぐに返信が返ってきた。


<お金って何ですか?>

<昨日のYUKIの支払いです>

<それなら solitusさんがご自分で支払われてましたよ>

<本当ですか?>


「solitus」はわたしのアカウント名だった。

つまり、この人もわたしの本当の名前は知らないみたい。


<レシートを握りしめてタクシーに乗るのを見ました>


だったら……どうして「かっちゃん」は、わたしと会おうとしたんだろう?

わたしはどうして「かっちゃん」と会う約束をしたんだろう?


<昨日のこと覚えてないんですか?>


何か……しでかしてしまった?


<僕は昨日あなたの彼氏になりました>


嘘……


何て返したらいいのかわからないでいると、続けてメッセージが来た。


<やっぱり覚えていませんでしたか>

<覚えていないです>

<そうかなとは思っていました だいぶ酔っていらしたから>

<ごめんなさい>

<彼氏の話は冗談として 良かったら時々メッセージをやりとりしませんか?>


顔も覚えていない、何をしているのか、どんな人かもわからない相手と?


<友達として>


この人、何を考えてるんだろう?

何かの詐欺?

でも、文章の感じでは普通の人のように思える。


<知らない相手の方が話しやすいことありませんか? 不愉快に思われたらいつでもブロックしてもらって結構です>

<少し考えさせてください>


そう返したものの、よくわからない相手と、例えメッセージだけとはいえ、やりとりする気なんてない。

少し時間を置いてから、無難なことを言って断ろう……

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