第4話 手ぬぐいのほしいもの


青海波紋様の手ぬぐい・セイガイに首へ巻き付かれ、矢絣は射的の屋台の前で止まる。

夏祭りがあると知ったセイガイに、全力の身振り手振りでせがまれ、やって来たのだ。

「何だ。射的か?お前が出来るわけ……無いよな。俺がやるのか?」

矢絣の問いに、セイガイは頷くように身体を上下させる。

「仕方ねぇな……」

ため息をつき、矢絣は銃を受け取って気怠げに構える。やる気の無い姿勢とは裏腹に、狙った景品をきっちり当てて行く。セイガイは、びしりと一つの景品を示した。青海波紋様と矢絣紋様の入ったハンカチ。

「あれが欲しい、のか?」

矢絣が聞けば、セイガイはまた頷くように身体を上下させる。

「へいへい」

矢絣はそれも簡単に落とした。セイガイは嬉しそうな様子で矢絣に巻き付く。

「これが嬉しいとか本当に分からん」

矢絣が困惑していると、何かが台から飛んで来る気配がした。パッと、セイガイが矢絣の前に躍り出る。それは、セイガイに当たって弾かれた。へらりと落ちるセイガイを、矢絣が慌てて受け止める。

「おい、どうした?」

矢絣が弾かれた方を見ると、大きい針がある。赤く光りながら切っ先を矢絣たちに向け、また飛んで来ようとしていた。

「ったく……!」

矢絣は素早く銃を構え直し、そのまま撃つ。弾は針に直撃し、ぽとりと地に落ちる。矢絣が見た時、もう針は消えていた。

「何だ、ありゃ。セイガイ、大丈夫か?」

矢絣がセイガイに呼び掛けると、セイガイは頷くように身体を上下させ、矢絣の首元に収まる。

「ありがとうな」

矢絣が言うと、セイガイは嬉しそうな様子で、矢絣に頬ずりするように身を擦り付けた。


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俺と手ぬぐい 宵待昴 @subaru59

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